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立ち読み屋という新しいコンテンツを作った理由。

美しいものを学ぶための世界でただ1つの貸本屋 / MMSS(modernist mind searing service) とPh.D.の共同企画が Lighthouse にて2021/9/17(土)より始まりました。



MMSSは、「大人の学び」「クリエーターのインスピレーション源」をテーマに、大変貴重な絶版書籍を借りることができる50名限定の会員制のサービス。

所有や消費という概念を超えて本としての根源的な知識や情報を得ることができる貴重な取り組みです。

またそこに向き合う姿勢も紳士的で潔く大変気持ちのいいサービスです。

志摩 さんにはいつも応援いただいていて今回も大変ありがたいご縁、わがままを聞いていただき共同企画の実現となりました。

< 世界でただ一つの立ち読み屋(座可) >と題してMMSSが扱う希少な本を毎月Ph.D.の荒井があるトピックに基づいて選書をしLighthouseならびに1FのカフェNorth South East Westにてご覧いただけるサービスとなります。

なぜこのようなコンテンツを作ったかというとコロナ渦においてそれぞれの個としての力が露呈したなと思い説がたくさんありました。MMSSも元々志摩さんは古着のレーベル(こちらも素晴らしいの一言!https://www.lily1st-vintage.com)が生業だったところコロナという事態に直面し新たなサービスを即座に実行に移した経緯があります。

僕らはその変革を求められた時、力を発揮できるか、そこには創造性が大きく関わってきます。そんなイマジネーションやクリエイティビティの力を使って未来をよくしていくことが人間らしい健全なアプローチなのではないでしょうか?

そんな僕も志摩さんに刺激を受け何かそれの支えや新たなコミュニティの形成ができないかと思っていたところでした。そこで僕らのショップ兼共イベントスペースLihgthouseにてそれらの概念を共有できるコンテンツを作れないかと思い今回の立ち読み屋というコンテンツを考えた次第です。

大変ありがたいことにこれからの未来を担う学生を中心新たなコミュケーションが生まれ少しづつ何か生まれそうな予兆があります。

今回の取り組みによって毎月トピックを製作、それに基づいて選書をし新たな自分の表現となっていることも面白いところです。またそれはMMSSのトピックとしても閲覧いただけるようになっております。

11月は透明壁とその融解(自分と他者、外と内、過去と未来、自然と人工…)と題して以下5点を選書しました。

Georgia O'Keeffe: The Artist's Landscape(洋書/英語)
CHANDIGARH : LE CORBUSIER IN INDIA(洋書/英語、イタリア語)
elina brotherus : Les Femmes de la Maison Carré(洋書/フィンランド語)
間の本 イメージの午後(和書/日本語)
LA FRANCE TRAVAILLE : FRANÇOIS KILLAR(洋書/フランス語)

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トピックのイメージソースはアクリルの飛沫防止パネル。
透明な壁はそこにあるものの見えない事も多かったり逆にそれを意識すると対立や隔離を誘発します。
その飛沫防止パネルからイメージを膨らませて価値観を共有した時にできる、
それぞれの世界を行き来するような精神的な体験を目指したトピックとしました。

例えばそれは自然と人工。
ジョージア・オキーフはその生活や出で立ちから彼女本来の美しさが作品としての説得力を増しているような印象があります。
自然との関わり方は自身がそれに一体化しているように平然と体現している様は凄みさえも感じます。
彼女の自然界を抽象化したような作品(人工物)はそんなライフスタイルを投影した大きな自然の入り口のように感じる事ができそうです。
そして本著書もそんな空気が大いに伝わってくる吸い込まれそうな美しさを放っています。
Georgia O'Keeffe: The Artist's Landscape(洋書/英語)

そして例えば労働者と資本家。
農耕が始まった段階で人同士の管理、階級構造が始まったと言われていますが、それを超越した美しさやそれを共有する価値観というのが存在すると信じています。
またそれは実労でしか得られない概念や価値観であると思いますし、そんな概念を垣間見れる本書はそんな人間が勝手に作った強大な透明壁を容易に溶かしてくれるのではと思います。
そんな風に過去や未来、被写体と自身など様々な概念を行き来することができそうな著書です。
LA FRANCE TRAVAILLE : FRANÇOIS KILLAR(洋書/フランス語)

また過去と未来。
写真は時間と空間を切り取るという意味で本書はタイムマシーンのような不思議な体験ができる設計になっていそうです。
まるで生活感のないルイ・カレ邸と無表情な女性とのコントラストは過去や未来を同時にイメージさせます。
またルイ・カレ邸の自然な採光を惜しみなく切り取ることでそんな空想の世界のイメージが掻き立てられるようです。
elina brotherus : Les Femmes de la Maison Carré(洋書/フィンランド語)

または内と外
建築において内と外の境をいかに設けるかが肝となると思っているのですが、チャンディーガールのダイナミックな建築群は都市計画としての美しさもさることながら公共施設などの建築単体としてのダイナミックな美しさは内と外、プライベートと公共の境を緻密なアプローチで設計し、ある部分においては境界がグラデーションのように交わっていく構造が取られているようです。
本著はそんな被写体の美しい構造の写真により自分があたかもそこにいるような臨場感にあふれています。
CHANDIGARH : LE CORBUSIER IN INDIA(洋書/英語、イタリア語)

