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小学生の追求力はすごい:お茶博士

「香りのブレンダーになろう」

「お茶(日本茶)インストラクター」という資格制度が99年度から始まりました。

 PTA会長のKさんもこの資格を持っています。「お茶のソムリエ」というわけです。

さて、子供達が今、調べている「お茶」の学級の目標は「香りのブレンダーになろう」です。これは言い換えれば小学生版お茶インストラクターです。

次のことを知っている、わかるということが条件です。

①お茶の歴史を知ろう(聖一国師、徳川家康、他)
②お茶業の仕組み(一番町学区の役割は)
③世界のお茶と流通(紅茶、ウーロン茶、他)
④お茶の栽培(どうやって育てるの)
⑤お茶の製造(どうやって作るの)
⑥お茶の様々な使われ方(色々な製品があるね)
⑦お茶の種類と品質(分け方にもいろいろあるよ)
⑧お茶の成分(カテキン、その他)
⑨お茶の効能と効果(リラックスするよね、それから)
⑩お茶の入れ方(茶道、湯呑み他)

自分の疑問をどんどん調べていこう。

以下は私の教育論文です。*******

1  「総合的な学習の時間」の見通しの必要性

「総合的な学習の時間」は授業者の見通しが必要である。

見通しの無い「総合的な学習の時間」は授業とはいわない。

単なる自由研究である。

この論考において何回もいうが「自由研究」を学校でやるのが「総合的な学習の時間」ではない。

これは一貫したボクの主張である。

しかし、現状はまだまだ「自由研究」を子どもそれぞれの課題でやっている学校が多いことか。

子どもは何かしらインターネットや図書館で調べるだろうが写して発表しておわりである。

「自由研究」にさえなっていない学校も多い。

中学校では時数体系の関係でどうしても「個人研究」の形をとらざるを得ないところも多いだろうし受験を考えたら「そんなことはやってられない」というのが本音だろう。しかし、ボクは思う。

中学ならもっと高度なたとえば気球を飛ばすとかイカダを作るとかお茶博を開くとか、もっともっと小学生よりも大胆かつ、面白いことができるのではないだろうか。

きっと、日々の部活や生徒指導や受験やそういう諸々のことで忙しすぎて「総合的な学習の時間」にエネルギーを使えないのだろうと思う。気の毒なことである。

 さて、見通しの話にもどろう。

見通しの無い授業は何でもそうだが海図を持たないで船出するようなもので多分すぐに難破する。

船長たるや海図に詳しくなくてはいけない。

子どもの思いを大切にすると言うのは何も持たないで船出すると言う意味ではない。

海図を持ってその上で行き先を決めさせるのである。

授業は目的があるのだから海図は必要なのである。

 以下は私の勤務した小学校六年の「お茶のインストラクターをめざせ」の見通しである。

●全体の流れ・全体構想

A お茶がお茶に追われてる(15時間)情報・環境・健康・現代的な課題 観察、実験・見学調査
B 世界の中の一番町お茶問屋(17時間)地域や学校の特色
C 工場見学をして(14時間)見学・調査・地域
D 茶道を体験しよう(10時間)興味関心
E お茶の良さをアピールしよう(8時間)発表・討論・情報
F 世界に向け英語でお茶コマーシャル(8時間)国際理解・情報
G お茶のインストラクターをめざせ(8時間)福祉・地域・地域の人の協力

※ 全てをやるわけではなく「子どもの思い」に応じて柔軟な計画をする。したがって順番もAからGまで順序よくやるわけではない。

しかし、追求のレベルの高さをある程度そろえたいため共通の体験をさせたい。

Aお茶がお茶に追われてる

①お茶の敵はコーヒーでなく、お茶(2時間:課題を見つける、健康茶の多さ)
②どんなものが飲まれているか(4時間:我が家の冷蔵庫、調べ方、探求活動の計画)
③インターネットで調べよう(5時間:調査、情報データの収集、そのやり方)
④お茶の種類をグラフに表そう(3時間:表現、発表の方法)
⑤好きなお茶は体にいいか(1時間:健康問題)

B世界の中の一番町お茶問屋

①お茶問屋のお茶は静岡茶?(2時間:地域との連携、人材活用)
②お茶の種類はどんなものがあるか(2時間:調査、インタビュー)
③一つの銘柄をつかっているの?(2時間:立場を知る、工場の企業秘密)
④聖一国師の果たした役割(1時間:歴史、郷土の発展に尽くした人)
⑤一番町はいつもお茶の香り(2時間:風の向き、歴史的事実)
⑥缶はどんなものを使うの?(4時間:製缶の仕組み工場見学、環境リサイクル)
⑦香りを長持ちさせる工夫は?(2時間:真空パックの工夫、研究開発の大変さ)⑧お茶問屋の悩み(2時間:人材の不足、高齢化の問題)

