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山尾悠子・中川多理のコラボレーション・ドキュメント

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記事一覧

鳥の起源を追って/中川多理人形ドキュメント◉第一章『化鳥拾遺』

鳥の起源を追って/中川多理人形ドキュメント◉第一章『化鳥拾遺』

薄墨の夜に。
 うたた寝をして夢を見て、其の夢から覚め、また夢に囚われる。それを幾度となく繰り返しながら朝を待つ。

 稽古茶室に息を顰めるようにして四日目。
 「てっぽうだよ!」
 早替わりのチャリ裡の声にも似た掛け声がした。遠雷のような鉄砲音がして、撃たれ倒れ込んだ。我が身、猪であったか、鳥であったか…黝い男に撃たれたことしか覚えていない。
 そっと目をあけて、いま何処か、いまいつかを確かめる

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[転売]について③

[転売]について③

転売について③

 転売は、いろいろな階層で起きている。
おそらく転売という行為は、今まで、曲がりなりにも安定して機能していた販売や流通のシステムの、屋台骨をぐずぐずに崩壊させていく。それが予感ではなく現実に変わった瞬間がある。
 官房長官がマスク転売禁止を発表したときだ。あ、政治の場面に[転売]という言葉が出てくるのだ。転売は、禁止事項でもなく、モラルでの禁忌でもなく、なんとなく流されてきていた

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日々是徒然。転売②心折れる日々。答えがそれか。

日々是徒然。転売②心折れる日々。答えがそれか。

 何日か前に、購入してすぐの本をメルカリで高額転売した悪質常連転売者のことをnoteに書き、それを中川多理さんがツィートしたところ、メルカリ上で、揶揄するように中川さんとnoteに向けて発言している。
 喧嘩を売っているとしか思えないが、どうせ手が出ない、訴えられないということを前提に、嘲っている。転売の確信犯。おそらく名前を晒しても平気だろうし、晒したらそれを使って反撃をする。いろいろ対策もとっ

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日々是徒然 『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)を読んで思う徒然のこと①

日々是徒然 『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)を読んで思う徒然のこと①

幻想のありか___身体の欠如/現実の朧気 
注意書き。
ここで書いていることは、『夜想山尾悠子特集』『新編夢の棲む街』『迷宮遊覧飛行』を読んで、徒然に思ったことで、作品に対する分析です。価値観について語っている訳ではありません。こういう風になっているのか…ということです。しかも自身の個人的な見解です。

中川多理さんの人形に触れてはいるところもありますが、中川多理さんと[~について]話したことはな

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日々是徒然。中川多理『薔薇色の脚』出版展覧会/そこに向う[蜃]の長い呟き。

日々是徒然。中川多理『薔薇色の脚』出版展覧会/そこに向う[蜃]の長い呟き。

 浅草奥の方、吉原に近いところにかつて存在した淡紅色のサロン。

『ガランス』

 合田佐和子が意匠デザインした淡紅色の喫茶店『ガランス』は、当時、珍しかったチーズケーキが二種類あって、オペラをかけているプレイヤーの廻りにはふさふさの毛の猫が三匹うろうろ客を品定めするように歩いていた…四五人入れば狭く感じた、その店のオーナーは小柄の女性で仮にMさんと呼んでおこうか…今でも千束通りでちらりと見かける

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『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)①を訂正穏当表現にして最アップ。そのアドレスをお伝えします。

『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)①を訂正穏当表現にして最アップ。そのアドレスをお伝えします。

複数の削除依頼を伝達されて、この[日々是徒然]を削除することにしました。全文読んでいただいた方々に心よりお礼を申し上げます。

有料販売したコンテンツは削除ができないので
冒頭部分を残して、以下を削除いたします。

日々是徒然 『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)を読んで思う徒然のこと。

 読了し、抱えていたもやもやは、霧散するものの、その晴れたあとに見えて来るのは、自らの残骸——処理不能な過去の事柄、

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『薔薇色の脚』中川多理人形作品集/出版と展覧会について

『薔薇色の脚』中川多理人形作品集/出版と展覧会について

 世の中の解禁ムードとは別にコロナは、深く社会を蝕んでいる。これまで罹っていなかった用心深い人たちも次々にコロナになり、かく云う私も遂にコロナに罹った。熱と咳と頭痛で七転八倒する日がけっこう続いた。元々頭痛に弱いせいもあるが、コロナの頭痛は未体験のもので頭が割れるとはこういうことを云うのかと、後でしみじみ思った。頭痛で浅い眠りが破れ、うとうとする夢の中での思考は、覚醒時のそれに何にも繋がらず、逆に

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山尾悠子と中川多理を巡るいくつかのメモランダム。「小鳥たち、風のなかの」山尾悠子

山尾悠子と中川多理を巡るいくつかのメモランダム。「小鳥たち、風のなかの」山尾悠子

いつの頃からだろう。山尾悠子が空中浮遊術を身につけたのは——。

実のところ、僕は山尾悠子のそんなに良い読者ではなかった。なので術が、もともとなのか、ある時からなのか、今なのか…を知らない。東雅夫が『幻想文学』で、礒崎純一が国書刊行会で幻想の小説に邁進し、山尾悠子を再発掘していた頃——、たぶん、僕は寺山修司や土方巽、ヨーゼフボイスに夢中で、現場を駆けずりまわっていて…山尾悠子の存在を朧にしか覚えて

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夜想茶悠記 ウラメシヤ通信 5

フルーツパーラーゴトーの10月(G-02)

☆旬は瞬間、待つのは一年。

明日台風だから、今日が最後になるかもの黒無花果をカウンターで食べる。僕の台風準備。
なんで?落ちちゃうから?
無花果は水に弱いんだって。濡れたら駄目、らしい。前に試しにそれでもいいからって無理に濡れたのを入れたんだけど、やっぱり美味しくなかった。
産地東京なんだ。それにしても美味しいねぇ。シーズン始めと大分、趣が違うような

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