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Mother's Dayにクソ不味いパスタ作った俺の話

Five years from now
She sits at home
Feeding the baby, she's all alone
She turns on TV
Guess who she sees
Skater boy rockin' up MTV

この歌詞はAvril Lavigneの1stアルバム3曲目!Sk8er Boiの2番の最初の方のものである。”Skater boy rockin' up MTV”のところがめちゃくちゃ好きだ。

この曲をすごく簡単に説明すると、若くして出逢った2人がいてお互いに気はあったものの、2人が結ばれることははなく、月日が経ち、 Girlはママに、Boyはロックスターになってたという話である。んでロックスターには新しい彼女がいてみたいな。

でもこれはあくまで文字だけの解釈の話なのでもっと深い話があるかもです。

記事に載せた部分の和訳としては

五年が経ち、彼女は家で子供に食事を与えていた。いつも一人。んでテレビをつけてみたら誰が出てたと思う?
あのスケーターボーイ!MTVでロックをぶちかましてたの!!

多分こんな感じ。

なんで急にこれを持ち出したかというと、本日が母の日だということ、また、最近はホームステイ先にて余計なお世話として昼飯や夕飯作りを手伝っていること。しかもカナダでということも相まってこの曲が頭に浮かんできたためである。

自分のホームステイ先には、韓国人の高校生と、もう帰国したけど韓国人の大学生、あとはこの家のオーナーであるフィリピン人の家族(父母と息子2人、20歳と8歳)トータル7人で暮らしいる。今は6人だけど。

5月でこの家に来て5ヶ月目になる。

シェアハウスに引っ越すことも考えていたが、このCOVID-19禍のために継続して居座ることにした。

仕事も失い、街にも行けず、とうとう自分は齢30にして言い訳のつかないフルニートになってしまった。 

生活リズムも大学生の時のみたい乱れ、太り、免疫力も弱まり、その他諸々の要因もあり、腐敗し、英語の勉強とNetflixと食事と排泄をするだけの日々が続いていた。

このままだといずれ起きる時間が16時とかになり、わざわざ海外に来てまで堕落することを危惧した僕は、少し早めに起きて食事の手伝いでもするかと起きる時間を早め台所に向かうのである。毎日ではない、早く起きれた時だけだ。

後はこの家族は自分のことを本当の家族の様に扱ってくれるので、こちらとしても何かしてあげたいという思いがあった。
息子になったつもりで、Mam、Papaと呼ぶし(と言うか名前の読み方がわからなかった)、簡単な手伝いもする。息子(8)の面倒もみる。
簡単な家庭内問題には僕も解決案を提案したり、やれることはやる。

その中のホストマザーの頭を悩ませるひとつとして、韓国の高校生の食事問題が前々からあったらしい。
彼は小食でもあり、好き嫌いも多い。フィリピン料理が口に合わないのか知らないが、あまり食べない。

ちなみに、好き嫌いが多いというか、こだわりのある人のことを英語では"Picky"と表す。食べ物以外にも使える。異性の好みとかにも。

そのため、ホストマザーは彼や僕、他の韓国の学生のことを気遣いキムチを作ってくれたりプルコギ等もYoutubeを見ながら作ってれたりした。 
肝心の高校生はというと、キムチは毎食食べるがプルコギは一口しか食べなかった。韓国のと違うと。
「辛さが足りないと」と。 

彼を攻略するのは至難の技だ。

前職が調理師の彼女の作る料理は、疑いようもなく美味しい。自分が馬鹿舌なのも相まって、食べ過ぎてしまう。

そんな時に自分の中の謎の闘争心が湧いてきた。高校生の彼をを唸らすような飯をつくってやろう。

何故か知らないけど少しだけ料理に自信があった。麻婆豆腐を素なしで作れることに胡座をかいているだけではあるが。

「韓国は日本に近いから、多分味のセンスも近いはず、僕に任せてください!」

事実、物理的な距離はめちゃ近い。実家とか特に。
高校生の頃、ギターアンプからハングル語が急に聴こえてきて恐怖のあまり泣きそうになったことがあるぐらい近い。韓国のラジオを拾ってたみたいだ。

