フィッシュマン4話★創作大賞応募 動物を虐待から守れ! 海を守る魚の戦士 ヘビVSハリセンボン
ミーンミーン ミーンミーン
今日も僕は、ゴミ拾いの為に海へとやってきた。
「あっつ~!」
熱中症になるかもしれないのに、僕は人の落としたゴミを拾うのだ。
イライラしそうな僕は、野球選手の大谷翔平さんの事を考えた。
【ゴミは人が落とした運。だから、ゴミ拾いは良い運を拾う事になる】
大谷選手は そんな考えから、グラウンドに落ちたゴミを拾うんだ。
それなら、僕も良い運を拾いたい。
そう思いながら僕が空き缶を拾うと、魚の腐敗臭が半端なかった。
「うっげぇ!」
誰だよ!?
こんな所に、サバ缶を置いていったのは!
しかも、中途半端に残しているから超臭い!
「ひぃーー!」
それだけではなかった!ウジ虫まで沸いている!
しかも隣のペットボトルの中には、よどんだ黄色の液体が入っている。
これって、オシッコじゃないの?ギョエーー!
最悪極まりない!
大谷選手~!こんなゴミでも、運を拾うと言えるのでしょうか?
何で、僕がこんなゴミを拾わなきゃならないんだぁ!ちっくしょおぉーーー!
「あっ!この子、知ってる!」
海辺に響いた声は、死にそうだった僕の意識を取り戻した。
顔を上げると、2人の男の人が掲示板の前で話をしている。
「すっぎょい格好だよな~。真っ黄色の髪だぜ。
スーパーヒーローを、目指しているんだって。」
「自分で美少女戦士って、言っているらしいよ」
えっ?スーパーヒーロー?
僕は気になって、掲示板に近づいた。
「うわっ!なに、これ!?」
思わず、手からトングが落ちた。
【海を汚す者は、ぶっ飛ばす!海の戦士ウツボちゃん!スーパーヒーローを目指します!】
掲示板に、ウツボちゃんの写真が貼ってあったんだ。
ギョギョ~ン!
その時、僕の前にギョニュー特戦隊が現れた。
「ウツボちゃんが、地元の子供新聞に載ったギョギョ!」
「すっぎょいね!
海の清掃団体と、一緒に活動しているのは知っていたけど。」
「ウツボちゃんは、子供にも人気があるギョギョ」
「僕への態度はキツイけど、子供には優しいんだよね」
ウツボちゃんは地上に現れてから、毎日ゴミ拾いをしている。
その姿は派手というだけでなく、はっきりと物を言う姿が清掃員の目を引いた。
「ゴミは置いて帰らないで!海は人間のものじゃないのよ!」
そんな彼女に最初に声を掛けたのは、YouTuberを名乗るカメラマンだった。
「アナタを撮影させて下さい!
アナタを人気者にさせます!収益も分けますから!」
すると、ウツボちゃんはカメラマンを張り倒した。
「私は、パフォーマンスでゴミを拾ってんじゃないのよ!
人間が海にゴミを置いて帰るから、仕方なく掃除してんのよ!
好感度集めの芸能人と一緒にしないで!」
ウツボちゃんは、カメラマンの胸ぐらをつかんだ。
「私は、海の魚なのよ!海を無くしたら、生きていけないの!命が掛かってんのよ!
人間みたいに、お金や好感度なんて興味はないわ!あんた達 と一緒にしないで!」
そうなのだ。
ウツボちゃんは、本当は魚なのだ。
どういう訳だか特戦隊によって、ウツボから人間に変身したのだ。
だから魚である彼女にとって、海の汚染は命に関わる大問題。陸でも生きられる人間とは、危機感が全く違う。
「本気で海を守らなければ、絶滅あるのみ!」
そんなウツボちゃんを、清掃団体が気に掛けた。
「マナーを守らない人に注意をするのは危険です。私達と一緒に、海を守る活動に参加して下さい」
そう言われて、ウツボちゃんは清掃団体の中に入った。
海に集まる子供達にとって、ウツボちゃんは最初は近寄りにくい人だった。
でも、ウツボやチンアナゴを操り出すと子供達の見る目は変わった。
「すごいね!魚が出てきた!」
「チンアナゴだっちん!」
「ねぇ、お姉さん!どうやって魚を出しているの?」
「それは、ヒミツ!私は、魚の力を使えるのよ!」
「面白いね~!」
ウツボちゃんは、子供達の人気者になった。
「つい最近、海のPRタレントが契約を終えて辞めてしまったギョギョ!」
それにより、清掃団体はウツボちゃんに海のPRガールを頼んだらしい。
「アナタに是非、お願いしたい!」
「私は、一生を掛けて海を守るわ!
