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詩「ファド・ポトミーダ・リトラリスの詩 序論INTRODUCCIÓN(テキスト)Ⅲ」

「ファド・ポトミーダ・リトラリスの詩
序論INTRODUCCIÓN(テキスト)Ⅲ」
黒実 音子


我は下水道で歌うファディスタ。

都市でしか生きられず、
顔の無い他者(アルテリタス)を憎み、
死んだ魚にメスを入れる者。

我はギターラを伴い、
低地から天上を見上げる歌い手。

疫病が流行った年に
あまたの蛆湧く
家畜の死骸と蝗を見た者。

ああ、
ファドを歌う者ならば知っている。
海に続く下水の音と、
打ち上げられた死骸(カダヴェル)の旋律・・
路地裏に捨てられた悪鬼貝(カニャイージャ)の殻・・
下水を内包した都市の灯りの栄光・・
INRIと書かれた板の燃やされる音・・

本物のファドは
負け犬にしか書けぬラテン語で作られ、
キリストと落ち合う場所で歌われる。

故に私は
お前達など知らぬ。
イスカリオテの栄誉もいらぬ。

美しさなど嘲笑う、
不器用な者達(エスリエンテス)の
酒場で奏でられる
震えるギターラの音は
肺気腫の歌であり、
下水を流れていく大量の魚の死体と、
その悪臭は
それ自体が詩なのだ!!

ああ、あの海を見よ!!
無数の赤潮の肉(コックロディニウム)達は、
記憶や感情を持たぬ霊として、
キリストに抱かれる。
多くの魚や
葡萄牙牡蠣(アングラータ)達を殺しながら。

しかし、それでも海は膨大で、
神の栄光を示すのだろう。
救いとは、
それほどまでに腫瘍的であり、
信仰とは癒えぬ絶望の痛み故に。

ああ、私は
決して入れぬ楽園を恨み、
濡れた左足を引き摺り、
下水に浮かぶ死骸に
今は亡き聖堂の詩を見つけている。

真理よ!!
信仰する者は
常に高き王国を見上げている。
下水にいる者すら
その門に焦がれる。

傷だらけの
遺残短絡の血に怯えながら、
地に縛り付けられ、
生まれてしまった者達の嗚咽を・・
赤潮の肉達の喘鳴を・・
気付いてないフリをした本当の孤独を・・
ファドは響かせる。

人間とは、ただ立って朽ちていく
時間の指標に過ぎぬ
と分かっているお前は
響かせるのだ。




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