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バースデーバルーン [創作大賞感想]

 青豆ノノさん(作)「バースデーバルーン」を読んで思ったことを書きます。



 二頭身と言ってもいいくらいの大きな頭を持つ妹の物語。冒頭から異様な雰囲気が漂う。

 なぜ頭が大きくなっていくのか、ということは終始書かれていない。原因がわからない。

 突然ショッキングな出来事が起こり、その彼女のまわりにいる人物も特にそのこと自体を疑問に思わない。当然のこととして受け入れているように思えた。
 
 超自然な不自然な出来事を目の当たりにしているにもかかわらず、本人もまわりの人間もそれを宿命として受け入れている点において、私は「バースデーバルーン」にカフカ的なものを感じた。

 ただ、カフカの「変身」や中島敦の「山月記」が、不思議ながらもそれまでの人生の経緯から、なんらかの因果関係らしいことを引き出せるのに対して、「バースデーバルーン」には、なぜ頭が大きくなっていったのかという因果関係を私には見いだせなかった。

 しかし、因果関係がまるでわからないにも関わらず、頭がどんどん大きくなっていくことが、ごく自然なことに感じられてしまう。それはそれとして変えようのない宿命なのだと、みな受け入れている。

 そう、物語全体が不思議でいっぱいなのに、読み進めるうちに、すべてが必然だと思えてしまうのが「バースデーバルーン」という物語の不思議な力だ。
  


 「バースデーバルーン」以外の、青豆文学の短編小説を読む時は、「最後にパンチラインが来るぞ、来るぞ」と待ち構えながら読む時が多い。そして「あぁ、そういうことか!」というオチがわかって読み終える。

 しかし、「バースデーバルーン」には、普段の短編作品のようなオチらしいオチはない。そして、私は大きな悲壮感を持つことなしに作品を最後まで読んだ。

 普通の意味で言えば、バッドエンドな物語なのに、私の読後感はなぜかハッピーエンドの物語を読み終えた時に持つ感覚に近かった。

 突飛な発想の物語という点で、この物語はファンタジーなのだが、「バースデーバルーン」は、私にはリアリティの、もっと言えばノン・フィクションの物語のように感じられた。

 ちょっと今までにこのような作品には出会ったことがない。私の「バースデーバルーン」の謎解きは、まだ終わっていない。




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