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2021年の 個人的・ベスト展覧会

2021年もあと1日。「2021年に見た展覧会のベスト10」を振り返りたいと思います。

2021年も、昨年に引き続いて 楽しみにしていた展覧会の中止、延期。また、都内がずっと緊急事態宣言だったこともあり、遠方の展覧会や周遊型の展覧会などは自粛で、見ることのできないまま終わってしまって心残りの展示がいくつもありました。

一方、今年も、オンラインで鑑賞できる展覧会がさらに増えたり、展覧会の会場をオンライン上で再現するのとは違った「新しい展示の試み」にリアルタイムで触れていくことができたのは刺激的でした。

では、今年足を運んだ美術館・博物館・ギャラリーでの展覧会 約250展示の中から、個人的な2021年展覧会Best5です。

2021年の展覧会ベスト5 (10展覧会)

【1位】 ヒコーキと美術 @横須賀美術館 / 八谷和彦 秋水とM-02J @無人島プロダクション

別々の展覧会なので 勝手に結びつけて申し訳ないのですが、自分の中では「ヒコーキと美術」が第一部、「秋水とM-02J」が第二部のようにつながって完成するように感じられた、同時期に開催された2つの展覧会が今年最も印象に残った展覧会でした。

「ヒコーキと美術」は、川端龍子《香炉峰》や、久保克彦《図案対象(第三画面)》といった作品そのものが印象的だったことに加え、「戦争記録画」や「戦時中のポスター」をまとめて拝見出来る貴重な機会だったこと、そして、「横須賀海軍航空隊と秋水」の展示もあり横須賀という土地で見ることに意味を感じられる展覧会でした。(八谷和彦さんの《秋水AR》もこちらに展示がありました。)

「ヒコーキと美術」展が戦前〜戦中の作品が中心なのに対し、八谷和彦さんの「秋水とM-02J」展では、終戦直前に試作された飛行機「秋水」を起点に、現在までの日本の飛行機の歴史を繋いで考えられる展覧会でした。

こちらの展覧会では、八谷さんの作品である一人乗りの飛行機「M-02J」の実機も展示され、現代に新しい飛行機をアートとしてつくられている意味、それから「より高く、より速く、より遠く」といった機能とは違ったベクトルの飛行機をつくる意味を、飛行機の歴史の中から感じられたように思えます。

また、《秋水AR》をはじめ、Youtubeで拝見出来る映像や家で読む手紙など、展覧会の会場だけではなく様々な手段をつかって大きなひとつの作品を体験するような構成も印象的でした。

そして、どちらの展示でもコロナ等でさまざまなことがままならない、混沌とした今年、日常から地続きにあるもののように戦争のことを考えることができた意味も大きかったです。展覧会を観た後、関連書籍を読んだり、「東京大空襲・戦災資料センター」に伺ったことなども含めて、戦争について改めて考えるきっかけとなりました。

【2位】横田大輔 Alluvion / 梅沢和木「画像・アラウンドスケープ・粒子 Image, Aroundscape, Particle」 @RICOH ART GALLERY

リコーの2.5D印刷の「StareReap」と、アーティストのコラボレーションによって制作された作品を展示する「RICOH ART GALLERY」での展覧会は今年とても衝撃を受けた展覧会でした。

様々なアーティストと「StareReap」技術を使った共創はほかにも、金氏徹平さん、大山エンリコイサムさん、井田幸昌さんと、いずれもアーティストの特徴的な表現を活かしながら、StareReap技術を使った新しい表現方法を模索するようで、毎回新しい表現に驚かされ続けました。

そのなかでも、横田大輔さん、梅沢和木さんの展示は、特にもともと2次元としてつくられている作品が2.5次元となることで、作品の新しい魅力が生まれてくるように感じられる展覧会で印象に残りました。

【3位】多層世界の中のもうひとつのミュージアム——ハイパーICCへようこそ @ICC

展覧会の会場(リアル会場)だけで完結せず、PCにダウンロードして観る「ヴァーチュアル初台」「ハイパーICC」(ヴァーチュアル会場)によって、「オンライン鑑賞(PC上での鑑賞)」といっても、リアル会場の“代替”ではない、あたらしい展覧会のかたちを体験することができる展覧会でした。

リアル会場でも、ARや写真に撮ることで完成する作品など、「リアルを目で鑑賞する」だけではない作品を楽しむことができるなど、「見る」ことの様々なあり方を考えられるようでした。

今年は、この展覧会以外にもオンラインの鑑賞が印象に残った展覧会は2つありました。

1つは、やはり展覧会と同じ会場構成ながら、オンラインで別の楽しみ方ができる「ライゾマティクス_マルティプレックス @東京都現代美術館」。

もう1つは、「 新しい実存 - New Existentialism @Unexistence Gallery(オンライン)、HULIC &New UDAGAWA 1F貫通路」。リアル会場が虚でオンラインが実ではないかという、リアル会場では見られない展示に驚かされました。

【4位】Encounters in Parallel @ANB Tokyo

六本木にある「ANB Tokyo」の4つフロアを、11人のアーティストが構成する展覧会ですが、キュレーターが展示を構成するのではなく、キュレーターはファシリテーターとなってフロアごとのアーティスト同士の模索によって展示が構成されるという展覧会です。

作品を見て「この作品はこのアーティストさんの作品だ」とはっきり分かる個性の強い作品ながら、フロアごとに1つの大きなインスタレーションが構成されているかのような、「独創」と「共創」のバランスが素晴らしい展覧会でした。

会期の後半にはこの会場を使ったオンラインライブパフォーマンス「Encounters in Parallel」も開催され、今度はこれらの作品が舞台装置になるようなパフォーマンスを、オンラインならではのカメラワークで鑑賞することができたのも印象的でした。

