せっかく他人と一緒に生きていくなら、めいっぱい変わりたい、めいっぱい楽しみたい。【余命一年、男をかう(吉川トリコ著)】前編
※本文はネタバレを含みますのでご注意ください。
ぬえあああああああああああああああ!!!!!!!!
ぐおおおおおおおおおああああああああああ!!!!!!!!!
ま…
また…
さいっこうの一冊に…出会ってしまった…。
最高すぎて、なかなかnoteに書けなかった…どうしたためればいいものか、私にはわからなかった…。
「余命一年、男をかう」(吉川トリコ著)を読みました。
▼あらすじ
唯は、堅実にお金を管理することが趣味の独身40歳OL。
マンションを自分で購入し、老後に困らない資産も自分で貯め、堅実にコツコツと生きる中で、ある日子宮がんであることが発覚。
医師に治療を勧められるも、唯の発した一言は、「このまま治療しなければ、いつ頃死にますか?」
せっかく死ぬなら今まで貯めたお金で豪遊して死にたいと思っていたところ、ピンク色の髪をした瀬名というホストにお金を貸すことになり、彼との奇妙な関係が始まっていく。
唯がお金を貸すかわりに、瀬名は唯の言いなりでデートをしたり、肉体関係を持ったりする。
その関係が終わった後も、唯にとって瀬名は忘れられない存在になってしまい、唯は瀬名にプロポーズする、という決断をする。
唯は思っていました。
結婚は、男が女を金で買い取るという行為ではないかと。
だから、一生一緒にいてほしい、と思えた瀬名を、
自分の母やシンデレラが王子様にそうされたように、お金で買い取ればいいのではないかと考え、プロポーズします。
賛否両論ありますが、恋愛エンタメのおもろさが理解できないことで有名な(どの界隈にだよ)私でも、ちょっと上記のシーン、まじでキュンキュンしすぎてぐぬあああおおおおおおおあああってなりました。
「死ぬまでいっしょにいてもらうにはいくら払ばいい?」
という発言に酔いしれすぎて、何度も頭の中で反芻してしまいました。
という、私の謎の性癖はどうでもよくて、この物語の面白いところはここから始まるんですね。
まず、唯と対照的な考え方のキャラクターとして、唯と以前不倫関係であった課長が出てきます。
結婚はいいものだ、家族はいいものだと言いながら唯と不倫し、妊活のために簡単に唯を捨て、妻が妊娠したのをいいことにまた迫ってくるキャラクターです。
家族愛、結婚の素晴らしさを周りに叫びながらパートナーを裏切って不倫しながら自分の気持ちに嘘をつき続ける男の結婚と、
自分の資産を全て好きな男にあげるから一生一緒にいてほしい、というプロポーズから始まる結婚、
人それぞれ思うところはあるかもしれませんが、本書では後者を選んだ唯がかなり苦悩する様子が描かれます。
唯がお金を貸し、瀬名がそれ相当のサービスを返していた物語の前半は、明るく楽しい展開ばかりです。
そして、プロポーズがピークとなって、結婚してからの後半の物語は非常に暗くギスギスした流れに変わっていきます。
瀬名は、自分をお金で買い取るように結婚を望んだ唯、自分の病気を治そうとしない唯を理解できない。
唯は、自分の考えを尊重してくれない瀬名、お金とサービスの関係は変わっていないはずなのに、結婚前と後で変わってしまった瀬名を理解できない。
二人の結婚観や価値観のすれ違いが、現実世界のリアルな夫婦を彷彿とさせるようで興味深い描写です。
そして、印象的なのが、瀬名の代名詞であるピンク色の髪が、普通の茶髪に変わること。
実家に結婚の挨拶をしにいくために、唯のリクエストで髪色を変えますが、私には夫婦の関係が壊れていく描写に思えました。
決してイケメンキャラではないけど、明るく人情のあるホストを目指していた瀬名のこだわりだったピンク髪が、妻に受け入れてもらえなかった、分かろうともしてもらえなかったという失念が感じられたのです。
お金の関係でしかないと言いながら、二人はずっと心のどこかで分かりあいたい、歩み寄りたい、理解したい、きっとできるはず、と思っていたように見えます。
でも、お互いに歩み寄る努力を感じれらなかった時に、静かに心を閉じて関係が壊れ始める。
これってまさに夫婦だなあ、と思うのです。
文字数やばいので次回に続きます…。
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