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スペイン・ガリシア地方の曲を作曲してみました(そして、バチカンと迷信の話など)

こんにちは。
葬送のオルケスタ「墓の魚 PEZ DE TUMBA」
作曲家です♪

今回、「墓の魚」
新作動画をアップしましたので、
お知らせさせていただきます♪

今回は、
ポルトガルの大衆音楽であるファド
自分で作曲した作品
「二匹の蛾 Duas Mariposas」
という歌曲になります。

ファドとは何か?↓↓↓

とはいえ、
この曲の舞台になっているのは
ポルトガルの近隣ではあるものの
ポルトガルではなく、
スペインガリシア地方です。

というのも、
ガリシア地方ティシド教区に実在する
聖アンドレス教会
(Santuario de Santo André de Teixido)
にまつわる、ある迷信
この作品のテーマとなっているからです。

ティシド教区の聖アンドレス教会

その迷信とは、

人生の中で一度も
ティシドの聖アンドレス教会に
巡礼に来る事が無かった者は、
死後、動物に生まれ変わって、
この教会に巡礼にやって来る事になる・・

というものです。

前世での業
(教会にも行けない不信心という罪)を
次の人生で償う・・
的な話なんですね。

しかし、この、
来世だの前世だのという話は
正統なキリスト教の教義には無いものです。
ですので、バチカン公認ではない
地元の迷信なのだと思われます。

「カトリックなのに、
そんな地域限定の迷信があるの?」

と思うかもしれませんが、
あるんです。

例えば、ポルトガルは昔、
一部の教会が、
バチカンの方針を
信仰の理念の違いから認めずに、
独立して運営していた時期がありました。
つまり、教会というのは、割と
バチカンと一枚岩という訳ではなく、
癖の強いものなのです。

なので、
それぞれの地、独特の迷信を、
その土地の教会が
暗黙に許容していても
おかしくはないんですよね。

ポルトガル以外にも、
例えばペルークスコ市
骸骨の聖者Nino compadrito
(ニーニョ・コンパドリート)信仰
や、

骸骨の聖者Nino compadrito

メキシコ
niño florero(ニーニョ・フロレーロ)の儀式
など、

バチカンは公認していない
その地独特のキリスト教文化
というのは存在するのです。

そもそも、
カトリックも、プロテスタントも、
かつて、新たな地に
キリスト教を布教していく時、
その土地の癖ある人々の
従来の迷信との衝突
最も頭を悩ませる問題だったそうです。

プロテスタントですら、初期の頃は
農村の呪術的な悪魔払いの要求に
答えていた・・

という記録があります。
その地の迷信を完全に拒否せずに
妥協し、受け入れる事で、
新天地でのキリスト教の布教を
可能にしていたのでしょう。

さて、話を、
「二匹の蛾 Duas Mariposas」の曲解説
に戻します。

この作品、
実は、歌詞の語り手は
教会の司祭でもなく、
その地の信者でもなく、
魔女なのです。

魔女・・
(ガリシアの魔女ではMeigaと呼ばれる
魔女達が有名ですが、
「墓の魚」の物語の中で、
この魔女Brujaと呼ばれる系譜の
魔女である事がわかります)。

ここで登場する魔女の物語に関しては、
「墓の魚」
以下の小説で描かれているので、
機会がありましたら、
ぜひ読んでみて下さいませ。

いずれにしても、
この作品では、
[生前にティシドに
巡礼に行く事ができなかった者は
死後に動物に生まれ変わり、
巡礼する事になる・・]

という伝説に対して、
魔女がこう語っているのです。

「人は誰もが理想的に生きられる訳ではない。
お利巧に神の下僕として、
巡礼に行ける様な生き方が
誰でも出来る訳ではないのだ。
むしろ、ろくでもなく生き、
その結果、蛾にでも生まれ変わって、
それでも神に焦がれて・・
教会の灯りに焦がれて、
飛び回る者の方が人間らしいし、
そういう者にこそ
私は敬意を表するだろう」

つまり、この作品は
信仰迷信を根底にしながら、
人の生き様を歌ったファドなのですね。

以下、歌詞を掲載します。

◆◆◆

「暗い月夜の5つのファド」より
二匹の蛾
作詞作曲・黒実 音子

二匹の蛾が
ティシドのサンタ・アンドレスの周りを
飛んでいる。

外灯に魅せられ飛んでいる・・・

教会の光に焦がれて、
彼らは飛ぶのだろうか?
私のように・・・

私はまた、偉敬なる大きな流れに身を任せて、
魔女を名乗る!!
逆らえる手段は何一つなく!!

ガリシア語で話す蛾に、
主は夜を与えたもうた。

私達は、優しさを知らずに育った
田舎豪族(カシケ)のようなもの。

チップを払っても、
教会は祝福を
売ってくれないというのに!!
我々は、力を求め、
何にすがるというのか?

ああ!!
本当は寂しかっただけなのだ!!
サンタ・コンパーニャの
明かりにすら焦がれ、
ついて行きたかった程に!!

人の心を無くしたジプシー女がいたら、
同情してやるがいい。
彼女にはもう何も無いのだから・・・

ああ、美しき偉大なる神よ!!
誰もが人生に祝福を
受けられるわけではない。

誰もが生きているうちに、
教会に巡礼に行ける訳ではないのだ。

ならば、私は蛾に生まれ変わり、
教会の明かりの周りを
飛び回る二匹の虫に
むしろ、敬愛の想いを馳せるのだ・・・

◆◆◆

妖し気で重いピアノと、
ポルトガルギターと、クラシックギター・・
そして、チェロが、
とてもいい味を出してくれている
演奏録音・・

ガリシア地方の雰囲気を歌った
孤独な歌詞・・

良かったら、ぜひ、
動画を視聴してみて下さいね♪

という訳で、
本日は「墓の魚」
新作動画のご紹介でした♪

こんな作品を日本で制作していく
私や、
葬送のオルケスタ
「墓の魚 PEZ DE TUMBA」

これからも
よろしくお願いいたします~。




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