また、ANB Tokyoで今年開催された、3つのフロアを1アーティストずつ担当した同時開催の3つの個展

 ▍スクリプカリウ落合安奈 個展 「わたしの旅のはじまりは、 あなたの旅のはじまり」
 
▍NAZE 個展 「URAGAESHI NO KURIKAESHI」
 
▍小林健太 個展 「#smudge」

も、それぞれのフロアの使い方も面白く、新たな試みも行われ、強く印象に残っています。

【5位】永田康祐 個展 Equilibres @ANOMALY

スイスのアーティストデュオ、ペーター・フィッシュリ・アンド・ダヴィッド・ヴァイスの、日用品を組み合わせてギリギリのバランスで成立させたオブジェを撮影した写真作品「Equilibres」を引用し、同じモチーフを3Dプリントで作成し、撮影した作品の展覧会です。

実物とその写真や映像、その撮影データ、プリント、さらにそれをデジタル化したデータ… そのどれが「オリジナル」と呼べるのか?また、キャプションがあることによって、作品ではなくキャプションのほうが語ってしまうような入れ替わりなど、見ているものの何が実で何が虚なのかを考えてしまう作品でした。

実は、写真だけではピンとこなかったものの、見落としそうな場所で展示されていた映像、それから、オンラインのアーティストトークによってじわじわと組み上げられていく展示ような展示でした。展覧会はMatterportと映像作品がそのままアーカイブされていて見られるのも嬉しいです。

2021年に印象にのこった展覧会

5位までに挙げたもの意外で、驚き、今までに見たことのないものなど、観ることができて良かったと思う印象に残った展覧会です。

▍ 石川 将也 プロジェクト展「Layers of Light / 光のレイヤー」 @cog + Of Sheep + planet 渋谷桜丘オフィス

電線絵画展 ─小林清親から山口晃まで @練馬区立美術館

「ストーリーはいつも不完全……」「色を想像する」ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展 @東京オペラシティ アートギャラリー

長谷川 愛 展 「4th Annunciation」 @TERRADA ART COMPLEX II 4階

▍会田誠 東京城  (パビリオン・トウキョウ2021)

▍コラボレーション企画展 「川端龍子vs.高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―」 @大田区立龍子記念館

▍明和電機ナンセンスファクトリーin愛知 @豊川市桜ヶ丘ミュージアム

▍Open Storage 2021 ー拡張する収蔵庫ー @MASK

▍崖と階段 @azumagaoka articulation

▍エキソニモ『CONNECT THE RANDOM DOTS』 @WAITINGROOM

▍サウンド&アート展-見る音楽、聴く形 @アーツ千代田 3331

2021年の総括

「2020年に印象に残った展覧会」は自分でも驚くほど「個展」ばかりだったのですが、2021年は、「コラボレーション」のような要素が印象に残るのとともに、「美術館やギャラリーの”会場”にいくことだけが鑑賞ではない」、「リアル会場で見ることの”代替”ではない、新しい鑑賞方法」という、昨年よりもさらに広がる展示の試みを行っていた展覧会が強く印象に残りました。

2020年末の時点では、2021年は普通に展覧会が見られるようになったらいいなと思っていましたが、2021年も4月末〜5月いっぱい、美術館の一斉休館とギャラリーの休館&時短営業などが続き、7〜8月は都内の感染者数がひどかったので、個人的にワクチン2回接種+2週間までは外出は控えたため、展覧会は開いているのに自粛で見られないまま会期が終わっていくというのは本当につらくて、今でも「あの展覧会、見たかったな…」と心残りな展覧会がいくつもあります。

今年も改めて、展覧会に行けることが普通のことではなくて、開催されない / 開催されていても見られない、ということが起こるんだということを認識しました。その一方で、今年も昨年以上に新しい展示の試みをリアルタイムで体験していくことができたり、海外の展示もオンラインで見られるようになったり、また、トークイベントやパフォーマンスなどの展覧会関連イベントもオンラインで聴講できるものが増えたことで、作品への理解を深めやすくなったような嬉しい試みも多数経験することができました。

あと個人的には、自粛が長引く中で、コレクションしている作品ポスターの飾り方を工夫したり、図録や写真集を多く買うようになったり、ARなどで遊んでみたりと、家で作品を楽しむ方法を模索する機会も増えました。

ただ、やっぱり、良かった展覧会を振り返りながら、構成された展覧会を会場で観るというのはとても自分にとって意味のあることだと感じられます

来年こそは安心して遠征もできる世の中になりますように。

過去の「BEST展覧会」はこんな感じでした。

◆2020年:2020年の 個人的・ベスト展覧会
:2020年は「個展」が印象に残った年でした。

◆2019年:2019年の 個人的・ベスト展覧会
:2019年は「アートってなんだろう?」と、制作・展示・鑑賞というそれぞれの過程について考え直すような展示が印象に残りました。

◆2018年:2018年 展覧会 ベスト10 
:2018年は「”人間らしさ”ってなんだろう?」「技術の変化の先に、どんな新しい”感覚”や”感情”が生じてくるんだろう?」ということを考える展覧会(作品)が強く印象に残った年でした。

◆2017年:2017年 展覧会 BEST10 【美術館編】
◆2017年 展覧会 BEST10 【ギャラリー編】
◆2016年:● 2016年 展覧会 BEST 5 ●
◆2016年 アート作品 BEST 5 ●
◆2015年: かってに選ぶ BEST展覧会 -2015
◆2015年:かってに選ぶ BEST作品 -2015
◆2014年:かってに選ぶ BEST展覧会 -2014
◆2013年:展覧会2013(展覧会BEST3)
◆2012年:展覧会2012(展覧会BEST3)
◆2011年:展覧会 2011(展覧会BEST3)

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