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エッセイ | 技術者・科学者・哲学者

とある島へ

 とある島へ、技術者と科学者と哲学者の3人が船にのって出掛けた。この島には黒い羊がいるという噂である。

 船を接岸して、3人が上陸すると、遠くに一頭の羊が見えた。

 技術者曰く「この島の羊はみんな黒いんだ」。
 科学者曰く「この島には黒い羊もいるんだ」。
 哲学者曰く「この島にいる、あの羊のこちらから見えている側は黒いんだ」。


 この話は前に量子力学の一般向けに書かれた本の中で読んだ話である。調べてみると、いろいろなバリエーションがあるようだが、それぞれの人の「モノの見方」をよく表している。

技術者(普通の人)

 技術者(あるいは普通の人)は、身の回りに起こった1つの事象をもって、他の事象にも当てはまると考えがちである。「だって私見たもん」「○○さんが言っていたから」とか。

技術者

科学者

 科学者は、目の前に見えた事象を鵜呑みにするのではなく、今までに培った知識を踏まえた上でモノを考える。普通の人の中にも、科学者的な見方をする人もいる。「君の話はわかった。しかし、○○さんはこう言っている」「今までの経験から考えると、もう少し考える必要がある」とか。

科学者

哲学者

 疑わしいもの、あるいは過去の知識を前提としない人。おそらく、技術者や科学者と比べて、圧倒的に少数派だろう。
自分自身が確実に正しい!と思うことのみを信じる。「本当に○○だろうか?」「普遍性があることだろうか?」とか。

哲学者

コミュニケーションの難しさ

 上の話では人を三種類に分けているが、どの人でも、技術者的に考えたり、科学者的に考えたり、哲学者的に考えたりすることがあるだろう。一人の人間の中には、三者の人格が同居している。その割合が人それぞれ違うのだろう。

 普段他人とコミュニケーションする中で、誰しも「話が通じやすい人」「話が通じにくい人」がいる、と思うことがあるだろう。自分が技術者的な見方で話しているのに、相手が哲学者的な見方で話していれば、二人の話は噛み合わない。その逆もあることだろう。
 では二人とも科学者的になればいいかというと、それはそれでつまらなかったりする。


カッコいい人間とは?

 では理想的な人間ってどういう人だろう?
 幅広い経験をもち、幅広い知識をもっていること。度量が大きいこと。
 相手の話をすぐに否定するのではなく、相手が技術者的に言っているのか、科学者的に言っているのか、哲学者的に言っているのか、あるいはどのくらいの「人格配分」でモノを言っているのかを見定めて、相手の話を聞くことができる人。


なかなか難しいですけどね✨

 たとえ相手の話がすぐに理解できなかったとしても、相手の前提は何か?、自分の前提は何か?、と少し立ち止まって考えることができたなら。
 高次元にいる人は、相手が三次元にいるのなら、三次元までおりてくる。低次元にいる人は、自分の見たことがない次元に思いをはせる努力をする。
 私は高次元がいいとか、低次元がいいとも言うつもりはない。ただ、話が通じにくいなぁと思った時には、相手が何を前提としているのかと考えてみたいと思っている。


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