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短編 | 続編はない

 久しぶりに研修があり、入社式以来はじめて同期生が一堂に会した。

「いや~、短い間会っていないだけなのになんか懐かしいですね」

「そうですね。まだ最後に会ってから1ヶ月も経っていないのにね」

 はじめて彼に会った時は、仕事を覚えることに一生懸命だったから、恋愛なんてまったく考えていなかった。ちょっとカッコいいな、とは思っていたけれど。

「どうですか?配属された部署の雰囲気は?」

「はい、私は研究職なので直接お客様との接点はなくて。同僚も先輩も男性ばかりです。理系の女子って少ないから」

「いい人は見つかりましたか?」

「いえ、全然そんな気持ちはなくて。とにかく、まわりの方の足を引っ張ることがないように、一生懸命勉強させてもらっています」

「そうなんですね。あ、もうそろそろ講義が始まりますね。また、昼休みにメシでも食いながらお話しましょう」

「はい、ありがとうございます」


 高校時代から、まわりに多くの男子がいる環境で生活してきた。大学に入学しても常にまわりには男子がいた。私は自分から積極的に話すほうではない。けれども当時は、ほっそりした女子がもてたから、私はたびたび男性から声をかけられた。

 基本的に私は男性から「交際してほしい」と言われれば、断ることはない。とくに恋愛したいという気持ちが強いわけではない。しかし、ひとりで勉学に励んでいて充実感があっても、心の片隅にはそれだけではどうしても埋まらないものがあった。


 お昼休みには、約束どおり、彼と一緒におしゃべりしながら昼食をとった。他愛ないことばかりだったが、久しぶりに仕事と直接関係のない話をすることができて、本当に楽しかった。

 夕方になった。そのまま帰ろうとしたが、彼と目があった。お昼休みの時と違って、今回は無言の会話をした。

 一瞬で彼の気持ちがわかった。それは私も同じだった。どちらともなく、一直線に裏道の淫靡なネオンのきらめくほうへ私たちは歩き出した。
 すべてのことが、まるで機械仕掛けのように進んでいった。このときほど、突き抜けるような快感を覚えたことはなかった。

「愛してる」
「私も…」

 それから、彼とは何度か体を重ねたが、1年後、急に連絡が途絶えた。

 仕方ないか。彼が欲しかったのも私が欲しかったのも、永続的な愛ではなく、刹那的な快感だけだったのだから。本当の恋も偽りの恋も私にはない。その時の満たされない体を満たしてくれさえすれば…。




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