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無責任ですけど、なにか?ー不時着のキミに怒られた話

クリスマス頃の話なんですけど、一緒に入院してた中一の女の子(通称:不時着のキミ)に大説教されたんですよ笑 13歳に22歳が。

ということで、今回は ”不時着のキミへ”のその後のお話
不時着のキミは、入院の時に同室だった中学一年生の女の子
夏休み明けて、体育の走り高跳びでマットの外に不時着して大怪我して、大手術して、超不機嫌で、、、

詳しくは↓↓↓

もう、キミは拍子抜けするくらいに、一生懸命叱ってくれました笑笑
それで、大真面目にこう言うんです。

「チサちゃんは、無責任すぎる!!」って

ここで、あまりにも真剣に言うもんだから、なんだか笑えてきたんだけど、吹き出したら説教がまた伸びそうだから、そこはグッと堪えて言い返してやりましたよ。

「無責任ですけど、なにか?」ってね

で、我に帰って、9歳下の相手に何を真面目に言い返してるんだって思ったんだけど、相手が真面目に話してくれてるんだから、こっちだって真面目に返すのが礼儀ってもんでしょう。笑 

不時着したその後

待ちに待ったキミの退院の日は、ちょうど私のリハビリの日で時間を合わせて会いに行った。もう二度と出産以外では入院しないと誓って、松葉杖と包帯ぐるぐるの脚と肩で写真を撮った。

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家が隣の駅なのは知っていたけど、定期診察で会うか会わないかのそんな関係になると思ってた。
のは、私だけだったらしい。それも「冷たい」って怒られた笑

キミが退院して、段々と連絡の回数は減っていった。
ただ、キミが学校に復帰した日は、なんだか違和感のある制服姿の写真を送ってきてくれて、なんだかとっても嬉しかった。
制服の違和感は、入院中パジャマ姿しか見てなかったから見慣れてないだけだと思ってたけど、よく見ると制服の上から折れた鎖骨をバンドで固定してて、それが天使の羽みたいになってたからだった笑

ずっとずっと行きたかった学校にやっと戻れて、入院中によく話に出てきた友達との変顔の写真とかも送ってきて、本当に楽しいのが伝わってきた。
で、また学校が始まったら連絡の回数も減ってきて、入院のことなんか忘れてるんだろうな〜と寂しくもあり、キミが日常生活に戻っていったのも嬉しくて、「あぁ、頼りがないのはいい知らせ」ってこのことかぁなんて思っていたの

なんとなく病 発症

しばらく、連絡も取ってなかった。それは、キミが日常に戻ったからだと思ってた。「頼りがないのはいい知らせ」だと思ってた。

違った。

夜中になった電話。気力のない声。
「チサちゃんも、悩んだりするの…?」が第一声だった。

「やっぱ、なんでもない」
「何かあった??」
「いや、なんとなく電話しただけ」

こりゃ絶対なんかあったわ。と思いつつ、
そろそろ、寂しくなってきた頃だと思ってたよ〜とか適当に喋りつついたら、「友達、めんどくさい」ってキミが呟いた。
「あぁ、めんどくさいか、そうか〜 そういう時もあるよね〜」
「うん、めっちゃめんどくさい」
今度は、はっきりした声だった。「どうして?」
「なんとなく」

ありゃま、なんとなく病だ。中二病があるんだったら、中一は「なんとなく病」にかかるらしい。

この時、キミが「なんとなく病」を発症していたこと。
それは、「気づいて欲しい」のサインだったこと。
全然、「なんとなく」じゃなかったこと。「なんでもない」わけないってこと。
それに、わたしは気づいていたのに。「なんとなく」流してしまった。

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それから1週間くらい経った日、朝起きたらラインがきてた。
「学校行きたくない」
すぐに返した「行かなければいいじゃん」ってね。
そしたら、キミは「え?」「なんで?」
そしたら行きたくないとか言うくせに、行かないなら行かないでダメらしい。
文字だとめんどくさいので、電話した。