私にとって、海は人生そのもの!
人間が海をキレイにしようと思っているなら、やってもいいわよ!」
そう言って、ウツボちゃんは協力する事に決めたんだって。
ウツボちゃんと仲良くなる子供も増えて、人が人を呼び、ゴミ拾いに参加する人は少し増えた。
最初は人間を疑っていたウツボちゃんだけど、今では清掃員とは仲良しだ。
気の強さは相変わらずだけど、ウツボちゃんは海を守りたいという人には優しい。
特戦隊は、嬉しそうに僕に顔を寄せた。
「良い事も悪い事も連鎖するけれど、人の情熱は良い影響に変わるギョギョ!
だから、広海も一緒に活動したら良いギョギョ!」
「えぇ・・。僕は、目立つのは嫌だ。
海のRPボーイなんて、絶対にやりたくない。それに、女の子は苦手。」
「ウツボちゃんは、まだ完全な女の子じゃないギョギョ」
「えぇっ?」
僕は驚いた。
「ウツボちゃんは、ハナヒゲウツボから変化させたギョギョ。
ハナヒゲウツボは最初は全てオスで、成長するとメスへ性転換するものが現れるギョギョ」
「うん。メスは黄色、オスは青色に変わるよね」
「そうギョギョ。ウツボちゃんは、完全にメスになってないから、男に戻るかもしれないギョギョ!
そしたら男の友情を深めたら良いギョギョ」
「はあぁ?」
何だよ、それ?
一体、人間の体としては どうなっているんだろう・・。
僕は、いかがわしい想像をしてしまった。
「広海も海の戦士として、海の環境の大切さをアピールするギョギョ!
新しい決めポーズも考えたギョギョ!」
「ゲェッ!また、それだよ!
僕は、決めポーズが一番嫌なんだよっ!」
でも彼らは、決めポーズに関しては【無くても良い】とは絶対に言わない。
僕の気持ちなんか聞く気はなく、決めポーズについての話し合いを始めた。
「変身する時に、広海が両手を広げるギョギョ!」
「それは、ダメギョギョ!
そうすると、俺の顔が見えなくなるギョギョ!」
「少しの間くらい、我慢するギョギョ!」
特戦隊が騒ぎ始めたので、僕は清掃員の元へ駆け寄った。
「時間なんで、僕は帰ります!
お疲れ様です!」
ゴミとトングを渡して、僕は逃げた。
特戦隊は、話し合いに夢中だ。
「最後は【チャキーン】ではなく、【シャキーン】の効果音が良いギョギョ!」
「使用料が取られる効果音は、ダメギョギョ!無料のやつにするギョギョ!」
僕は、サッサと その場を離れた。
「はあぁ~、疲れた!」
僕はテトラポットと並ぶコンクリートの壁に背中を当てて、丸くなって座った。
誰もいないし、隠れる必要なんて無いんだけど、嫌な事が続いてからは人目を避ける性格になってしまった。
水筒を開けて水を飲んで一息つくと、落ちているペットボトルを見つけた。
それは、1つだけじゃない。少し離れて、また1つ落ちている。
「ここも汚いな・・」
さっきのゴミ拾いの努力が、全て無駄に感じてしまう。僕はまだ、ゴミ拾いを頑張りたいとは心から思えないんだ。
「はあぁ~。」
また、ため息が出た。
僕は運を拾わなくても良いから、悪い行いをした人には必ずその報いを受けて欲しい。
そうならないと、放置されるゴミは無くならないと思うから。
「ぎゃははは!マジで、やんの?」
んっ?なんだ?
