わんぱくでもいい?!ルソー「エミール」に学ぶ教育論


自然に従って育てる

ルソーをご存じでしょうか。私は聞いたことある程度でしたが、今回、教育書として有名なルソー「エミール」3巻5編のうち、2編を読んでみました。この本は、家庭教師と教え子「エミール」のやりとりを通して理想の教育増が描かれています。

これを読むことで自分自身のためにもなったと思いましたので、ご紹介したいと思います。

2編は、5才から12才くらいまでの教育について書かれています。
そのくらいといえばほとんど小学生ですね。最近の日本の小学生は、とても忙しいようです。習い事、中学受験などで学校の後もスケジュールがいっぱい。また、都心部では空き地や公園が減り、遊ぶ場所も減っています。ゲームの普及で家で遊ぶことも多いでしょう。

ルソーが生きていた18世紀の子どもは、「小さい大人」として子どもの発達段階を考えずに大人を作る教育をしていたそうです。そのため、「もっと自然に従った子育てをしましょうよ」と主張します。子供が生きる喜びを感じ、人生が楽しいと思うような方法で教育をしなければ、自由のない奴隷と同じだと言います。

現代の日本において、子供は喜んで学んでいるのでしょうか?自由ではないという点では、まだまだ参考にする点が多いように思います。

経験から学ぶ

自然に従って育てるとはどういうことなのでしょうか。
ルソーは、まず経験から学ぶことを推奨します。本を読んで説明したり、命令したりするのではないのです。

小学校時代を思い返しても、授業で習ったことはあまり思い出せないです。でも、社会科見学で行った醤油工場の醤油の良い香りや大きな風呂のようなところに醤油が入っていてびっくりしたことは今でもはっきりと覚えています。

ルソーの実例もご紹介します。

ソラマメを植えて子供と一緒に大切に育てます。手間と愛情をかけて育て順調にそだちます。するとある日、ソラマメが全部抜かれてしまいます。子供はショックを受け、泣き叫び落胆します。

やがて犯人は庭師だと分かります。事情を聞くと、もともとその畑は庭師のものでメロンの種を植えていたとのこと。子供がソラマメを植えたせいでメロンが育たなかったと庭師が文句をいいます。そこで子供は自分のほうが悪かったのだと分かります。そして収穫物を半分あげるからまた植えさせてほしいと交渉を持ち掛けます。

子どもは、自分の体験を通して労働の喜び、道徳心、交換することなど多くのことを学びます。しかも驚くことにこの体験は、大人が仕組んでおくそうです。

またルソーは、自然に従うために甘やかしすぎないことが大切だとしています。助けすぎると弱い人間になってしまいます。

例えば、言葉を覚えているのに泣き叫ぶ子供がいるとします。泣き叫べば大人が対応してくれるということは、命令に服従させたように勘違いしてしまうのです。泣き止み、言葉で要求するまで放置です。きちんとできたら対応します。

泣いている間は声をかけない

また、怪我をした場合も大けがでなれば、すぐには近寄ってなぐさめたりしません。子供が落ち着くのを待ちます。

すぐに対応してしまうと「自然が与える試練を学ぶ」機会を奪ってしまうのです。転んでもすぐに助けないで自力で立つのを待ちます。といっても、私もつい助けようと手が出てしまいそうです。

だからと言って、完全に放置しているわけではありません。大人は、大けがや危ないものには細心の注意を払い、安全に配慮しています。
甘やかしすぎず、厳しすぎないちょうど良い対応する。これは、大人も大変です。

やんちゃな子供の対応

自然に従うといっても子どもがやりたいようにさせるわけではありません。もし、大人の目から見て明らかにわがまま(ルソーは「無分別」と表現しています。)な場合は、直接言葉で怒ったり、命令せず物理的な方法で子供の行動を押さえます。

やんちゃ盛りの子供にそんな理想的な対応できるの?って思いますよね。ルソーは、具体例も示しています。

物をやたらと壊しまくる子どもの場合。
まず、壊されたくないもの、危険なものは隠すか手の届かないところに置く。これは、基本ですね。
子供が壊した後、すぐに代わりのものを与えない。さらに、壊れたことによる不都合を体験させるとしています。

例えば、子どもが窓ガラスを割ってしまったとき。一度目はガラスが割られたら、だまって片づける。

でも、何度もやるようなら、そっけない態度で「これは手間をかけて手に入れた大切なものです。壊されたくありません。」と冷静に言う。そして窓のない暗いところに子供を突然押し込める。泣き叫んでも、他の大人にも申し合わせておいて、「窓ガラスを割られたくありませんから。」と出さないようにする。

すると子供は、暴れたり泣き叫ぶ。何時間か窓のない暗い部屋を十分に体験させる。その後、謝ればすぐに出して抱擁する。その際、約束や誓約をさせないとしています。これも大人の試練ですね。私なら絶対に「2度と壊さないって約束だよ!」って言ってしまいそうです。

しかも軽く虐待に当たらないのか、ちょっと心配ですが上手に出来れば子供にとってもしつけになるのでしょうか。この辺りは色々な方にご意見を伺いたいです。

さらに、勝手に一人で外出しないようにしつける方法についても書かれています。
「散歩に行こう」と大人が誘ったのに子供が断ります。その時は、大人は承諾して散歩に出ません。後日散歩に行こうと子供から言い出した時、大人は断ります。「前回、あなたが行かないって言って私は行かなかった。だから私は行かない。」

すると、子供は「行きたい」と泣き叫びます。ここで大切なのは、一度「行かない」と言ったら覆さないことです。服従させる喜びを身につけさせてはならないのです。

どうしても散歩に行きたい子供は、勝手に散歩に出ます。これも想定内です。子供の知らない大人に見張りを頼みます。そして色々な人から話しかけられてちょっと怖い目に遭わせます。

この体験を通して、自分勝手な行動をしてはいけないと身をもって学ぶでしょう。という話です。これも、「かわいい子には旅をさせよ」ではありますが、周到な準備と見守りが必要です。簡単ではありませんが、子供には学びになると思います。

学びたい気持ちを起こさせる

経験から学ぶことは、現代のアクティブラーニングの源流となっています。子供は経験することにより、たくさんの疑問がわいてきて、それを解決したいと思います。自分から学びたいと思える環境づくりをすることで子供が楽しみながら勉強することが出来るのです。

また、アクティブラーニングをすることで、考える習慣が身につきます。何でも先に正解を知ってしまうと面白くないし、頭に残りません。

ルソーは、さらに幼少期は、たくさん走ったり叫んだり子供らしく腕白に過ごす方がいいとしています。先に身体を鍛えることで大人としての理性があとから身につくとしています。

そういう意味では、昔ながらに野山を駆け回るような過ごし方が子供にとっては楽しい時間であり、生きた学びの時間となります。

今回私は自分自身に対して、「一度禁じたことを覆さない」という言葉が響きました。
夕食後にお菓子を食べないと決めたのに、言い訳をして破ってしまう。とても反省しました。

この本はちょっと難しいところもありますが、難解というほどではありません。読み返せば読み返すほど発見があります。お子さんの年齢にあったところだけ読むという方法もおすすめです。(上巻:12歳くらいまで 中巻:思春期-20歳 下巻:20歳~結婚)
どこから読んでも名言だらけの名著、良かったら手に取ってみてください。哲学が身近に感じたり、子育てのヒントになれば幸いです。

参考文献
ルソー『エミール(上)』岩波文庫 1986年

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