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二十六人の男と一人の女 | 読書感想文

 1年前くらいに買って、机の上に積ん読状態になっていた、ゴーリキー(中村唯史[訳])「二十六人の男と一人の女」(光文社古典新訳文庫)を読んだ。

 この本には、4つの短編小説が収録されているが、「二十六人の男と一人の女」の感想だけ書く。

 あらすじを書くので、まだ読んでいない方はお気をつけくださいm(_ _)m。


「二十六人の男と一人の女」梗概


 主人公は半地下で「巻パン」を作る26人の職人たち。朝の5時に起きて、早朝6時から夜の10時まで働いている。朝から晩まで、かまどが焚かれ、薪が燃えている。

 そんな彼らの唯一の楽しみは、毎朝、この建物の二階から彼らを覗きこみ、声をかけてくれる、16歳の女の子・ターニャだった。26人の男のマドンナ的な存在だった。

 しかし、あるとき、一人の男が「ターニャなんてただの女の子じゃないか」と言った。それはみな、内心では思っていたことだが、人間には「光」が必要である。みんなでその男をなだめて、ターニャにはこれまで通り笑顔で接しようとした。

 しかし、徐々にみな、ターニャがとなりの「白パン」を作っている男と、よろしくやっているんじゃないか?、という疑念を持つようになった。白パンを作る連中は、壁を一枚隔てた場所で働いているとはいえ、巻きパンを作る26人の男たちより、スペックが上なのだ。

 結局最後には、26人は疑心暗鬼になってしまった。
 ターニャはさげすむように、彼らに言った。

「あんたがたは、下衆の集まりだよ、いやらしいったら!」

 ターニャは二度と彼らの前に姿を現すことはなかった。


副題は「ポエム」となっている。おとぎ話のような短篇だ。物語は全体的に平板だが、ところどころに挿入される作者の言葉はなかなか含蓄のある箴言のようだ。


箴言っぽい言葉


🌠周囲の環境が少しも変わらないのは、生きている人間にとって、なによりつらい。
(p15)

🌠美しいものは人間の心に、それが荒くれ者の心であってさえ、かならず尊敬の念をかき立てるものだ。
(p16) 

🌠自分の人生で一番かけがえのないものが、精神や身体の病であるという人間がいる。彼らは生きているあいだ、ずっと病とともにあり、病によって生きているのだ。(中略)
 こうした人間は、治療して病が取り除かれると、不幸せになる。生きるための唯一の糧を失うからだ。空っぽになってしまうのである。
 自分の不健康を誇り、それによって生きるほかないような、みじめな人生というものもままあるのだ。毎日が単調でわびしいというだけで、人間がダメになってしまうことも少なくないのである。
(p28)



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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします