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キッチンカー「たまり場」 のふたり

出発の日の朝、11時ごろ大学にカメラを借りに行った。

ぼくの大学では少し前からキッチンカーが出店している。キャンパスのまわりが田舎なのであまり飲食店がないために生協や食堂でのランチにマンネリを感じている学生や教授の間で好評を博し、行列ができる日もある。
すぐに定着し、なくてはならない存在になっているキャンパス内のキッチンカーであるが、もともと始めたのは学生だった。
ぼくの尊敬する先輩であり、キッチンたまり場を運営しているしばちゃんさんである。

この日も、図書館でカメラを借りたあとに前を通りかかり、授業中で誰もお客さんがいないようなので近づいて声をかけた。
昼前で日差しが強く暑かったので、アイスコーヒーの誘惑に負けて一杯いただく。なぜかラジカセでサザンオールスターズが流れていて、おかし懐かしい気分になった。しばちゃんとおしゃべりしていたらもう一杯おかわりをくれて、キッチンカーの中ではお手伝いのひーろー(演劇のサークルで知り合った同級生)がなべをかき混ぜていた。そのときカレーのいい香りを吸い込んでしまい、それもいただくことにした。

ひーろーは、今回の旅の目的地である長野県小布施町の出身でもあり、これから行くんだという話をするとカレーのパックに可愛い絵を描いてくれた。
そしてカレーが美味すぎた。
細かく切った多種の野菜やきのこが入っているので食感が無限に楽しめ、たくさんのスパイスが口の中で広がったあとにズッキーニに溜まっている水分が弾けていくことにより、ジューシーな味の変化を感じられる。
器に彩りを加えるズッキーニとナスとセロリの漬物の甘すっぱさは暑さを一瞬忘れさせた。

と、いつまでもゆっくりしてはいられない。
次の授業開始が近づいてきて、人がまばらに増えてくる前に居心地のよいたまり場をあとにした。

旅の始まりにふさわしい出会いだった。


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