見出し画像

詩「ああ、南極ダービレアを讃えよ・・」

「ああ、南極ダービレアを讃えよ・・」
黒実 音子


ああ、南極ダービレアを讃えよ・・

この冷たい海の
灰色の深淵の上を揺れる髪は、
神の霊が
水の地平線を漂っていた時代から、
感情を有さず、
無機に限りなく近い
肉(カルネ)として
暗く黒い海域の床として
君臨してきた。

ああ、巨人の死骸の髪よ!!
岩礁(スコーギオ)の影の王よ!!

その黒い海藻(アルガエ)は
死を静かに受け入れ、
水に溶ける壊滅を待つ。
[お気に召す儘に(コモ・グステイス)]。

その肉は腫瘍で歪に膨れ上がり、
病的なマウリニアによる死を
内包しても口を閉ざすのだ。

この生物には天使でさえ!!
天使でさえ
意思疎通をする事が出来ない!!

だが、キリストは言う。
それこそが正しさであり、
この地上の[救い]であると。

ああ・・
かつてキリストが在りて、
そこから喪失(もしつ)したその場所に
人々は欲を持ち向かう。

おお!!
それが感情であるならば!!

既に喪失(そうしつ)したものばかりを
永遠に求め続けるものが!!

ならば
その者達は不幸であろう。

結局の所、
人間が本当に救われる地は、
最早地上では、
ある特殊な修辞技法の中にしか
存在しなくなってしまった。

ああ、南極ダービレアを讃えよ・・

その黒い肉は
切り取り、地上に置く事で
太陽に焼かれ朱色に変化する。

その苦肉という名の
キリストに払うべき税は
いずれ清算され、
哀れな肉(サルクス)達を救うであろう。

ああ、キリストは通り過ぎる。
チリの街角で
千ペソで売られる
寡黙な死んだ海藻(コチャユヨ)の横を。

「実に重畳であったな」
神の子は言う。

人間はこの海を漂う霊と
[地平線の融合(フォヒツォエンティ・ファシメイツォン)]を
永遠に果たす事は出来ない。

仮にそこに
原初の求めた答えがあったとしても、
それを望んでいないのだ。
まだ、
今は・・

ああ、南極ダービレアを讃えよ・・
ああ、そして人間よ。
その日常を称えよ・・

そして、出来る所まで振舞うがいい。
やれる限り・・
お気に召す儘に(コモ・グステイス)。

高貴なものを千ペソで売り飛ばし、
笑えるものは笑え。
おお、
まるで藻(アルガ)の繁栄の中に
何か答えを見出せるかの様に・・。
ああ、まるで水に溶ける滅亡が
[救い]ではないかの様に・・。




【1000視聴突破ありがとうございます♪】
「墓の魚」オーケストラの
映画の様な配信コンサート・第一弾
「死んだ珪藻とマキシロポーダのミサ」
こちらで公開中です↓↓↓

◇◇◇楽団公式サイト◇◇◇

◇◇◇「墓の魚」の音楽動画(ちゃんねる登録してね)◇◇




この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,671件

自作の詩による詩集「沼地の聖書」(ハードカバーによる分厚い豪華本を予定)を出版する為のサポートを募集しております。ぜひ、よろしくお願いします!!いただいたサポートは詩集の費用にさせていただきます。