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短編 | おっぱいで哲学する女

(1)

 もう遥か昔のこと。小学生の頃、私の友人から、誕生日でも何でもない日に、赤飯をお母さんが作ってくれたという話を聞いた。

「もう恥ずかしくってさ。ほっといてくれたらいいんだけど。どうしたらよいか分からないから、心配になってママに話したらさ」
友人はなぜか自慢げに私に語りかけた。

「何があったの?」

「まぁ、女の子から女になったということなんだけどね」

 当時の私には、彼女の言葉の意味が分からなかった。私はまだ「女の子」だったから。


(2)

「アレ、トイレに捨てちゃダメじゃない!」

「だって捨てる箱がなかったから」

 私が女の子から女になったのは、中学二年生のときだった。サニタリーボックスがなくて困ったことがあった。母が置き忘れたのが悪いのにさ。

 女って面倒くさいな、と思った。学校の授業では、第二次性徴期には、女は男に興味を持つようになるとか聞いたけど、私には当てはまらなかった。ツキイチの面倒くさい行事がくるし、急速におっぱいが大きくなって男子のいやらしい視線がすごく嫌だった。いっそのこと、男に生まれればよかったって本気に思った。


(3)

  男にはまったく興味がないまま、成人をむかえた。もちろんSJのまま。高校生の頃には、ちらほらと、SJを捨てたのを自慢してた人がいたけど、どうでもよかった。
 それよりも、勉強して親の世話にならず、早く家から出ていきたい。早く自分で稼ぎたいという気持ちのほうが強かった。
 そんなある日、少し怪しげな男から声をかけられた。

「お姉さん、キレイですね。一緒に働いてみません?」
一応お話くらいは聞いてもいいかな。

「どういうお仕事ですか?」

「女であることを売りにできるお仕事です」
あぁ、エッチな仕事かぁ。仕事と割りきってお金を稼ぐのもいいかもね。

 結局、撮影の見学に行くことになった。私はスタジオの後ろから、「お仕事」を見守った。
 俳優さんだけでなく、スタッフも大勢いた。なぜか、卵の白身をかき混ぜているスタッフもいた。

「あぁ、そういう使い方もあるのか!」と変なところで感動している自分がいた。


(4)

「あ、ああーん」
 これはお仕事。お金を稼ぐ手段。全然気持ちいいなんて思わなかったが、私は大きな声であえいだ。

 男優は仕事とはいえ、私のFを鷲掴みにして、その先端を執拗に噛んだり吸ったりを繰り返した。噛まれ過ぎて、気持ちいいどころか痛いだけだったが、私は誠心誠意仕事をこなしつづけた。

 くだらないと言えばくだらない仕事だという気持ちは消えなかったが、私の「演技」を見ながら、男どもが夜な夜な下を出して、過剰な欲望を放出する姿を想像すると、私にひれ伏しているように思えて、それが私の快感になった。

 さぁ、男どもよ!、私にひれ伏しなさい。そう思いながら、私は今日も叫びつづけている。男ってバカな生き物ね。


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