または海外と国内
日本では、絵本作家として有名なレオレオーニ。スイミーなど日本での著名な作品は一度は見たことがあるのではないでしょうか?
そんな彼の日本語訳としての口語的な対話はとても興味深く、また松岡正剛との対話によりデザイナーとしての彼の様々な概念が垣間見れる節はとても親近感がわいてきます。
時代や国様々な違いがあれどそれを超越できうる概念があると実感できる本著です。
間の本 イメージの午後(和書/日本語)


新たな価値観や体験に触れることを促すことができればとても嬉しいです。
当たり前になった飛沫防止パネルのコロナ後のそれらパネルの撤去を融解と見立てる事も一つの表現に組み込む事で今後の希望も含みました。





10月は本で感じる創造性の共鳴と波紋と題して以下5点の選書をしました。

ドナルドジャッド 建築(和書/日本語)
プロジェクトとパッション / エンツォ・マーリ (和書/日本語)
VISIONAIRE 20 : COMME des GARCONS(洋書/英語)
Comme des Garçons : Six Number 1(和書/日本語)
VISION /(洋書/フィンランド語)

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Ph.D.が取り扱う家具はアアルトがデザインした初期のアイテムがメイン、モダニズム期初期のアイテムを多く取り扱っていますが、年代や国を超えてその価値観に影響を受けたクリエイターたちの書籍を集めてその共通点を探ってみたくなりました。
そして題名には、アアルト/日本語で波の意味を連想させるような「共鳴」、アイノアアルトがデザインしたプレスガラスのシリーズボルゲブリック/日本語で「波紋」の意味を取り入れてトピックタイトルとしました。

アーティスト、ドナルドジャッドは自身もアアルトの家具のコレクターでありアトリエにてアアルトの家具を使っていたことは有名です。
その作品はミニマルアートというジャンルに属され、驚くほどの潔さが特徴です。一見理解するには時間がかかるようなアートですが、アアルトの家具の魅力を抽象したような作品とも捉えることができると思います。今回の書籍からもそれを感じてもらえるのではないでしょうか?

ファッションでは、日本のモード界を牽引し続けるCOMME des GARCONSの初期の書籍をピックアップしました。
同ブランドとアアルトが設立した会社アルテックの設立80周年を記念したダブルネームのstool60を展開したり、ショップでビンテージのstool60を販売するなど関係性が強い両者。モードやモダニズムという言葉からもそれが伺えるかと思います。
COMME des GARCONSの創造と精神に影響を与えたであろうモダニズムという文化。その精神を色濃く感じる当文化初期のアイテムに座りながら書籍を楽しんでほしいです。

デザイナー、エンツォマーリ。昨年惜しくも他界してしまいましたがその哲学は今のクリエイターにも大いに参考になるのではないかと思います。
1974年にデザインされアルテックより2010年から2019年までリリースされたDIYによって組み立てる家具のシリーズ「sedia1」 。
その哲学はアアルトビンテージのペイントをされた個体の価値を肯定する考えともよく似ています。
エンツォマーリのデザインは時代への大きなメッセージを含んだものが多くそれは今現在私たちが求めている何かを指し示しているように思えてなりません。
時代を先見していたデザイナーのひとりといえるでしょう。

visionは唯一のフィンランド語の書籍、晩年のアアルトと同時期にも活躍していたデザイナー、ティモサルパネヴァがアートディレクションを務めました。
そのビジュアルはプロダクトの紹介の枠を飛び越えて直感に訴えかけるような芸術性に富んでいます。
モダニズムという文化の系譜を辿るプロダクトはそのシンプルな形状や考えがゆえに何かを付加しやすいのも特徴。
そこに個としての芸術性を付加した良作で、当時の文化を物語る貴重な書籍となっています。



時代にあった創造性をどのような形で発揮していくかクリエイターにとってはそれに尽きるのではないでしょうか?
コロナ渦において変革を強制的に押し付けられた状況に、個の力が露呈したと最近つくづく感じています。
分断されたコミュニュケーションの中で自分と向き合うことが多くなったり、どのように今の状況に向き合い環境に順応していくか、その中で必要なものは個の力、創造力のほかありません。
今回の選書を通じてこれからの時代を築いていく創造に満ちた力を呼び起こすような取り組みになれば嬉しいです。


about Ph.D.

Ph.D.(フッド)は長野県東御市に2016年に設立した物や社会の持続可能性にフォーカスした デザインスタジオです。 自然豊かな地で世代、国境を超える生活の道具の販売と修理、張替えを主軸に、今の時代に適した創造の仕組みやアイデアを発信しています。 またそれらに伴う様々なクリエイティブなサービスを提供するとともに様々なクリエーターが集うオープンアトリエ、ギャラリー、イベントスペースとしても機能しております。

https://www.ph-d.jp/our-story















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