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「タイムスリップ」

2,589年の地球は、荒野原だった。

茉都香(まどか)は、20年前にタイムスリップしていた。

若かりし頃の茉都香を探しに、旅に出かけたのであった。


「やぁ!茉都香!」「よう!静香!健!」

「今日は、晴れていて気持ちいい」「BBQ楽しみだね!」

3人は同じ街に暮らす、仲の良い幼馴染。

そう、今日は郊外に出掛けてBBQをすることになっていた。

そんな3人のやり取りを、バレないように背後からそっと見ていた。

20年後の私、ドキドキしながらもワクワクもしていた。

あの頃の幼馴染、みんなイキイキしていて元気だった。


20年後の茉都香が、大枚を叩いてまでタイムスリップしたのは、

それなりの理由があった。

あることを、確かめたかった。他人が聞くと、それだけのために

タイムスリップするのと言うぐらい、些細なことのために。

茉都香は、とにかく人の面倒を見るのが好きなタイプ。

自分の幸せよりも、人の幸せを優先して願うようなところがある。

静香と健が、将来一緒になって暮らし始めるが、実はBBQがキッカケで、

別れる原因を作ってしまったらしい。

BBQで何が起こったのかを確かめるために、茉都香はタイムスリップを、

してきたのであった。


BBQが行われる前に茉都香は、20年前の自分に挨拶を交わしていた。

事情を説明して、協力してもらうために。


BBQが始まって、一部始終を見ていた茉都香は、あることに気づいた。

健がスマホで何かを検索している姿を見つけた。

静香は、それに全く気づいていない。


静香にバレないように、

20年前の茉都香に、こっそりと聞いてもらった。


「健、何をしているの?」「スマホで何かを検索している?」

「いや別に」 健は、慌ててスマホを隠そうとした。

健は、茉都香にだけは嘘が付けないタイプだった。

健は、静香には聞こえないように茉都香に、

「実は、BBQやったことがなくて」

「やり方を検索していて」

「えっ!」「そうなんだ」 少し声のトーンを落としながら、

茉都香は健の顔を二度見してしまった。


20年後の茉都香は、その時点で別れる理由を悟ってしまった。

健の検索癖が、別れる理由になってしまったことを。

何でもかんでも、検索して対応していた健は、

スマホがなくなる時代が来るとは、思っても見なかった。

20年後には、検索するシステムも何もかも失われた世界が、

待っていることを、想像することが出来なかった。

自分の経験が生かされる時代に、もっと経験していれば、

検索する必要もなかったのかも知れない。

20年後の茉都香は、健に対して様々な思いを巡らしていた。


静香と健に対して茉都香は、二人で協力工夫してBBQを、

自由に楽しむように言ってみた。

「二人、仲良くやってみたら」

「みんな、初めてなんだから」

「少々失敗しても、いいんじゃない」

茉都香らしい、優しい提案のような気がした。

静香と健は、茉都香の提案に頷き納得したように、

振舞いが変わり、一気に和やかな雰囲気になった。

健も、スマホで検索することを、完全に辞めていた。

みんなで楽しみながら、真っ黒に焦げたソーセージを齧り、

思いっきり笑って、楽しい一日を過ごした。


「良かった」「本当に良かった」

20年後の茉都香は、心の底からそう思っていた。

心残りなく、安心してこれで帰れる。

20年後の茉都香は、元の世界へと帰っていった。

大切な、待っている人がいるから。

今は、自分の幸せを大切にしたいと思っているから。

とにかく、早く帰りたかった。


「ただいま」


「おかえり」


荒れた野原にも、暮らしがあり綺麗な華が咲いていた。



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