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ニューヨークの本気に触れた『Last Message』(レポ感想考察・前編)

今いちばん注目のお笑いコンビ、ニューヨーク

2019年からM-1グランプリで2回、キングオブコントで2回決勝に進出。
今、冠番組やレギュラー番組含むTVやネット番組はもちろん、YouTubeも話題。吉本の各劇場にも立ち続けている。

今年は、初めて賞レースにエントリーせずに、
自身として最大規模のキャパシティ、福岡・大阪・東京の3カ所で行う単独ライブにしっかり向きあうことを選んだ彼ら。
今までは、売れるために賞レースで”闘う”ことをずっと辞めずにきた彼らが、自分たちの”今やりたいこと”にbetし、勝つためではない、自分たちの満足のいく最高の作品を作り上げるため、挑んだ夏だった。


私は鬱病10年生、ようやく障害年金の受給にはこぎつけたものの、
まだまだエンタメや趣味にかけるお金は捻出できず、
地方住みも相まって会場に赴くことはおろか、自宅にいながらライブを視聴できる配信チケット(2000円)すら、買うことができずにいた。

今いちばん観たいものがみられない悔しさ、何度これまで経験してもやはり推しがいる故のこの苦しみとは、一生付き合うことになるのかと思っていたが、
とある方が私のnoteの記事にサポートをくださって、配信チケット購入のため背中を押してくださった。

※参考記事。


応援しているひとたちの”最高傑作”を、
おかげさまで私も観ることができて本当に嬉しかった。

私はもともとアーティストを追いかけていた人間なのだが、
お笑い芸人さんの単独ライブの配信を観ることができたというのは、
アーティストでいうところの、
”最新アルバムを聴くことができた”という感じなのだな、と。

現地に行けたひとたちにとってはまさに”LIVE参戦”できたということだけれど、
配信を観終えたとき私が感じたのは、待ちに待った、だいすきなアーティストのNEWアルバムを堪能できたときと、似たような感じの余韻に浸る自分。


会場に行った方々のツイート、投稿写真を追っていたら、
以前では(きっと)なかったような数の、色とりどりのお祝いのお花がずらりと届いている。
彼らの現在のレギュラー番組、そしてなかよし同期のみんなからも。


会場には、
YouTubeにて毎週日曜22時放送の
『ニューヨークのニューラジオ』のブースを模した撮影スポット、
屋敷さんが制作した版画や、嶋佐さんのインスタものまねの写真がコーナーになって飾られているなど、
席について観る以外のおたのしみがたくさんあるようだった。


配信チケットも好評で、配信期間が2度も延長された。
ダイジェストがチラ見できたのも、私が観たくなった要因だ。


#ニューヨーク単独
というタグでTwitterが盛り上がっていたので、
今さら私がレポを書くようなことはないかもしれないが、
自分の覚書として書いておきたい。
初めて、ニューヨークのひとつの”作品”を観たので。



公式に
#ネタバレ
はもうしてもいいと本人たちが話していたので、いいんだよね?



『Last Message』


という、今回のライブのタイトル。


観るまでに”ラストって?メッセージって?”と、いろいろ意味を考えてしまうようなタイトルだったが、
観てみると、
なるほど、

披露したネタ8本(オール新ネタ)の、ひとつひとつに「Message」が込められているという構成だった。

ネタ披露後に、そのネタに込められた「Message」が、スクリーンに英文と日本語で流れる。
直訳できるものもあれば、その通りではないものもある。


、、、、、、これ、
ニューヨークがまだ若いころ、芸風が定まったきっかけである
「アーティストみたいに、ネタにメッセージ性を込めてもいいんだ」
と思ったことに由来しているのかな?
と、勝手に想像してみる。


1.漫才(懐かしいシーン)

ライブの始まり。あいさつがてら、
嶋佐さんの「フジロック(フェスティバル)と裏かぶりなんですけどね」
という、なにわ男子の藤原丈一郎くんも自身のライブで真似したというつかみで、会場を和ませる。
お笑いに関しては、本当に生で観たことがないので、
そっか、漫才は本来ふたりの立ち話か、とか、
アーティストのLIVEより100倍以上お客さんとの距離感が近いな、とか
基本的なことをまず感じつつの、漫才だった。

『ニューヨークのニューラジオ』を聴いているとほぼほぼわかる、
嶋佐さんの学生時代の、色恋沙汰のない個性的なエピソードを次々と明かしていくものだった。

FIRST MESSAGE
All of this comedy is a true story.
この漫才は全て実話である

、、、、、、なるほど、
こうやってひとつひとつのネタにメッセージがついてくるのか。次は何だろう。


2.コント(モノマネ芸人)

薄暗い照明に、ソファーとテーブルの部屋。
屋敷さんは屋敷さんの風貌のまま、イチサラリーマン役。
嶋佐さんはモノマネ芸人になった同級生の設定なのだが、その服装もいかにもという感じで、モノマネ芸人さんに対するイメージの偏見だけど確かになっていうような、、、、、、