Cお茶工場見学をして

①工場の様子をレポートする(4時間:体験、手もみ、家族の人の働く姿)
②お茶のとれる時期だけ忙しい?(2時間:一年中忙しい事実)
③働くおじさんおばさんの苦労(2時間:人情、社会体験、見学)
④一生懸命さを絵に描いて(5時間:図工との合科的学習、感動の表現)
⑤お礼を手紙に表そう(1時間:手紙の書き方、思いやり)

D茶道を体験しよう

①岩倉さんにお茶の入れ方を教わろう(2時間:おいしい入れ方、地域の人材)
②本格的に作法を学ぶ(2時間:焼き物への発展、華道への発展)
③千利休と秀吉の関係(2時間:歴史とその策略、生き方、黄金の茶室再現)
④千利休の映画を見よう(2時間:先人の生き方、生きることの意義)
⑤ALTに茶道を教えよう�(2時間:英会話、国際理解)

E世界に向け英語でお茶コマーシャル

①お茶のコマーシャルを作ろう映像、ポスター、音楽、イベント(5時間:情報、討論、ものづくり、地域の愛着ある宣伝)
②英語でお茶の良さを紹介しよう(3時間:英会話、良さの発見)

Fお茶のインストラクターをめざせ

①歴史、文化、製法、本物のインストラクターの話を聞く。
お茶の試験問題をやってみる。(5時間:世界のお茶との比較、インストラクターの話)
②チャイルド・インストラクター認定証(3時間:福祉、味わう会、敬老会を招く会など)

◆一昨年、同じようなお茶の実践をやり、紹介した。

その時は「香りのブレンダーになろう」ということで行なった。 

しかし、「香りのブレンダー」というがコーヒーと違ってお茶は余りブレンドしないのである。

もちろん、各地のお茶そのものはよくブレンドするのだが各地と各地、たとえば静岡と京都のお茶をブレンドして売り出すということはしない。

その土地の名前を付けて売り出す。

そこで、「香りのブレンダー」よりはお茶そのものの歴史、文化、茶道、成分、種類などの知識を知らないと資格がとれない「インストラクター」という制度を利用し、「お茶のインストラクターをめざせ」としたのである。

◆総合的学習の時間は「子どもの思い」をもとにして出発する学習である。

しかし、あくまで「学習」であるから「遊び」とは違う。方向性があるのである。

子どもの思いは最初はただ、「お茶を飲みたい」とか「お茶工場へ見学に行ける」という単純な思いでこの学習を始めている。

しかし、「お茶」の中から疑問を引き出し、組織だって追求していく過程で、「お茶」の持つ、奥深さや歴史、人との関わり、地域の人の苦労など、今まで見えていなかった身近な人々の苦労や工夫に驚き、「より調べてみたい」という欲求につながるのである。

そしてそのように導くのが教師の役割である。

さらにその思いを伸ばして、福祉に向けたり、情報につなげたり、環境につなげたりするのも教師の出番である。

そういった、教師の出番と子どもの活動に任せる部分を明確にし、アドバイスしたり賞揚したりしながら学習を進めていくということが見通しをもつということである。

見通しを持ちつつ柔軟性のある単元展開の工夫をしていくのである。

子どもの活動と問題意識の広がりは子どもの体験活動の時間に比例すると考える。

従って、一回限りでなく何回かの様々な活動を経験させ、地域の人や図書館での調べ学習、お茶摘み体験、様々な場所、人との活動を組むことで単元を構成し、問題解決的な学習を進めていくことが必要である。

◆「お茶」は一番町学区を支える大きな商品である。

徳川家康の時代からお茶問屋として「茶町」という町名が付くくらい、地域を支えてきた産業である。

そういう意味で身近にある格好の素材であり、さらには意外に近くにあるにもかかわらず、子どもたちが知らない、後継者がいないという地域の現代的な課題、問題意識を大きく広げてくれるものである。

今から三年前、「お茶がお茶に追われている」という地域の保護者の言葉にまず、私が驚き、最近のコンビニでの売っている商品群を見て、さもありなんと納得したのであった。

お茶の敵はコーヒーだと思っていたのだが、何と、それは間違いで、お茶(緑茶)の敵は他のウーロン茶、健康茶だったのである。

それを「お茶がお茶に追われている」と表現したのである。

しかし、最近の「お茶ブーム」は健康ブームと相まって高まり、様々なペットボトル商品を生み出した。

数年前に「世界お茶博覧会」がグランシップで開かれたこともあって、「お茶」に対する関心は社会的にも高まった。

しかし、依然として「俺は茶葉で飲む」という宣伝があるくらい、煎茶そのものの消費は落ち込んでおり、ペットボトルのような粉茶やお茶を使った商品(カテキン茶飴、テアニンサプリなど)が伸びてきている事実がある。

