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詩集
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#心

依存

依存

蛾が口のなかにいる

頬の内側で ピタリと動かず

わたしが悲しんだり 喜んだりした時だけ すこし羽ばたく

この乾いた不気味が 何度でも心を止めて

巣から 離してくれない

鱗粉が舌におちてくる

言いようのない苦味が 唾液と共に溶けて

侵食してくる

だというのに 

蛾を食べられずにいる

頬の内側で ピタリと動かず

わたしが憎んだり 嫉妬した時でも やはり羽ばたく

この乾いた不気味

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ネズミの涙

ネズミの涙

安いワインを グラスに注いで

喉をならして 汚い幸せを流し込む

スカスカの魂から 垂れる涙を

知っている者にしか 

分からない苦しみがある

埃まみれの誇り

傷の少ない人生

足踏みしすぎて 窪んだ場所から

離れられずにいる

自分が腐るのを 対岸から眺めて

それをつまみに ビールを流し込む

スカスカの魂の 薄い悲鳴を

聞いた者にしか 

分からない苦しみがある。