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2018年12月の記事一覧

呪われし印籠

呪われし印籠

「助さん、格さん、もういいでしょう」

上品な声が不愉快に鳴った。
ついに来た。手に汗がにじむ。
奴らに何度やられてきたことだろう。何をどうやったって、あの懐からアレが取り出された途端、こちらは身動きひとつとれなくなるのだ。

幾度となく頭を巡らせた。よりうまく、より楽に、贅沢な暮らしができるよう。なのに、あのふやけた面した爺の隣がアレをひとつ取り出すだけで、こちらが積み上げてきたものはすべて露

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体温の無い愛情 序幕

体温の無い愛情 序幕

猫と仮面では、かぶることに意味の違いはあるだろうか。

どちらも角をたたせないようにするためのものではあるが、愛らしい風貌の猫と、無機質な仮面とでは、少しタイプが違うように感じる。

自分は猫と仮面、どちらを被っているのだろうかと考えながら、田崎幸一郎は同僚の話に相槌を打っていた。

「やっぱ幸は凄いぜ。営業成績、3位以下に落ちたことないんじゃないか?」

赤い顔をして、必要以上に大きな声

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