バカ騒ぎをしている声が聞こえる。
「あははは!早くやれって!」
この声は・・。
一番聞きたくない声だ。
もう帰ろう。
そう思うんだけど、頭から声が聞こえる。
【覗いてみるギョギョ?】
「えっ?ギョっちゃん?」
とっさに頭に触ると、そこには いつも通りの髪の毛があった。
ギョっちゃんがいたら、話したいな・・。
そう思いながら、僕は壁の裏から顔を出した。
「ちゃんと撮影しろよ!いくぞ!」
「ちょっと待って!新しいスマホにするから!」
聞き覚えのある声の主は、思った通り同じクラスの連中だ。
うっげぇ~。
僕が世界で一番会いたくないヤツら。
性格の悪い、クラスのリーダーの男子2人。
臭いサバ缶より、大っ嫌いだ。
どうして、僕はアイツらを見つけてしまうんだろう。
見つからない様に、海沿いを歩いて早く帰ろう!
そう思って浜辺を歩き出した時だった。
【助けてフグ!】
「えっ?」
僕は振り返った。
怯える声が聞こえた気がしたんだ。
「夏休みの自由研究でーす!」
「ヘビにフグを食べさせると、どうなるでしょうかー?」
「えっ?ヘビにフグ・・?」
何を言っているんだ?
僕は、汗が冷たくなるのを感じた。
「ぎゃははは!
ヘビVSハリセンボン!カンカーン!」
僕は、思わずコンクリートの壁に腕を掛けた。
顔を大きく上げると、奴らの前にはケースに入ったヘビと、バケツに入ったフグがいた。
僕は、尿入りのペットボトルを見つけた時以上にヘドが出そうだ。
アイツらのやろうとしている事は、動物虐待だ。
なにが、研究だよ!
ヘビがハリセンボンを食べて、どっちも苦しむのを楽しむんだろ!
「よし!ヘビを出すぞ!
ちゃんとカメラを回せよ!」
マズい!
アイツらに落ちていたペットボトルを投げつけてやろうと思った、その時だった。
「アンタ達、ゴミは持ち帰りなさいよ!」
黄色の髪をなびかせて、ウツボちゃんが現れた。
ヤツらは、驚いてヘビ入りのケースを後ろへ隠した。
「あっ、この人知ってる!海のスーパーヒーローの人!」
そう言って、奴らは笑顔を見せた。
「ここのゴミは、俺達のじゃないっすよ!
最初から落ちてたゴミなんで。」
するとウツボちゃんは、差し出したゴミ袋を引っ込めた。
「あら、そう。それは悪かったわね。
でも、自分達で出したゴミは持ち帰ってね」
「ちゃんと、持ち帰りますよ!
ポイ捨ては、しないっす!」
胡散臭い笑顔で答える奴らに、僕は腹が立った。
アイツらは、良い子ぶってるだけだ。
中身の無い奴ほど、上辺を合わせるものなんだよ。
「ねぇ、アンタ達は何をするつもりなの?
そのヘビと魚で。」
ウツボちゃんには、バッチリとヘビが見えていた。
「ヘビに餌をやるんすよ!」
「え?ヘビって、魚を食べるの?」
ウツボちゃんは、不信な顔をした。
「何でも食うんすよ!
メッチャ口が開くし、飲み込んでも皮膚が延びるんで問題ないっす!」
ウツボちゃんは、少し黙ってから答えた。
「そう・・。私は、アナゴ目の魚の事しか知らないのよね。
蛇がフグを食べる生き物なら、仕方ないわね」
「そうなんすよ!それじゃ、いっきまーす!
ヘビのランチターイム!」
ヒュンッ!
僕は、空のペットボトルを投げた。
ポカン!
「いってぇ!なんだ?」
奴らは驚いたけど、僕は それ以上に驚いた。
僕は野球なんて習った事は無いのに、ペットボトルは見事に奴の手元に命中した。
これは、大谷選手からの贈り物かもしれない。
「何だよ?広海じゃん!」
僕に気付いた奴らは、いつもの汚い目つきに変わった。
自分より弱い者が出てくると嬉しいんだろうな。コイツなら勝てるって、思っているのが見てわかる。
「やめろよ!」
僕は もう一度頭を触ったけど、ギョっちゃんはいなかった。
でも、捕まったハリセンボンとヘビが可哀想で、作戦も考えずに壁を這い上がったんだ。
「広海じゃない。久しぶりね。」
久しぶりと言われたけど、僕は今朝 ウツボちゃんと一緒にゴミ拾いをした。
僕の存在は薄いんだね・・。
でも今はそんな事よりも、ハリセンボンとヘビを助けなきゃ!
