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創作

12
作り物です。
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2020年1月の記事一覧

あの頃

あの頃

嘲笑。
 私たちは全て似ている。それはとても良いことだ。
 鏡が三十とちょっと。でも、私とあなたは同じじゃない。
 同化。圧力。無知。勘違い。
 手を繋いで笑っている。仲が良いのはとても良いことだ。
 たかが知れた友情の理由。
 大嫌い、大好き、生理的に無理。
 輪からはじき出された鏡。
 寄りあつまるマス。
 何も知らない空虚な瞳。
 ストレス社会だから諦めなさい。
 私はそこに己を見る。
 悲

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潜んでいた

潜んでいた

ひさしからぽつぽつと流れ落ちる雨粒

そんな感じで放たれる言葉をいちいち拾ってノートに書き起こす

義務付けられた労働はこんなところから始まっている

虚ろな教師の目

砂埃を立てないように静まり返った生徒たち

みんなといるのに独り

独りなのに幸福なふりをする

若さゆえの残酷さなんてつゆしらず

本能に乗っ取られた思考は

彼らを崖っぷちへと運ぶばかり

私は息を潜める

誰にも遅れを取らな

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懐古

懐古

ぱたりと僕の腕からはがれ落ちた君。
一夏を謳歌した命。
初めて羽を広げた時も、
あの女の子に振られた時も、
運命のあの子と出会った時も、
僕はみんな知ってる。
君は僕を信頼してくれて、
いつでもその細い腕を、僕にしがみつかせてた。
君の歌声は力強くて、
毎日元気をもらってた。
相棒よ、ありがとう。

思ってもみなかった。
こんなにストンと力が抜けていくなんて。
初めて寝そべって空を見上げる。
あの

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Mind scape

唇を触らして。

声の聞こえない懇願。

君の細い指が空を弄る。

掌が開く様は、芽吹きと似ていた。

僕はただそれに見惚れていた。

足はもう動かなかった。

凍てつく空は美しかった。

目の前で蝶が果てた。

柔らかな風が吹いて、彼女を優しく包んだ。

僕はただ満ち足りていた。

君の指が僕の唇を、そっと冷やしてくれたから。