ゲームビジネスの進化と変化
現在はダウンロード販売が主流
現在のゲーム業界と比較してしまうと、もう「ええ?昔はそんな感じでビジネスやってたの!?」と本当に信じられない反応をされてしまうかもしれませんが、これも歴史の一つなのでお話しておきますね。
まず、現在のゲーム業界におけるビジネスの本流は(ハッキリ言って)ダウンロード販売です。
モノにもよりますが(任天堂系などを除くと)現在のゲームビジネスの販売比率はダウンロード販売がパッケージ販売を明確に上回っています。
日本国内だけで算出したりニンテンドーSwitch専用ゲームソフトだったりすると、また様子も変わってきますが。(まだ比較的パッケージ販売多め)
ワールドワイド&マルチプラットフォームで展開されているようなゲームソフトのほとんどが、ダウンロード販売で売上を上げています。
それこそタイトルによってバラバラですが比率はダウンロード販売70%(パッケージ販売30%)というものもあれば、ダウンロード販売90%超というタイトルだって存在します。
(もっと言うと最近は弊社の『戦場のフーガ』シリーズのようにダウンロード専売というタイトルも増加し続けています)
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漫画も同様に電子書籍が主流
少し前からゲームソフトのダウンロード販売と、漫画における電子書籍販売は比較されることが多くて、どちらも年々少しずつその比率が変化してきました。
ほんの10年位前までは、どちらもパッケージ販売&紙の本がビジネスの中心でしたが、現在はダウンロード販売&電子書籍販売が主流となっています。
ただ、漫画の中でも少年ジャンプ作品などは例外です。
例えば『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』などの国民的大ヒット作品はまだまだ紙の本のほうが売れています。
これは小さい子どもたちが読者層に含まれているためです。(子どもたちは友達と貸し借りをするので)
しかし漫画業界は少年ジャンプだけではありませんし、年間1万冊もの新刊が発行される日本国内発行の漫画のほとんどは電子書籍がベースとなっており、売上比率は完全に電子書籍販売の方が上です。
5万部の漫画作品だった場合、比率的には4万部が電子書籍販売で1万部が紙の本といった具合です。(モノによっては電子書籍販売のみで紙の本は出版もしていないということがほとんどです。中には初版で紙は2000部や3000部しか作らないなんて漫画作品だってあります)
国民的大ヒット作品を例に挙げると、100万部のうち80万部が紙の本で20万部ほどが電子書籍という比率になってくるイメージです。
分母が大きければ物理販売の比率が増えてくると感じてもらえれば良いかと思います。
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なぜこういった傾向に変化したか?
ゲームソフトも漫画もどちらもダウンロード販売(電子書籍)が主流となっている、というお話をしていますが「なぜそうなったのか?」ということにも触れておきますね。
大きく理由は2点あると思っています。
①便利だから
これはお客様視点の話です。「欲しい」と思った時に店舗までわざわざ足を運ばなくてもその場で決済さえすればダウンロードしてすぐに遊べる&読めるわけですから。
加えて言っておくと、ゲームソフトのダウンロード販売や漫画の電子書籍はメーカー主導で定期的にセールを展開することが出来ます。
特に漫画に関しては書店側が本の値下げセールを実施できないという事情から、お客様にとっては(電子書籍のセールプロモーションにより)購入機会がふえることもあって「便利(お得)」ということになります。
②利益率が高いから
これはお客様視点ではなくメーカー(出版社)視点の話になります。物理的なゲームソフトや漫画の本には、在庫リスクと流通コストというものが必ず発生してしまいます。
ダウンロード販売と電子書籍販売にはその両方が存在しません。
よってメーカー&出版社にとっての利益率は高くなるということです。
また上であげたように、メーカー(出版社)側が主導でセール=値下げ戦略をプロモーション的に展開することが出来るので、その都度売上の向上が図れるようになっています。
「安くなってるからこの機会に買ってみるか」というのはお客様にとっての一番の購入動機になるということですね。
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やがて豪華な限定版のみに
現在も「いいえ、私は必ずゲームソフトも漫画も物理的なモノが欲しいのでゲームはパッケージを買うし漫画も紙の本を買います」という方もいらっしゃると思います。
が、今となっては(そういう方は)かなり希少種ということになっています。
特にゲームソフトに関しては、やがてパッケージ販売はほぼ無くなると私は思っています。
完全にゼロになってしまうということではなく、(現在もありますが)設定資料やフィギュアやサントラなどを同梱した高額な豪華限定版のみを中心としたビジネスに変化していくと思っています。
現在の豪華限定版はモノにもよりますが、1万5千円などで販売しているものもありますが3万円から5万円で販売されているものもあります。
より嗜好性の高い商品をそれを望む一部のお客様に届けるという、どちらかというと(よりコアなファン層にアピールするという)サービス精神に近い感覚だということですね。
漫画に関しては国民的大ヒット作品などを除くほとんどの漫画作品はやがて電子書籍販売のみになっていくのだと思います。
(これも全くのゼロにはなりにくいかもしれませんが、ゲームソフトと違って漫画は単価が安いので生産ロット数=印刷数が少ない場合はどんどん単価が上がってしまいますので事実上ビジネス的に出来なくなると予想しています)
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さて、ここからはお勉強の時間です。現在のビジネスがダウンロード販売&電子書籍販売が主流だとして、一昔前のビジネスというのは果たしてどういうものだったのでしょう?
今振り返ると「かなり狂っていたな」と私自身が感じていましたし、多くの業界人も同じ感覚でいたのではないでしょうか。(そうあって欲しい)
今回はゲームソフトのパッケージ販売を中心にかつてのビジネスの構造を振り返りつつ勉強していきましょう。
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ゲームソフトは買い切りビジネス
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