自分こそ、世界で最も未知で不気味な、何をしでかすか分からない存在 【「息子のボーイフレンド」(秋吉理香子 著)】前編
私は、私の考え方をアップデートしたい、っていつも思ってます。
思ってるんですけど、自分の身を持って体験したことでなければ、
アップデートはできるかもしれないけど、インストールはできない、って思うんです。
(例え分かりにくっ!全然うまいこと言えてないやん)
外で起きていることに対して第三者の立場で目にしたり、耳にしたり、他の人と議論を交わしたりして、考え方がアップデートしていくけど、
自分の身を持って体験したことは、痛みや、衝撃や、苦しみや、喜びや興奮を伴うことであって、
自分の心への刻まれ方や学びの深さは第三者の立場で関わった場合と比べ物にならないくらいのものだと思います。
だからそれはアップデートではなく、インストールと言いたのです。(まだ言う)
「息子のボーイフレンド」(秋吉理香子 著)を読みました。
すごい衝撃でした。
陳腐な表現ですが、とてもいい本です。
私はLGBTQ +の方々に対して、何の違和感もないし、好奇なんて気持ちも特に湧かないし、特に自分と何か壁がある、みたいに思ったことはありません。
でも、この本を読んでいて、心から恐ろしくなりました。
私は実際、自分の周りにそういう方がいたことが無かったけど、もし自分の近しい人にそうカミングアウトされたら、
もしかしたら私は自分の知っている私でなくなるのかもしれない、
っていう可能性を、思い切り突きつけられたような気持ちになりました。
物語は5人の目線で描かれていきます。
高校生で、自分の恋愛対象は男性だと気づいた聖将、
彼と付き合い始めた大学生、雄哉、
聖将の母親で元腐女子だが自分の息子のこととなると認められない、莉緒、
そんな莉緒の腐女子友達、優美、
会社で総務としてLGBTQ +の理解を深めようと奮闘しながらやっぱり息子のこととなると認められない聖将の父親、イネ。
聖将が母親の莉緒に自分がゲイであるとカミングアウトするところから物語は始まります。
息子の告白を受け入れられず、とんでもなく取り乱す莉緒と反対に、
聖将の恋を優美は心から応援し、それを見て徐々に莉緒も息子を受け入れ始めます。
しかし、最後に知るイネは、どんなに会社でLGBTQ +を理解しよう、広めようとしていても、自分の息子となると、どうしても受け入れられず、大反対します。
なぜわざわざ人から指を刺されて生きることを選ぶのか、自分の息子を不幸にしないでくれ
…など、一番の味方である家族ですら、同性愛者の恋愛を、簡単に理解してくれないという状況を描いた物語です。
この物語に出てくる大人は全員、LGBTQ+に理解がある、というところがポイントだと思います。
この中ですんなり受け入れたのは優美だけ、というところも同時にポイントのように思います。
なぜなら優美にとってこの恋は、自分の家の話ではないからです、あくまで友人の子供の話です。
だから、優美に感情移入してしまい、聖将の恋に反対する夫婦に対してなんとなく批判的な気持ちになってしまうのですが、
冒頭で書いたように、当事者になるまで、私もどんな反応をしてしまうか分からない。
上記は、優美が息子の告白を受け入れられない莉緒に対して放った言葉です。
私もきっと、友達がこんな風に悩んでいたら、同じ言葉をかけるんだろうなって思います。
でもこれは、第三者だから言えることなんだということも、認識しておきたいのです。
聖将の父、イネは世の中のLGBTQ+の人たちに対してこのように言います。
ファンタジーなわけないだろ!
現実で起きてることなんだよ、受け入れる以外の選択肢があってたまるか!
と今までの私だったら心の中で反論していたかと思います。
今は、私は偽善者で、ファンタジーを夢見てるのかもしれない、って不安になります。
私の同世代でも、LGBTQ+を告白している有名人はたくさんいるし、同性の子と付き合っていた友達はいます。
でも、全部、自分のことじゃない。
他人のことだから、普通のことに思えるし、普通に応援したいんじゃないかって、不安になります。
自分のことじゃないから。
もし自分ごとになる日が来たら、私も必死で排除しようとしてしまうのでは…。
すみません、文字数が大変なことになるので、後半に続きます。
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