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読書|シャバはつらいよ

 この前の休みの日、久しぶりに書店をぶらぶらしてみた。とくに欲しい本があるわけでもなく、目に入った気になる本を手にとって拾い読みしていた。
 そのなかで、「シャバはつらいよ」というタイトルにひかれて、今、読み進めている。
 著者の大野更紗さんは、2008年に突然、日本ではほとんど症例のない難病(皮膚筋炎と筋膜炎脂肪炎症候群)を発症した。全身の免疫システムが暴走して、自分自身を攻撃する病気だという。

 「難病」だから大変なはずだが、大野さんの文章には、ほとんど絶望感がない。どちらかというと、楽しんでいるかのように綴られている。

 印象的な言葉が書かれている。

困難に直面して、苦しいとき。絶望には、いつも人気があります。理由は明白で、絶望することはとても「楽」だからです。絶望はパックリと口を開けて、すぐ隣で「おまえ、うまそうだなあ」と待ってくれています。何もしなくても、喰ってくれるのです。絶望することは、容易です。

(大野更紗、「シャバはつらいよ」、ポプラ文庫、p7)


 あまり悲壮感のない文体で書かれているが、「難病」になると、戦わなくてはならないのは単に病気だけではない。「システム」との戦いが待っている。

「システム」と生きていくのは、楽なことじゃない。申請手続きや、どんどん変わっていく制度の仕組みを調べているだけで、大袈裟ではなく三百六十五日の生活が終わってしまう。

(前掲書、p159)


 大野さんはもともと大学で、ミャンマー難民の研究をされていたが、大学院に進学した直後に、難病を発症したため、調査を中断し、休学せざるを得なくなった。
 そしてミャンマー関連の文献を一斉に処分したあと、社会保障のシステムを研究する決意をした。
 突然の病で、生活も進路も大きく変わった。天災と同様に、難病でも人生は大きく変わる。自分の意思ではどうにもならないことが降りかかったとき、どのような選択・決断をすべきか?
 自分だったら、大野さんのように前向きになれるだろうか?、と考えながら読んだ。


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