まず、「お茶」についてのウエビングから授業を行った。

様々な方向性がでた。

お茶の種類には大きく分けて、「緑茶」「ウーロン茶」「紅茶」があること。

それは「発酵」の程度の違いから来ていることを学んだ。

この三種類を調べる段階から「やってみたいこと」「自分の調べてみたいこと」を追求していった。

「総合的な学習の時間」は「お茶を学ぶ」のではなく、「お茶」を一つの素材としながら、あくまで人が持っている「学ぶ」という追求の過程を経験していく「生き方」の学習である。

従って、知識よりもむしろ、道徳性や調べ方や意欲、表現力と言った知恵や工夫や問題意識といったまさに「生き方」を学んでいく時間にしたいのである。

子どもたち一人ひとりの追求の過程を把握するために座席表やポートフォリオ評価をして、「個の把握」に努め、同時に友達同士の「関わり合い」をつかんで集団としての広がりがどう広がり、どう影響し合っていくのかを見ていくのである。

子ども達の中間発表◆

・私はペットボトルの種類がどのくらいあるかを調べました。

すごくたくさんのお茶ペットボトルが出ていることにびっくりしました。どうしてこんなにたくさん出ているのだろうと思いました。

多分、健康ブームでお茶のカテキンや成分が体にいいことがわかってきたからだろうと思います。

今度はどうやってこのペットボトルを作るのか調べてみたいと思いました。

工場見学もしたいけどさせてくるかアポイントをとってみようと思います。(Y)

・僕はお茶を使ったお菓子について調べたんだけど、抹茶を使ったものとかその成分だけを使ったものとかいろいろあることがわかりました。お茶の緑がおいしさを誘うのだと思います。今度はその製法を調べて実際に作ってみたいです。(O)

・僕はお茶の木を採ってきました。

おじいちゃんのところで牧ヶ谷にお茶畑があって休みの日にお茶刈りを体験してきました。

種類がたくさんあるのでそれを標本にしました。たくさんありすぎて全部は集められないけどどう、味が違うかを��今度は調べてみたいです。実際に手揉み茶も作ってみたいです。(H)

・私は世界のお茶を調べました。

ほとんどの国でお茶を飲んでいることがわかりました。

ウーロン茶や紅茶や違いはあるけど、お茶は全世界で飲まれていることを知ってびっくりしました。

今度はパネルで世界地図をつくりそこにお茶マップみたいに表現できたらいいと思います。(K,M)

2「総合的な学習の時間」の振り返り

  ◆参考にした資料◆
静岡茶HP http://plaza.across.or.jp/~iochaya/szocha.html

http://plaza.across.or.jp/~iochaya/szocha.html

静岡のお茶やさんHP http://www.surugaya.com/ochajii/index.html

http://www.surugaya.com/ochajii/index.html

 市川園HP  http://www.ichikawaen.co.jp/�  南條園HP  http://www.nanjoen.net/� 香和柁HP  http://www.kawadashokai.co.jp/� 白形伝四郎商店 http://www.shirakata.co.jp/� 竹茗堂  http://www.chikumei.com/� 初摘園  http://www6.shizuokanet.ne.jp/usr/hatumien/� 本目浅吉商店 http://www6.shizuokanet.ne.jp/usr/hatumien/� やまき園 http://www.tokai.or.jp/yamakien/� マルモ森商店  http://www.ochanet.com/� 山一園本舗 http://www.yamaichien.co.jp/� お茶街道  http://www.ochakaido.com/� 岡部茶  http://www.okabecha.com/� お茶の国 静岡http://www.city.shizuoka.shizuoka.jp/deps/keizai/tea/index.html� お茶の郷博物館 http://www.plaza.across.or.jp/~cha-sato/� 静岡県茶業会議所  http://www.wbs.ne.jp/bt/chacha/index.htm� レッツお茶の店  http://www.ochanomise.com/� エコライフラボ http://www2.wbs.ne.jp/~ecolife/� 伊藤園  http://www.itoen.co.jp/� 日本茶インストラクター協会 http://www.nihon-cha.or.jp/kyoukai/kyoukai1.html�「沈黙の春」レイチェル・カーソン著 新潮社�「日本の統計2000」総務庁統計局 大蔵省印刷局�「子どもの学びを開く総合学習」佐々木勝男著 あゆみ出版�「こうすれば見える出来る総合学習」子どもと教育増刊号 あゆみ出版�「総合教育技術:総合的な学習の時間」98年10月号 小学館�「現代教育科学:2002年は目前、克服すべき課題」�99年2月号 明治図書�「茶栽培全科」:農文協



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