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<第21回>世界のエリートは‟逆張りの教養”を学ぶ

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』 
山口 周著(光文社新書)

❶イントロダクション~ビジネスパーソンに「美意識」が必要な理由

本書は2017年に発刊された山口周氏の代表作であり、20万部突破のベストセラーです。山口氏には著作もたくさんありますが、コンサルタントとしても有名です。刊行から5年が経過しましたが、いまなお売れ続けているビジネスパーソンの必読書といえるでしょう。日本の人事部「HRアワード2018」書籍部門・最優秀賞も受賞しています。

今回は本書の「はじめに」と「おわりに」から、気になった部分を抜粋してみます。

"英国のロイヤルカレッジオブアート(RCA)は、「グローバル企業の幹部トレーニング」ビジネスを拡大しつつある"
"グローバル企業の幹部候補は、これまでの論理的・理論的スキルに加えて、直観的・感性的スキルの獲得を期待されている"
"「システムへ最適化した人々」=「無の者」こそ「エリート」と呼ばれる人々"
"歴史的な時間の流れは不可逆ではない。かつて発生した「文化的退行の時代」に21世紀も陥る可能性がある"

さて、みなさんは本書の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』というタイトルについて、初めにどんなことを思いましたか? たしかに、エリートの代表ともいえる世界の経営者には、美術品の蒐集家や、アートを学ばれている方がたくさんいらっしゃいます。

また、世界中に、もちろん日本にも、大企業が創った美術館がたくさんありますが、これには共通する理由がありそうな気がしますね。

では早速、読み解いていきましょう!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:「忙しい読者のために」冒頭に回答あり

ビジネスを直感的に「真・善・美」で判断すべき時代

本書はタイトルどおり、なぜ世界のエリートは「美意識」を鍛えるのか、について書かれた本です。この問いの回答こそ、本書の一番のポイントなわけですが、なんとP.14~21に、著者の回答がしっかり書かれています。章の見出しは「忙しい読者のために」、さすがですね。

その一部を要約すると、"これまでの「分析」「論理」「理性」に軸を置いた経営、「サイエンス重視の意思決定」では、今日の複雑で不安定な世界においては、ビジネスの舵取りはもはや不可能。直感的に「真・善・美」を判断する必要のある変化の速い世界において、自分なりの美意識が必要不可欠だから"という話です。
その一例として、システムの変化にルール(法整備)が追いつかない問題は、結果として大きく倫理を踏み外す恐れがあることを挙げています。本書のなかでは、グーグルがディープマインドを買収した際に、人工知能の暴走を食い止める倫理委員会を社内に設置した話と、旧ライブドアやDeNAの一連の不祥事を比較しています。また、"企業哲学のレベルで「格が違う」"と言わざる得ないと、著者は指摘しています。

このほかにも、"「論理的・理性的な情報処理スキルの限界」"や"世界市場の「自己実現的消費」への傾き"などもわずか8ページで、本書では紹介されています。

❸深掘りの勧め:ビジネスパーソンが美意識を鍛えるには?

パターン認識の脱却から始めよう

最後に、多くの人が思ったであろうことについて、本書の提案を読み解いていきましょう。
著者はこの本の執筆にあたって、2年ほどかけて、さまざまなグローバル企業、教育機関への調査を行なっています。

著者は、絵画を見ることで「観察力」を鍛えるという、「豊かな気づき」の大切さを説いています。
また、ビジネスパーソンがステレオタイプな「モノの見方」に支配されることのデメリットがいかに大きいか、を指摘しています。いわゆるパターン認識(AならB、と決まった認識)から離れることこそ、イノベーションにつながるというのです。
これは、「直観」といわれるものを鍛える、ということですね。スティーブ・ジョブズを思い浮かべていただけると、わかりやすいかと思います。

ちなみに本書では、科学的に業績と芸術的な趣味の関係性についての研究も紹介されていますが、あくまで仮説の域を出ないことが書かれています。まだまだわからないことも多いということですが、これも、いままでの認識から離れてみる必要性があるのかもしれませんね。

興味のある人は、ぜひ読んでみてください!

◆今回の名言◆

「イノベーションは、すべてのことに対してイエスと言うことじゃない。きわめて重要な機能を除いて、すべてにノーと言うことだ」
スティーブ・ジョブズ(1955~2011年/実業家・Apple創業者)

会社でノーと言える勇気を持ちたいですね。イエスとは現状維持、ノーは進歩だということを忘れてはいけないですね。

★おまけ★最近読んでいる本

『ジョン・ボルトン回顧録』 
ジョン・ボルトン著/監訳:梅原 季哉/解説:池上 彰(朝日新聞出版)

アメリカでは78万部を突破、世界中で話題となった、前大統領補佐官による前トランプ政権の暴露本です。日本に対する言及も150カ所以上登場します。タカ派で有名なボルトン氏ならではの日米外交の裏側も、よくわかります。池上彰氏の解説も必読。540ページ、2段組みも、読み応え十分。オススメです。

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