嶋佐さんは、漫才やコントに入ると本当に何の役にも憑依できるのが魅力だが、
私がこのコントで注目したのは屋敷さんの表情の変化。
たまたま自分に似ている有名人兄弟が現れたおかげでモノマネ芸人として活躍できるようになった同級生(嶋佐)に、上から目線でモノを言われ続けるシーンがある。
その話に疑問を感じ始め、嫌そうな表情を浮かべるところから、徐々に徐々にイライラが溜まり、限界がきて最終的に大爆発するまでの、屋敷さんの表情のグラデーションが見事だった。
小道具を身に着けてキャラになり切ればある程度いける演技もあると思うが、屋敷さんはそれなしでの、表情での演技が本当にうまいなーと、常々思っていた。このネタでそれがよくわかった。鮮やかだった。爆発後のキレッキレの怒りのたたみかけも見事。
「運だけでのし上がった人に何を言われても響かない」、、、確かに。

それでも、オチではその同級生のさらなる運の強さに「コイツ運すげー!」と完敗する、という、この世の不条理を見事に描いていた。

SECOND MESSAGE
The skillful hawk hides its talons.
鶴瓶とタモリが一番すごい

これ、英文を直訳すると「能ある鷹は爪を隠す」なのだが、
あえて具体的な大御所芸人の名前をあげているところが、彼ららしい。


3.コント(ノート)

ふたりとも白い、パジャマのような服装。
嶋佐さんはおかっぱ頭に眼鏡、屋敷さんはほぼ屋敷さん。
ミュージカル舞台のような照明、独特の、ニューヨークらしからぬ世界観の二人芝居が始まる。
森に迷い込んだ設定。ファニーな雰囲気はゼロのまま。
「僕はこの森が気に入っているんだ」
「僕はつくづく気分に左右されやすい」
「人見知りのオオカミがいるようにね」
なんて、ニューヨークの世界にはまずないであろう話口調で進んでいくコント。

、、、、、、と、思ったら暗転し、
その後はふたりの舞台裏のシーンへ。
独特の世界観のコントをやっていたふたりはとあるお笑いコンビであり、
あるとき、コントの台本が勝手に出てくる悪魔のノートを手にしてしまったという。
しかも、その通りにコントをすると、不思議と信者のようなお客さんがどんどん増え続ける、、、というもの。
コントの台本は、ノートに次々と更新されていくので、一生ネタに困ることはない。
でも、、、、、、

「もうやめようや!」
と、しびれを切らして屋敷さんが言う。
悪魔のノート通りにコントをやっているが、”自分たちの本当にやりたいこと”ができないまま、ファンだけがどんどん増えていき全国ツアーも控えている、という現状に苦しんでいた。
ふたりで夢を持って滋賀から大阪に出てきたころを思い出せと、屋敷さんは嶋佐さんに訴えかける。
「俺らがほんまにおもろいと思うことだけやって、それをお客さんに笑ってもらって、それが一生続いたらこんな幸せなことはないって話したやんか」
と。
嶋佐さんは、
「わかっとるわ!」と。
「じゃあ、今までの生活に戻るんか?仕事なんてあらへーん!チケ売り、バイト、チケ売り、バイトの繰り返し!」
「今のお客さんは俺たちのコントを待ってくれてるー!今あるお客さんの声がなくなってもええんか⁈」
屋敷さんは
「せやけど、、、、、、」
と、葛藤する。


、、、、、、これって、もしかして、
リアルな芸人の葛藤を描いているのかな?

売れたはいいけれど自分のやりたいことができていない立場と、
自分たちの本当にやりたい芸を貫き続けているけれど生活が困窮している立場。

芸人という仕事を選んだ以上、どちらもありうる状況。
いつどうなるか、誰にもわからない世界。
果たして、どちらがしあわせなのか?

このコント自体は、最終的に悪魔に台本を消され、自分たちで考えたネタで全国ツアーをすることになっている(結構なんとかなるなぁ、的な感じ)ところで終わるのだが、

メッセージが、

THIRD MESSAGE
Sorry if anyone was offended.
気を悪くした方がいたらごめんなさい


、、、、、、だったのだ。

”気を悪くする”、というのは、このコントに関してとは思えなかった。
私の推測だと、
「皮肉」「毒」と言われるような、彼らの正直すぎる芸風についてかな?と。

「俺らがほんまにおもろいと思うことだけやって、それをお客さんに笑ってもらって、それが一生続いたらこんな幸せなことはないって話したやんか」

、、、、、、という屋敷さんのセリフ。

ニューヨークは、ネクストブレイクと呼ばれながらも長くブレイクできなかったコンビだ。
”売れたけどやりたいことができていない”芸人ではない。
先ほどのふたつの立場で言ったら、
”自分たちのやりたいことを信じ続ける”道を選んできた、
という方だ。

そして、
これからも自分たちのおもしろいと思うことをやっていくよ、
という決意と、
そのせいでもし誰かの気分を害したらごめんね、
ということが、
ニューヨークからのメッセージだったのかもしれないな、、、、、、

なんて、勝手に深ぁーーーく考えてみる。


4.コント(ロケ)

