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一語の宇宙(2) | sibling

 中学生の頃、「英語には日本語の『兄弟(きょうだい)』にあたる単語はありません」と教わった。

 今では、ジェンダーに関する意識が高まったこともあり、兄弟ではなく「きょうだい」と表記されることもあるが、一般的に「兄弟はいらっしゃいますか?」と聞かれれば、「姉がいます」「妹がいます」と答える場合もある。

 日本語の「きょうだい」は、(広義では)男の兄弟だけでなく、姉妹、兄妹、姉弟なども含まれる。

 性別に関係なく「きょうだい」という言葉は使えるが、英語にはそのような言葉はない。だから、中学生のとき、英語で相手にきょうだいが何人いるのか尋ねたいときは、

How many brothers and sisters do you have? 

と言いなさい、と習った。


 しかし、日本語の(男女の区別なく使える)「きょうだい」にあたる、sibling という単語が英語にもあることを高校生になってから知った。

 「siblingという単語は、学術的な文章で使われるだけで一般的にはあまり使われない言葉だよ」みたいな説明を先生がしてくれたように記憶している。

 ちょっと気になって調べたら、次のような記事に出会った。


 一般的にも、多用されるという意見もある。
 また、siblingは比較的新しい用語であり、(言語上の)性差を減らしていこうという風潮の中でここ50年くらいの間に急速に広まったと言う人もいる。



 ちょっと話は逸れるが、英語で「使われる」「使われない」と言った場合、どの国や地域を想定するだろうか?

 日本語は、ほぼ日本という国以外では使われない言語であるのに対して、英語は(非nativeの国でも)世界中で使われたり、学習されたりしている。

 自分が住んだり、滞在している国の英語で良く使われる言葉だったとしても、他の国で使われる英語ではあまり使われない言葉かもしれない。
 だから、英語圏に住む人でも、sibling(兄弟姉妹)は頻繁に使う地域に住む人もいれば、使わない地域に住む人がいる、なんてこともあるかもしれない。


 少なくとも、私が新聞を読んだり、小説を読んだりしても、「sibling」という単語には、数回程度しか出会ったことがない。私が接してきた範囲の英語では、brother や sister ほどには、頻繁には使われない単語であることは間違いない。


 ところで、英語と極めて近い関係※にあるドイツ語には、
Geschwister[ゲシュヴィスター]という単語がある。
 この単語は、性別に関係なく「兄弟姉妹」という意味で広く使われている。初級ドイツ語の単語集にも載っている。
 
 ちなみに、英語のbrotherに相当するドイツ語は Bruder [ブルーダー]、sisterに相当するのが Schwester [シュヴェスター]である。

 GeschwisterもBruder もSchwesterも、いずれも良く使われる単語である。

 理由は調べていないが、英語と異なりドイツ語には、男性名詞、中性名詞、女性名詞という区別があるから、男とも女ともわからないときに「Geschwister」という「中性名詞」があったほうが、都合が良かったのではないか?、と想像している。


※英語もドイツ語も「インド=ヨーロッパ語族」の中の「ゲルマル語」であり、さらに細分化した区分の「西ゲルマン語」である。語彙・文法が類似しているとみなされている。




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