ひまわりの浴衣と真っ赤なりんごあめ
耳を澄ますと、祭りばやしの音がする。太鼓の音が一定のリズムを刻んでいる。昔は私も行っていたが、あんまり楽しい思い出はない。
浴衣を着たのは、子どものときのたった1着のみ。キティちゃんとひまわりがたくさん散りばめられた、子どもらしい浴衣だけだ。近所に友達なんていないから、いつも家族と一緒に行っていた。
くるくると楽しそうに踊っている人々を離れたところから見ていた。屋台に並べられたたくさんの食べ物。ねえ、かき氷あるよ、と袖を引っ張るも、どうせ食べきれないんだからやめなさい、と買ってはくれなかった。ねえ、ヨーヨーやりたいな、途中で糸が切れるでしょ、金魚すくいあるー!、金魚すくいはすくっても家で飼えないじゃない。
何もかもがNGで、あっという間に一回りしてしまった。「もう帰る」そう言うと、ああ、そう?とあっさりとした答えが返ってきた。あんまり大したことなかったわね。
そうかなあ?そうだったのかなあ?でも、あなたがそう言うならそうなのかもしれないね。喉もお腹も心も全く満たされないまま、そそくさとその場を後にしたのを覚えている。
学生になってから、お祭りに出かけていく友人もいた。どうだったの?と後で聞くと、浴衣でプリクラを撮ってすぐ帰ってきちゃった、と言っていた。だって人がすごいんだもん、と。屋台でなんか買わなかったの?と聞くと、焼きそばくらい?と首を傾げられた。
お祭りって何だろう。私にはいつだってキラキラして見えたけれど、行った人に聞くとそこまでな反応をされるのは何故なのか。遠くにいると惹かれるのに、近くで見るとそうでもない、そういうものなんだろうか。
私がお祭りで気になっているものは、りんごあめ。SNSで写真を見ると、りんごあめを可愛く持っている人が多いから。小さなりんごをべっこう飴で固めたもの、らしいから私はもしかしたら食べられないかもしれない。べっこう飴が得意じゃないから。
それでも、幼稚園の頃の、あの苦くて苦くて苦しい記憶を、砂糖ののったりとしたりんごあめの甘さが上書きしてくれるなら。私も一度は食べてみたいと思う。もちろん、ちゃんとした浴衣を着て。
いつもたくさんありがとうございますっ!