「学校行きたくないの?」「うん」
「行かなければいいじゃん」「いやでも、制服はきた」
「行く気満々じゃん。」「違う」

「じゃあ、学校行かないで、うちおいで。」

ウダウダした駆け引きの末、彼女は制服を着たまま家にきた。
まだそんな寒くなかったのに、マフラーグルグル巻きにして顔の半分が隠れてる。どうやら、変装のつもりらしい。ずる休みが同級生にバレないように
どうせなら、制服じゃなくて私服にすればいいし、キミがずる休みしてる間に会う友達もずる休み仲間なんだから気にすることないのに
学校帰り、こそこそ制服の靴下変えたり、マフラー変えて友達と遊んでたのを思い出す。バレバレだけど、本人たちは必死なんだよね笑

何があって学校に行きたくないのか、二人でお茶飲んでる間にだんだんと分かってきた。
退院した後は、みんな優しかった。学校行くのが楽しかった。
でも今は、クラスみんなに無視されてること
「その時」は急に来たこと。苦しかったこと。怖かったこと。息ができなかったこと。

いじめ

その単語は、最後まで出ることはなかった。認めたら、負け。そういうことらしい。「いじめられてる」ことを認めることが一番つらい。いじめられる原因が自分にあるような気がするから。だから、「学校に行けない」んじゃなくて、「行きたくない」って、キミの意思であることがキミにとってはすごく大事だったんだね。

22歳、13歳のキミに説教される

「そんなつらい思いをして、学校に行く必要なんかない」
そう言うと、キミの目は点になってた。
「休みなよ笑 ってか、行かなくていいよ。やめちゃいなよ。」

するとキミはど正論で返してきた。
「チサちゃん、知ってる?中学校って義務教育なんだよ?!義務だから、行かないといけないんだよ。」
そう言い切ると、大学生なのにそんなことも知らんのかとばかりにニヤけながら紅茶を飲んでいる。

なんだか私も、熱くなってきた。妹のように可愛いキミが、「義務だから」って、教室に入って息ができなくなるのに学校に行く必要なんてない。絶対にない。

「なんで学校に行かないといけないと思うの?」

キミは言う。「勉強」
そっか。勉強は学校でするもの。そうだよね。でも、、、
塾も行ってる。そこでも勉強はできる。なんなら、中1の勉強なら私が教える。私が分かんないところは、頭いい友達沢山いるから紹介する。
ってことで、勉強は学校いかなくてもできるとして、却下。次。

キミは少し考え込んで、「コミュニケーション能力とか人間関係とか…」
それっぽいことを言ってきた。
今、みんなに無視されてて、コミュニケーション取ってくれる人いないじゃん。コミュニケーション力養うなら、私と話してた方が数百倍いい。却下。次。

「…高校行くため?…」
「そんなん、塾行って勉強してれば大丈夫だって。今はN高とかあるし。他には?」
「もうない…」
「じゃあ、学校いく必要ないじゃん笑」
「そっか、確かに」

おい、そこ納得したんかい。と、思っているとしばらくしてからキミが大真面目な顔して言ったんだ。

「チサちゃんは、無責任すぎる!!」って

ここで、あまりにも真剣に言うもんだから、なんだか笑えてきたんだけど、吹き出したら説教がまた伸びそうだから、そこはグッと堪えて言い返してやりましたよ。

「無責任ですけど、なにか?」ってね

私は、キミの親ではない。姉でもない。ちょっと年の離れた友達。
キミの人生に責任なんて持てないし、持たない。

だからこそ、声を大にしてキミに言えるの。
「学校行かなくていい」ってね。

キミの話を聞いてて思ったの。

13歳のキミの世界は、中学校と家の往復で、勉強も人間関係も人生もギュッと全部そこに詰まっていて、どっちかに居づらくなったら終わりかのようにシビアな世界だってこと。
クラスも部活も塾も大体みんな同じ人たちで、どれか一個で不調和が起きると一気に伝染して、いつの間にか全ての居場所がなくなっていく。
何が理由とかないことだって多い。きっと、全部「なんとなく病」の仕業。

