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短編小説 | 伝書鳩

風の章

 すべて破壊された。あたり一面、瓦礫の山だ。通信手段はすべて失われた。おまけに手足も瓦礫に押し潰されて使えない。声も出ない。かろうじて呼吸しているだけだ。

「終わったな」
心の中でつぶやいた。

「このまま寝てしまおうか?」
もう戦うことに疲れていたところだ。


林の章

 異常な寒さで目が覚めた。体は血だらけだが痛みは既に感じない。

なるようになれ!
どうせもう助からないのだから。

 せめて死ぬ瞬間まで、この世の風景を眺めよう。


火の章

 俺はあと、何時間生きていられるのだろう。それはわからない。直感的に言えば3時間程度だろう。太陽が、あの山の頂を通過するくらい、といったところか。

 私は残り3時間を1時間ごとに分割した。最初の1時間は友人との別れ。次の1時間は家族との別れ。最後の1時間は自分自身との別れのために。。。


山の章

 あっという間に、残り1時間になった。生まれてから今に至るまでの生涯を振り返った。
 頭の中の回想シーンが現在にたどり着いたとき、耳元で、ポッ・ポッ・ポッという鳴き声が聞こえた。

「ハト?」

 鳩の足には、輜重班(ロジスティクス・パーティー)の使っている紐が見えた。ピジョンのマーク。伝書鳩か?

 最後の力を振り絞って口笛を吹いてみた。鳩は私の大佐の勲章を口に咥えて、一直線に飛んでいった。

 太陽は刻一刻、山頂に近づいていた。

 



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