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読書 | 茨木のり子詩集


はじめに

 図書館で茨木のり子さんの詩集を2冊借りました。

①茨木のり子「女がひとり頬杖をついて」、2008年
②茨木のり子「わたくしたちの成就」、2013年
(ともに童話屋、ヘッダーの写真)

 詩集を読むことは久しぶり。
 読書ではあるけれど、詩というものは人によって感じ方が違うだろうから、感想文ではなく、①、②の詩集から私が「いいな」と思ったところを抜き書きすることをもって感想文に代えます。
 学術論文ではないので、詳細なページは記しませんでしだが、詩のタイトルをつけておきました。


抜粋


①「女がひとり頬杖をついて」より抜粋(「・・・」は中略)


学校 あの不思議な場所


学校 あの不思議な場所
校門をくぐりながら蛇蝎のごとく嫌ったところ
飛び立つと
森のようになつかしいところ
・・・
飛びたつ者たち
自由の小鳥になれ
自由の猛禽になれ


こどもたち


こどもたちはなぎ倒されながら
ふいにすべての記憶を紡ぎはじめる


苦い味


理想の国も
たちまちに風化
なにごとも永くは続かないのだ


怒るときと許すとき


女がひとり
頬杖をついて
慣れない煙草をぷかぷかふかし
油断すればぽたぽた垂れる涙を
水道栓のように きっちりと締め
男を許すべきか 怒るべきかについて
思いをめぐらせている
・・・
たったひとつわかっているのは
自分でそれを発見しなければならない
ということだった


ひとり暮し


あなた以外の誰とも もう
しかたがない
さつまいもでも嚙りましょう


内部からくさる桃


耐えきれず人は攫む
贋金をつかむように
むなしく流通するものを攫む
内部からいつもくさってくる桃、平和


悪童たち


やさしい言葉で人を征服するのは
なんてむつかしく
しんどい仕事だろう


なれる


狎れる 馴れる
慣れる 狃れる
昵れる 褻れる
どれもこれもなれなれしい漢字


りゅうりぇんれんの物語


一ツの運命と一ツの運命とが
ぱったり出会う
その意味も知らず
その深さをも知らずに


②「わたくしたちの成就」


急がなくては


あなたのもとへ
急がなくてはなりません
あなたのかたわらで眠ること
ふたたび目覚めのない眠りを眠ること
それがわたくしたちの成就です


あほらしい唄


二人の時にはお説教ばかり
荒々しいことはなんにもしないで

でもわかるの わたしには
あなたの深いまなざしが

早くわたしの心に橋を架けて
別の誰かに架けられないうちに



無口なひと
しゃべることのきらいなひと
電話はアレルギーを起すほど


花ゲリラ


あの時 あなたは こうおっしゃった
・・・
私を調整してくれた大切な一言でした
こんなこと言ったかしら ひャ 忘れた
・・・
思うに 言葉の保管所は
お互いがお互いに他人のこころのなか


殺し文句


「そういうことは囁くものよ」とか言いながら
実はしっかり受けとめた
・・・
あなたにもあったでしょう
愛されている自信と安らかさ


町角


いま咲きそめの薔薇のように
わたくし一人にむかって尚も
あらたに ほぐれくる花々


あとがき


 この記事では、感想文ではなく、印象に残った詩の一節を抜粋しました。
 あまりこのような記事は書いたことがありませんでしたが、歌と同じように、その時の気分によって選ぶ箇所が異なるだろうと思います。
 例えば、同じ詩集でも、抜粋するときが10年前でも10年後でも、現在とはきっと異なる部分の言葉を選ぶような気がします。

 詩集を枕頭の書にすると、自分のこころの変化のバロメーターになるかもしれません。今回の詩集は、図書館で借りたものなので、そろそろ返さなくてはなりません😊。


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