詩「エボシ貝(ピエ・デ・カブラ)」
「エボシ貝(ピエ・デ・カブラ)」
黒実 音子
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真夜中に運ばれてきた敗血症(ラ・セプシス)患者と、
べっとり塗ったタールの様な
夜の港に打ちあげられてしまった
発泡スチロールの躯に付いた
無数のエボシガイ(ピエ・デ・カブラ)達の
不吉な死の運命を想う。
ああ!!
病院に腸管を運んできた手術を受けた男達。
息を引き取る事を拒絶した死者。
消毒され死んでしまったグラム陰性菌。
クラムチャウダーに浮かぶ死骸。
幸福で不健康な老女と、
沼地に清浄を求め、異歯目を植える不幸な医者。