まず初めに作ったのは、豚キムチならぬ鳥キムチ。さらにチーズもブチ込んだ。

味はまあまあだった。作るのに苦戦した。 

家族全員分の料理を作るなんて初めてだったからである。調味料の分量も全然分からない。フライパンもデカくて重くて振れない。

ヘラで混ぜれば混ぜるほどぐちゃぐちゃになり水分も飛ぶ。一人分を作るの違ってハードモードすぎる。

”飯は一度に大量に作ると旨い”
こんな言葉を聞いたことがある。でも自分はそうは思わない。一人分を作る方が断然上手く作れる。

そして高校生は僕のチーズ鳥キムチを食べたかというと、少しだけ食べてくれた。おかわりはなかった。

残されてないだけ上出来だ。と言い聞かせて次の作戦を考える。

その後はよく分からん炒め物やドライカレーを作った。割と好評だった。もちろん高校生にも。

その時ぐらいから、彼が僕達が作った料理を食べる度に、ホストマザーとアイコンタクトで

「かましてやったぜ!」
「今日はダメだったね」

と、その日の感触を確認する様になっていった。

◼️二度とパスタなんて作らない

そして母の日の本日、今日はペペロンチーノを作ることにした。

結論から言うと大失敗した。

僕は自分の基準でみんなこれぐらい食うだろう!と割と多めに鍋にぶち込んだのだ。一食分の小分けもされていない商品である。
計量する行為を軽視していた。

今日のお昼ご飯は5人分。その中に小食な高校生と8歳の息子もいる。実質4人前作っても余る。

”見た目や年齢で人のことを判断しない。全員が平等”という考えが故の過ちでもある。

フライパンでオリーブオイルとニンニクを炒め、良い感じのところでベーコンを入れる。その後に他の具材を入れるところまでは完璧だった。

しかし大量の麺を投入した瞬間である。これは自分ではコントロール不能な事象だといことに気が付いた。

フライパンいっぱいの麺、混ぜることも具材に絡ますこともできない。時間だけが経ち、水分が飛び始めた。

パサパサのパスタになるのを危惧したので、感覚でオリーブオイルと茹で汁を足した。乳化させることを試みた。

しかしそれ逆効果であった。油や茹で汁を吸った麺たちがどんどん柔らかくなる。

箸で混ぜようにも重過ぎて混ざらない。

トングでならなんとかなるだろうと試みた。

いける!麺と具材が絡まっていくのが分かった。

それと同時に混ぜるたびにブチブチと麺が短く切れていくのを感じた。

途中からパスタではなく、弁当の角に入っているスパゲティサラダ?を作ってるような感覚に陥っていた。

混ぜ過ぎて麺がボロボロになり、ペースト状になってしまう輩も出てきた。

クリームを入れていないのにクリームパスタみたいになってきた。

そう、あの給食の大食缶に入っているアレだ。麺の長さが3センチぐらいしか無い、柔らかく弾力のないソフト麺のような麺。

ギリギリ麺の形を保っている小麦粉の塊。

もうこれはどうすることもできないと、泣く泣く皿に盛り付けた。

5人分作ったはずが、気がついたら麺が膨れに膨れ7人分ぐらいになっていた。

味見をしたが塩が足りな過ぎてなんの味もしない。諦めてテーブルに塩を置いた。

食べる前に皆に、味が薄いから塩を足して食べてくれと伝えた。

ホストファーザーや息子(20)は一口ごとに塩を掛けながら食べてくれた。
なかなかいけるよ!と言ってくれた。

とても申し訳なかった。だってバカ舌の自分でもこんなもの二度と食べたくないと感じたからである。

高校生はというと、一口だけ大皿から自分のプレートに移して食べ、その後2度と彼のプレートにパスタが乗ることは無かった。そりゃそうだよな、今回ばかりは僕のミスである。

ホストファーザーが準備してくれていた冷凍フライドチキンに助けられた。あれがなかったらみんな食べるものがないという事態になっていたのだ。

歳を取ると、お世辞や建前を上手く使いながら生きていくようになる。それはこの国でも同じだ。

意見がある場合はきちんと自分の意見を述べるが、人の作ってくれた料理に対してはそうではない。褒めてくれたり、悪くないよ、と言ってくれる。相手に悪い思いをさせてたくないという思いもあるのだろう。