、、、、、、これは完全に、
嶋佐さんのキャラクターを堪能するたのしいコント。

2021年のキングオブコント決勝で10位(最下位)になった
『ウエディングプランナー』
のネタに出てくるキャラクターで、
”舞台監督の及川さん”という実在の人物をモチーフにしたひとを、
再び嶋佐さんが演じている。

※『ウエディングプランナー』のネタはこちら。


今回は、若手俳優設定の屋敷さんが挑む街ブラロケ番組の、監督?ディレクター?という立場。
「OKです!」
というセリフと共に登場しただけで、客席が沸いた。

『ウエディングプランナー』自体は”キングオブコント最下位”といじられていたが、ランジャタイの国崎さんが「あのコントよかったよー」と言ってくれたり、TBSの『ラヴィット!』でマヂカルラブリーの野田さんが「OKです」を言い始めてくれたり、、、今では嶋佐さんもラヴィットで毎回のように「OKです!」と言い続け、スタッフさんも嶋佐さんの席に瞼に張り付けるテープ(細目にする用)を用意していてくれて盛り上げてくれて。
”「OKです!」の及川さん”を模した嶋佐さんのキャラがどんどん育っていった結果が、この観客の盛り上がりなのだなと、しみじみ。

私は及川さんと実際に会ったことがないのに、喋り口調、話しそうな言葉、人の話を聞かず喋り続けるところ、急に何かに浸って語り始めるところ、、、、、、
とにかく、嶋佐和也という人物とは全く違うキャラクターが憑依していることだけはよくわかり、本人のことがわからなくてもとにかく笑える。
そして、このふたりがこのコントをたのしんでいることもよくわかり、屋敷さんは途中で耐えられずに笑いながらネタをしている。


そして。

このコントが終わると、
メッセージより先に、幕間のVTRが流れる。

【VTR】


YouTubeの企画?と思ったが、
このコントで演じている”舞監の及川さん”という人物がギャンブルずきなことにちなんで、嶋佐さんが扮する及川さんによる競馬企画が始まる。
嶋佐さんの自腹120万を賭けた企画で、
競馬初心者のニューヨークが競馬に詳しい著名人の楽屋を訪れ
(指原莉乃さん、麒麟の川島さん、かまいたちの山内さん)、
意見を参考にして予想をしていくのだが、
ラストに訪れた部屋に待っていたのは、
舞台監督の及川さん、ご本人。

嶋佐さんと及川さんが並んで座った。
顔自体はそこまでそっくりというわけではないのだが、
話を始めると、やっぱり、
嶋佐さんは、ご本人と喋り方が、そっっっっくり。
あまりに似ていて、隣でみている屋敷さんがずっと笑っていた。及川さんが話しているときに「今お前が喋った⁈」と嶋佐さんに聞いている。

TBSの『ラヴィット!』では、”爆買いベジータ侍”として引っ越しから何から大金を使うキャラが定着してしまっている嶋佐さん。
観ている側としては、どう転んでも”かわいそう”はなく、”面白いに決まってる”というテンションだ。
嶋佐さんは、GⅢ(M-1グランプリでいうところの準決勝らしい)のレースに自腹120万円を賭けて挑んだ。
とある楽屋で、ニューヨークふたりそろってTVで中継を観ていたが、
ふたりの画面を見上げる顔が、きらきらしていて個人的にとてもよかった。
嶋佐さんは、及川さん仕様の細目テープの隙間から少し素の顔を見せ、屋敷さんはただただ、どうなるんだろうとわくわくして観ていた。
予想外の6番の馬が優勢になった状況で「6買ってないよ!」「6買ってないね!」と、ふたりではらはらしつつ見守る展開。

、、、、、、結果は惨敗。

嶋佐さん、120万円を失った。


屋敷さんも、お客さんも、私も、

、、、、、、大爆笑。


(ちなみに、この企画の間中、嶋佐さんはずっと及川さん口調になりきって、永遠に憑依していた。すごいなぁと思っていたら、結果が分かった後倒れこんで、一瞬、嶋佐和也に戻った。)

そして、
その映像の後に、

FORTH MESSAGE
There are no absolutes in the world.
競馬は難しい

というメッセージが、スクリーンに映し出された。

absolutes=絶対的なもの、神
、、、、、、という意味らしい。

とにかく、この4つ目のネタはVTRも含め全て、”feat.及川”ということなのだろうなぁ。
嶋佐さんの、キャラを憑依させる力はすごかった。

この後のネタでも、それをびしびしと感じることとなる。




こうして、ニューヨークのことを思い出して書いている間はたのしいけれど、
私の現実世界は今ちょっとしんどくて、
そして相変わらず要点をまとめる力がなくて、
長々と書いたけれどまだ半分、、、、、、

日を改めて(これも数日がかり)、また後半戦を書きたいと思う。

とりあえず前編としてこれを〆ておこう。


後半戦、待っているひとがいなくても書くので、マイペースにやっていこう。

あ、ニューヨークのニューラジオが始まった!


お笑いに救われないと、正直心が死んでしまいそう。
ひとをたのしませる職業のひとに、心からの感謝を。

明日、ひとつでも笑える出来事がありますように。

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