「蛇がハリセンボンを食べるなんて、聞いた事がないよ!」
「お前は黙ってろよ!」
僕は精一杯 声を上げたけど、奴らは僕に対しては強気だ。
「動物で遊びたいだけだろ!動物を玩具にするな!」
奴らは、少し驚いた。
僕は、今まで強気な態度を見せた事が無かったから。
「こういう実験なんだよ。
ハリセンボンが膨らんで、ヘビはどこまで耐えられるかっていうやつ!」
「ハリネズミを食べて、死んだヘビはいるんだ。同じ事になるかもしれない!」
「それならそれで、そういう実験なんだよ」
「何が実験だ!僕には悪意しか感じない!」
「うるせぇな!YouTubeで再生されりゃ、それでいいんだよ」
その時、ウツボちゃんの全身が光った。
「YouTube?それって、小銭稼ぎの胡散臭い人間が集まってくるやつでしょ?」
マジメに活動されているYouTuberの皆様には申し訳ないけれど、僕は頷いた。
「そうだよ。
YouTuberの中には、動物の命を悪用するゲス野郎がいるんだ!」
僕は魚が威嚇するみたいに、精一杯奴らを睨みつけた。
「黙れ、魚オタク!」
「ほっとけよ。撮影しようぜ」
奴らにとって、僕は小動物でしかない。
僕を気にする事なく、ヘビが入ったケースに手をかけた。
「やめろ!」
僕は、奴らに向かった。
「うわっ!何だよ!」
ケースを守ろうとする男子の腕を掴むと、もう1人の男子が僕を後ろから掴んだ。
「やめろよ!」
僕は必死に腕を伸ばして、ケースを掴んだ。
ケースの中のヘビが、こっちを見ている。
可哀想に。
こんなゴミみたいな人間に、命を無駄にされるなんて!
「お前らは、動物が可哀想と思わないのかよ!」
「うるせぇよ!」
僕達は、ケースの取り合いになった。
【ギョっちゃん、出てきて!】
そう思ったけど、僕はフィッシュマンにはならなかった。
「手伝うわよ、広海!」
ウツボちゃんが そう言ってくれたから、ハリセンボンを助けて貰おうと思った。
なのに・・。
「助けなくていいギョギョ」
「えっ?」
いつの間にか、特戦隊が横にいた。
「いいの?」
ウツボちゃんは驚いた。
僕は、もっと驚いた。
何で助けないんだよ?
人も魚もヘビも、危ないでしょ?
助けろよ、コノヤロー!
必死にケースの掴み合いをする僕らを、特戦隊は 何もせずに見ている。
「これは、男の戦いギョギョ!」
はぁ~?何を言ってんだよ?
僕が困ってるだろ!助けろよ!
フィッシュマンになっても、絶対に決めポーズなんかやらないからな!バカヤロー!
「離せよ!」
「うわっ!」
2人の男子に掴まれて、僕はケースを離してしまった。
ちっくしょーー!
特戦隊は助けてくれないし、フィッシュマンにはなれないし、どうしたらいいんだよ!
「お前らは動物以下だ!」
僕は、口で反抗するしかなかった。
すると、向こうも口で反抗してきた。
「うるせー、チビ!魚オタク!
