「なぜ」という質問は「なぜ」すごいのか?
「なぜそれが起きたのか?」
「どうしてそんなことしたの?」
毎日の仕事場で、そして子育ての場で耳にする言葉です。
しかし、この「なぜ」という質問を意識して
使っている方は(かなり)少数派だと思います。
実は、この「なぜ」という質問、
すごくいいんです。
どういいのかというと、「なぜ」という質問に
答えることで、知っていることが整理され、
より明確に覚えることが出来るようになるんです。
今回は、認知心理学で「精緻化」と呼ばれている
研究についてご紹介します。
精緻化(elaboration)とは?
長年にわたる認知科学の研究から、
私たちが持つ知識というのは
「蜘蛛の巣」(ネットワーク)
のようであるといわれています。(*諸説有り)
記憶しているエピソードや事柄がそれぞれ
蜘蛛の糸のようにつながっているイメージですね。
良く記憶しているということは、このネットワークが
強く密につながっていると考えられています。
認知科学の領域で使われている
「精緻化」という言葉は、
特定のアイデアや概念に「意味のある」
つながりや関連付けをすることを意味します。
記憶のネットワークを改善するには、
ただ覚えれば良いというのではなく、
意味のある関連付けを繰り返し、
ネットワークを強く密に繋げることが大切なのです。
「なぜ、なぜ、なぜ」
精緻化とは、新しい情報を長期的な記憶に
定着させるための技術です。つまり、技術ですので
「記憶を定着させる」方法があるのですね。
それは、「なぜ」という質問です。
よくビジネス書などでトヨタが「なぜ」を
5回繰り返すケースを紹介していますが、
それは仕事で習得した知識を「なぜ」と
繰り返すことによって血肉化することなんですね。
つなり、「なぜ」という質問を繰り返すことにより、
知識が整理され、これまで違うものと考えていた
事柄と結びつき、より深い理解へとつながっていくようです。
つながりを意識させる
知識の精緻化を促すために、
「なぜ」という質問をすればよいと書きましたが、
以下のポイントにぜひ気をつけてみてください。
1 ノートに事柄を書き出してみて、つながりの「意味」を考えさせる。
マインド・マップの作り方などを参考にしてみると良いでしょう。
2 概念のつながりを相違点を考えてみる
3 自分の日常生活や仕事上の経験に結びつけて考えてみる。
自分とのつながりを意識する。
あなたが誰かに質問する場合でも、
また何かを学んでいる場合でもプロセスは同じです。
ぜひ試してみて下さい。
例えば、英単語をただ覚えるのではなく、
単語を分解してみて語源の意味や日常のイメージと
連携させるグッと理解が深まるようです。
研究では、この「なぜ」という質問は
特に何かを初めて学ぶ方や小さな子供に特に有効とされています。
時間はかかりますが、細々とした事柄を覚えるより、
大きな概念を作った方が学びが加速するといわれています。
また、小さな子供に「どうしてこんなことしたの?」と
親が聞くときがありますね。
これは子供が「記憶」を整理する手伝いをしているのです。
子供の場合、ノートに書き出させるのは難しいので、
聞きながら事柄のつながりを言葉にしてもらうのを
意識するといいみたいです。
「なぜ?」
これは仕事でも学校でも、
そして子育てでも使えるマジック・ワードですね。
ぜひちょっと意識して使ってみて下さい。
ただし、
やりすぎると部下からも子供からも
相当ウザがられますので、
くれぐれもやり過ぎにはご注意を・・・。
お読み下さりありがとうございます!
ーー
*)この理論は記憶のコーディングと再生という視点の研究に基づいています。
参考
Willoughby, T., & Wood, E. (1994). Elaborative interrogation examined at encoding and retrieval. Learning and Instruction, 4, 139-149.
*)また「精緻化」という考え方はフィードバック理論の一部であったりします。
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