しかしそれが子供の場合はどうだろうか?
まだお世辞や建前の文化に触れていない正直者たちだ。素直であるが故に容赦がない。Zero Toleranceである。

不味すぎるパスタのせいでみんな口数が減り、沈黙が生まれる。

すると息子(8)が口を開く。

「今日はライスはないの?このパスタ食べられない。本当に不味い。」

開き直った僕は、
「いやあマジごめん、美味しくないよねえ、もっと塩かけてみ?少しはマシになるよ。」
と息子(8)に言う。

しかし息子(8)のその言葉を聞いた息子(20)はブチ切れ、息子(8)への説教が始まった。

「おい、お前それはないぞ、作ってくれた人に対して失礼すぎる。自分はたまにママの料理に文句を言うが、それは彼女の料理が美味いのを理解して、ジョークで言っているんだ。リスペクトがあってのことだ。今のお前の発言は本当良くない。今後マジで気を付けろ!」

とカチコン言わされたのだ。息子(20)はこの年にしてかなりできた人間である。責任感もあり、将来は警察官になりたいらしい。

彼の気持ちもわかるが、今回の場合はこのパスタを作ってしまった自分に非があり、さすがに失言をしたとはいえど正直な感想を述べてくれた息子(8)がこんなにも怒られているの見て、申し訳ないと心の底から思った自分は、

「今回は許してあげて、100%俺のパスタが悪い。いや、俺が悪い。彼は正直な感想を言ってくれただけだよ。」

息子(8)に対しても、

「自分の料理には毎回正直な感想を言ってくれても構わないし、残しても良いから。でも、あなたのお母さんや他の人が作ってくれた料理にそんなことを言ったらダメよ。」

とフォローをした。

その場にいた全員がこのパスタが不味いことを理解しているが故に、正解が分からないこのやりとりに苦笑いをするしかなかった笑。

余りに余ったパスタを、一口ごとに塩を掛けながら食べた。結局完食は不可能で、2人前ぐらい残して冷蔵庫に入れた。

僕は晩飯でもこのパスタを食べなければならなくなった。


飯を食べ終えて外をみると、5月なのに雪が降っていた。それを見た息子(20)は、

「異常すぎる、今日でこの世は終わりだ!」

と言う。それに対して僕は、

「自分は晩飯にもあのパスタを食べなければならないよ笑、最期のディナーがあれってヤバいよね。」

息子(20)

「もうやめろwwwあれは帰宅したママに食べさせて俺たちはタピオカをウーバーイーツして最後の食事にしよう笑」

彼が世界が最後の晩餐に選んだ物はタピオカであったのだ。

そして僕はディナーにあのパスタを食べた。

その後ウーバーイーツでタピオカを注文した。

もう二度とパスタは作らないと決めた。

◼️本日は母の日

実家で過ごしてた時は毎日ご飯を作ってくれた。
確かに文句を言うこともあったが、今思うと仕事帰りに他の家事もしつつ晩飯を作るなんて至難の技だ。しかも家族全員分。

全国のお母さんたち以上に毎日毎日マルチタスクに生きる人達はいないのではないか。

一人暮らしをして料理を一人前作って、一人分の洗濯をし、狭い部屋を掃除し、一人分の生活費の心配をする。
そんなことで1人前になったと勘違いしていた自分が愚かに思えた。

自分の同級生も多くの人たちがママになり、このマルチタスクをこなしていると考えると、頭が上がらないしリスペクトするしかない。

中にはパパが家事を担当している家庭もあるから、この考えは古いかもしれないけど。

母の日である今日、身をもって家事の大変さを痛感した身としては、母親の偉大さを感じざるを得ないのである。カナダに来たが為に思えたことだ。ありがとうございます。

後でラインの一通でも入れようかな。

Thank you so much my great Mother and great Grandmother.

問題のパスタ。これがあと二皿ある

ホストマザー作のキムチ

ウエディングマダァ















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