キモイんだよ、ばーか!」
「お前らは2人一緒でないと何もできないくせに!弱い者ほど、群れて動くんだよ!」
「うるせー、ウンコ!」
「お前がウンコだ!ばーか!」
まるで幼稚園児の口喧嘩になった。
「これが男の戦いなの?」
ウツボちゃんが呆れている。
僕だって、これのどこが男の戦いなのかわからない。
「ウンコ!デカウンコ!ばーか!」
言われる事が、ウンコばっかりになってきた。
僕は、よ~くわかった。
コイツらは全然強くない。
今のクラスは おとなしい男子が多いから、2人は一緒になって強気になっていた。
周りが何も言わない事で、調子に乗っちゃったんだ。
「お前は、ウンコボンバーだ!」
「お前らは、ウンコ以下だ!」
「私が、ぶっ飛ばす!」
黙って見ていたウツボちゃんは、ウンコ合戦に我慢できなくなった。
でも、奴らもウンコ合戦に飽きていた。
「こんなもん、どーだっていいだろ!」
その言葉を聞いて、僕は頭にきた。
「動物には、命がある事を知らないのか?」
奴らは、面倒臭そうに顔を見合わせる。
「こんな雑魚、いくらでも捕まえられるだろ!」
僕は、完全にキレた。
こいつらは動物の事を何も知らないから、そんな事が言えるんだ。
「生まれてから成長できる動物は、ほんのわずかなんだ!
お前らなんかより必死に生きてきた、貴重な命なんだよ!」
僕は、奴らに拳を向けた。
殴りかかろうとした僕は、アッサリよけられた。
「マジで、やんのかよ?」
嫌そうな顔をする奴らに、僕は もう一度拳を上げた。
「よこせって、言ってるんだよ!」
「わかったよ!」
そう言うと、バケツもヘビも置いて奴らは走り去った。
「はぁ~。」
大きなため息をついて、僕は座り込んだ。
本当は殴りたくなかった。
だから、アイツらが弱虫で良かった。
チャプン!
バケツから、ハリセンボンの顔が見えた。
「この子は、まだ子供だ!」
僕の心は ときめいた。
フグの幼魚は、特に可愛い!
本当に助かって良かった!こんな尊い命を無駄にはできない!
すると特戦隊が、ギョギョンと僕の前にやってきた。
「広海よ、よく立ち向かったギョギョ!」
「あっ、特戦隊!何で助けてくれなかったんだよ!」
僕は、ムスッとした顔で答えた。
「怒らなくたって、いいじゃんギョギョ!
アイツらは強くないギョギョ!
広海のが強い人間と思ったから、様子を見たギョギョ!」
そう言われて僕は、自分の頭を触った。
「・・ギョっちゃんが付いていない。」
「今回は、広海の力を信じたギョギョ。
動物の命の為に、自らの意志で戦うかを知りたかったギョギョ!」
「・・・。」
「この気持ちが、一番大事ギョギョ!
広海は、フィッシュマンとして活躍できるギョギョ!」
「僕は戦うのは、嫌なん・・」
「俺達は、広海の事がよくわかったギョギョ!」
僕の言葉を遮って、特戦隊は集まった。
「広海は、ここで少し待っていてギョギョ!」
「え?ちょっと待ってよ!
僕は戦いたくないし、ポーズを決めるのも嫌・・」
話の途中で、彼らはギョギョンといなくなった。
「ねぇ、この蛇はどうするの?」
残された僕に、ウツボちゃんが声をかけた。
ウツボちゃんは、ヘビ入りのケースを眺めている。
「その蛇は、きっと林の中で捕まえたんだよ」
「そう。じゃあ、私が返してくるわ」
そう言ってケースを持つと、ウツボちゃんは居なくなった。
僕は、ハリセンボンを見つめる。
魚の子供でも、大きく膨らんで威嚇する能力を持っている。
小さくても、大きな力で精一杯生きているんだ。
「よく、ここまで生き伸びたね」
僕が、そう言った時だった。
ポチャ、ポチャ、ポチャン!
「うわぁ!」
突然、バケツの中に3匹のフグが入り込んだ!
ギョギョ~ン!
特戦隊が戻ってきたんだ。
僕は、顔を上げた。
「どうしたの?このフグ達!」
「広海の仲間ギョギョ!」
「えっ?」
驚いたのは、それだけじゃなかった。
「何だ、あれ?」
特戦隊の後ろで、光輝く物体が浮かんでいる。でも、眩しくて よく見えない。
「広海!神に向かって、あれとは失礼ギョギョ!」
「はっ?神?」
「は~い!私が魚の世界の、か★みで~すっ!」
・・魚の世界のか★み?