なんとなく、気に入らなくて
なんとなく、キミがそこにいたから
なんとなく、無視してみた
なんとなく、それを真似してみた
なんとなく…

でも、キミは「なんとなく」つらいんじゃなくて、確実に苦しんでいる。
だからそれを、「なんとなく」用意されているキミの大人への階段「中学校→高校→(高等教育)→就職」のために、今は苦しくても耐えろって私は言えない。

13歳のキミの世界にいる友達は、大体キミと同じ年齢で、大体同じ地域に住んで、大体が中学校に通っていて、、、まぁ、はっきり言って多様性ないわけ笑
コミュニティも学校か家の2つだけ。塾だって同じ中学の友達が行ってるんだから結局学校と変わらない。
だからこそ、どっかでつまずいたら終わりみたいに絶望しているわけだけど…そんな必要ない。てか、キミはつまずいてなんかない

けれど、22歳の私の世界にはびっくりするくらいいろんな友達がいるの。
年齢だってバラバラだし、なんなら年齢知らない人もいるし、どこの国出身か知らないで話してた人もいるし、自衛隊辞めて大学生になった人もいるし、「牛と私どっちが好き?」って聞いて「牛」って即答した彼は中学卒業してすぐ北海道行って酪農家目指してるし、けん玉で生活してる人もいるし、紅白歌手もいれば、舞台監督もいるし、起業してる人もいれば、脱サラした人もいて、都会で暮らす人もいれば、山に籠る人もいるし、島に移住した人もいる。もうね、なんだってありなの。本当に。

確かに、キミのいうように中学校は義務教育で、卒業はしないといけない。させないといけない。親には親の、教師には教師の責任がある。
だから、どうにかしてキミを学校に行かせようとする。保健室でもいいよとか転校も視野に入れましょうとかね。それはキミの人生に責任があるから。
でも、それだけだとキミに逃げ場がないでしょ。学校行けない自分をもっと責めるでしょ

だから私は、義務教育だから中学校をやめられないことを知りながら、キミに言い続けるの。

「学校行かなくていいよ。私と遊んだほうが絶対楽しい」って。
「キミの人生はどうにでもなる。なんの根拠もないんだけどね〜」って。

それで、キミはまた無責任すぎるよって怒るんだろうけど、無責任だから言えるし、無責任だから言わないといけないの。キミのために。たぶん笑


それから、1ヶ月くらい

キミは「チサちゃん、ひま?」とか、ラインしてきて、遊ぼって誘ってくる。絶対私のこと暇人だと思ってる笑
学校では話せないけど、キミを気にかけてくれた友達が家に来てくれたこと、それからだんだん学校に行けるようになったこと。
逆に、私が一年ぶりに大学行くの緊張していると、応援してくれたこと。家まで誕生日ケーキを持ってきてくれたこと。

今は、そのすべてが嬉しい。
苦しい時に思い出してくれてありがとう。


追記

中学生って本当に閉塞的な空間にいて、どこにも逃げ場がない
もう、日本の教育制度が悪いって言っちゃえばそれまでなんだけど、中学生にもサードプレイスが必要よね
あと、もう一つの課題は長期入院後の不登校の生徒数が実は結構多いってこと
すごく帰属意識が高い時期だから、入院中に友達(A)には新しい友達(B)ができていて、退院後にその友達(A)が自分のところに戻ってきてくれたけど、それを友達(B)は気に入らない。みたいなことがあるの
中学生の世界は結構繊細です。本当に。自分、よく生きてきたなって思うくらいサバイバルゲーム化してる。


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