桜ひとひらボンネット

2024年4月12日 16:48

いつのことだったかしら？
今となっては漠然と
数十年前のこととしか
言えなくなっちゃったけど
サクラの木の下で
彼が写真を
撮ってくれたことが
ありました

こんなにたくさんの
桜の木に囲まれるなんて
今までにないことでした
彼のことなんか
見向きもせずに
無邪気に騒いでしまったのに
彼はいつもいつも
微笑みだけを
私に返してくれました

その時の写真は
もう今では
すっかりセピア色の
桜になってしまったけれど
デートの帰り際に
彼の車のボンネットに落ちた
ひとひらの桜の花びらは
いまもいつも
色褪せることなく
私の心に
焼き付いています

だって
彼とはじめて
口唇を重ねた瞬間に
舞い降りてきた
ひとひらだから

忘れないよ　ずっと
永遠の
仄かなピンクの
サクラひとひらを

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