なんだか、ノリが軽い。
すると特戦隊は、その神とやらを囲んだ。
「それでは、神にお任せするギョギョ」
「は~いっ!
神の力をお見せしちゃいま~すっ!」
喋り方からして、神は賢いタイプではなさそうだ。
「えっとね~、魔法の言葉は何にしよっかな~?」
「神よ、まだ決めていないギョギョ?」
「じゃあね、【さかなクンの座右の銘】を使わせて頂きま~すっ!」
えっ?何それ?
すると、神は更に強い光を放った。
うぅっ!まぶしい!
神って、何者なの?
さかなクンの座右の銘とは?
「いっきま~す!フィッシュ!フレッシュ!リフレッシュ!」
光の中で聞こえた さかなクンの座右の銘は、いかにもさかなクンらしかった。
僕が納得していると、眩しい光がフグ達を包んだ。
ギョギョーーん!
強い光が消えて僕が目を開けると、そこにいたのは人間の子供だった。
「ボンボン!」
バケツには、フグ達がいない。
そして、子供の顔はフグに似ている。
「もしかして、魚を人間にしたの?」
「そうギョギョ!神の力は、すぎょいギョギョ!」
「フグフグ?」
特戦隊は嬉しそうに答えたけど、フグ達は何が起きたのかを わかっていない様子。
でも、それよりも僕は神が気になった。
「神って本物?」
「あったりマダイのカルパッチョ~!」
そう言って、神は消えてしまった。
特戦隊は、フグ達の周りに集まる。
「フグフグ戦隊フグレンジャーを誕生させるギョギョ!
第1戦士ハリセンボンのボンちゃん
第2戦士ハコフグのフグちゃん
第3戦士ハマフグのハマちゃん
第4戦士ミナミハコフグのミナミちゃん
第5戦士は、まだ決めていないギョギョ」
「えぇ!?まるで、子供向けの戦隊ヒーローじゃん!」
「俺達は広海の事が、よく分かったギョギョ!広海は守る者がいれば、やる気になるギョギョ!
大事な仲間がいれば、戦えるギョギョ!」
僕は、よく分かった。
特戦隊は、僕の事を全くわかっていない。
「フグレンジャーの決めポーズは・・」
ゲッ!また、それだ!
話を変えよう!
「ねぇ、さっきの神って何者なの?」
「神は、魚の世界を守る為の神ギョギョ!」
「あの神に、もう一度会わせてよ!」
「神は週3回5時間勤務だから、勤務時間外は会えないギョギョ」
「はぁ?神なんでしょ!
毎日働けよ!パートタイマーかよ!」
「まだ神になりたてという事もあり、地球を守る為に作戦を立てているギョギョ!」
「え~?もう一度見たい!」
「神はサービス残業はお断りの為、お帰りになったギョギョ!」
「何だよ、それ!神に相応しい魚って・・」
僕は神の存在が気になって仕方がなかった。
でも、特戦隊は 慌てて フグ達を囲んだ。
「広海!フグちゃんが、オシッコを漏らしたギョギョ!」
「えっ?」
気付けば、ボンちゃんのズボンが びしょ濡れだ。
「この子達は、人間の幼児と同じギョギョ!
まずは人間の生活を覚えさせる為に、トイレトレーニングから始めるギョギョ!」
「はあぁ?僕は、保育士じゃないよ!」
「フグフグ~!」
フグっ子達は高い所に登ったり、走り回ったり、自由気ままに動いている。
「みんな!こっちに来て!」
そう言ったところで、言う事なんか聞きやしない。本当に人間の幼児と同じなんだ。
「広海!フグっ子達の教育は任せたギョギョ!」
「ちょっと、どこへ行くの?」
「フグっ子達の家を、神に作ってもらうギョギョ!」
「えぇ~!?」
そう言って特戦隊は、いなくなった。
僕は今日から、フグッ子達のベビーシッターになるらしい。
厄介な事になったけど、僕の胸は高鳴っていた。
この世界を支える魚の神がいる!
あの幻の魚でしょ!
3億年前から絶滅の危機を乗り越えて命を繋いだ、あの魚!
会ってみたい!
シーラカンス!
一度、ここで終わります。
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