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真実は自分で選びとるもの(映画「ミッドナインティーズ」を観て20代OLが思ったこと)

子供は逃げたくても逃げられない。

先日一人旅について書いた時も同じことをつくづく思ったのだが、子供って行動を制限されるわ、思想までコントロールされそうになるわ、結構過酷な状況を生きていると思う。
(まじで私は子供時代窮屈すぎて死にそうだったのですが、皆さんはどうですか?)
どこかに逃げたいと思っても、行ける範囲は自転車かお小遣いで移動できる範囲のみ。
その制限と無償で保護してもらえるという特権は大人になったら手に入らないので、特権といえば特権だが、子供は大変だよなあとつくづく思うのである。


映画「ミッドナインティーズ」は、そんな少年時代の窮屈さとともに、何かを求める強烈な追求心が自分にもあったよな、という事をうまく思い出させてくれる映画だった。
ストーリーは、90年代ロサンゼルスにて、シングルマザーのもとで生きる少年がスケートボードを通して仲間と出会い、自分の人生を切り開いていくというもの。
本作には、誰もが経験したような繊細な感情が散りばめられていて、観ているとその時の感情が呼び起こされるようで胸が痛くなってきたり、勝手にこっちが恥ずかしくなってくる。
(映画で恥ずかしいシーンとかあるとウワーって観ていられなくなって一時停止ボタン押したりしちゃうんですけどそんな気持ちになる人いませんか?)


例えば少年少女時代の、「イケてる人への熱狂的憧れ」。
幼い頃は誰もがお小遣いの中でやりくりしなくてはならないので、垢抜けるのは難しい。
でも、少しでも垢抜けたくて、かっこよくなりたくて、憧れの人を探した人は多いんじゃないかなと思う。
(私もアヴリル・ラヴィーンに憧れてアヴリルっぽい歌詞を作詞して学校の先生に見せるというセルフ公開処刑をしていました、時を戻して昔の自分をぶん殴りたいです)
映画の中でも主人公はスケボーショップのお兄さん達に近づきたくて、店に通いつめ、なんとか仲間に入れてもらおうとします。
背丈も身なりもあと5年は追いつけないような憧れの存在になんとか近づけるように、なりふりかまわず挑戦する姿は純粋に美しい。
(主人公の俳優さん、とても演技がうまいです!)
当時自分は、実は家で必死に練習しているのに、友達の前では天才のふりをするというしょっぱいキャラだったなと思って映画館で穴があったら光の速さで入りたい気持ちにもなった。


例えば「終わりなき追求心」。
主人公には憧れの存在がもう一人いる。
お兄ちゃんだ。
力では全く叶わない、音楽もファッションも完成しているお兄ちゃんに、少しでも近づきたくて、お兄ちゃんの留守中には、何を聴いているのか、何を着ているのか、くまなく部屋を見て回る。
大きな宝箱に侵入したような瞬間である。
(昔私もお姉ちゃんの留守中にお姉ちゃんの服を勝手に着てひとりファッションショーとかしてたんですけど、昔の自分をぶん殴りたいです)
スケボー仲間や、お兄ちゃん。
そして、主人公を正しく導き、守り、けれど男グセの悪いお母さん。
憧れの存在を必死で追いかける中で、家族に守られる中で、少年は各人から色々なヒントを得て、とにかく「何か」を必死で追い求めている。
結果、最後にそれが爆発してしまう、という描写があったのだが、それはまるで丹念にトレーニングを積んできた陸上選手が、もっと早く、もっと早く、とさらなる進化に集中を高めた結果、足の骨がパキッ、と折れてしまうような瞬間に思えた。

では、少年が求めたその「何か」とは一体なんなのか。
私が思うに、「真実」ではないかと思う。
子供の頃、私も真実が欲しくてたまらなかった。
世界中に、色んな人がいて、色んな主張をする。
数学では答えは一つなのに、国語では答えは何通りもあって、道徳の時間では、全部答えだよとかいうくせに、黒板に書いてもらえる発言とそうでない発言がある。
何が正しくて、どう生きれば幸せになれるのか、どんな風に振る舞えばお大人に怒られないで済むのか、死ぬほど知りたかった。

でも大人になってやっと分かった。そういった真実は、自分で作り上げるものだと。
色んな人の思惑の中でもみくちゃにされながら、甘い瞬間や苦しい瞬間を経験しながら、自分で真実を掴み取るものなのだと。
そして何より、真実は生きている。
だから真実は変化する。
これで完璧、という真実は存在しないと私は思う。
自分の追求心を手放さなければ、追い求める事を諦めなければ、真実はいきいきと生き続け、(今「いき」って何回書いたんだ)より真実の選択肢が広がっていくと思う。
だから、この主人公のように、追求していきたい、どこまでも。
型にはまりたがる私にとって、この映画のメッセージは深く響くものだった。

色んな事の変わり目になるこの2020年にこの映画が日本で上映される事は、まさにナイスタイミングだと思う。
自分にとっての正解が何なのか、今一度考えるいい機会になるかもしれない。

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