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デジタル社会のこの時代に手紙を出すのも悪くない

祖父の逝去をきっかけに祖母との関係を取り戻すことができた。

とは言っても、今までと同じように地元には帰らない上に祖母は機械音痴だと言い張ってスマホの使い方を一向に覚えようとしないので、接点は全くと言っていいほどないのが現実だ。

唯一の連絡手段は電話。

でも話すのが気まずいのに電話を頻繁にするなんて、小っ恥ずかしいものがあるし、とてもじゃないけれど今の関係では無理に近い。

かと言って、あの悪夢のような家で祖母が心細く生き続けているのかと思うと不憫で仕方ない。

どうにか出来ないかと日々考えているし、どうにかすることが私に与えられた使命だとも思っている。



先日、友人の紹介でとあるおじいさんと話す機会があった。
そのおじいさんは『はすぬまじーじ』と呼ばれ皆に慕われている。

その、はすぬまじーじが写真展をやるというので私もお邪魔させていただいた。

そこで目にしたのが、絵ハガキならぬ写真ハガキ。

自分で撮影した写真をハガキに印刷して定期的に友人に送っているというのだ。

これだ・・・!!

私はここでヒントを得て、祖母に写真を添えて手紙を出すことにした。


添えるのは祖母が大好きな花の写真がいい。まずは季節に合わせた花の写真を添えてみよう。

手紙なら一方的で心を削るやり取りをせずに済むし、写真を通した花の美しさを祖母にも共有することが出来る。

さっそく気持ちがしぼまないうちに、100円ショップでかわいいディズニーのレターセットを購入した。

大人びたレターセットを使うより、幼少期から変わらず大好きなディズニーのレターセットを使った方が、より身近に私を感じてくれるのではないかという思いもあった。それに、誰から届いたかすぐに分かって誤って捨てられずに済むしね。

帰ってすぐに手紙を書いた。

内容はなんてことないこと。今住んでる地域の話や添える写真を撮った場所のこと。

でも、ひとつだけこの手紙のルールを決めた。

なるべく祖母の身近な話を書かないようにすること。それと、未来への希望を必ず書くこと

どうせなら手紙を通して今の場所とは違う場所へ旅をしてほしい。

仮性認知症が進み、身体も弱くなった祖母は伯父に家で縛り続けられている。

祖父を全く同じ病気で亡くしたのにも関わらず。

心配なのは分かるが、私はなるべくなら祖父とは違う道を歩ませてあげたい。その方が生きることに希望を持つことができるのではないのかと。

私の大好きな映画ひとつ『アメリ』の劇中で、父に外の世界を見せてあげたい主人公アメリが、父が大切にしていたノーム人形をこっそり家から持ち出して、ノームが世界の名所で撮った写真を送るシーンがある。
匿名で送り続けられてくるその写真は、まるでノームが一人で旅をしているかのようだった。

でもその結果、アメリの父は外の世界に興味を持ち自ら旅に出るのだ。

境遇は違うけれど、私の祖母にもアメリの父のように自ら好きだったもののために動く気持ちを取り戻して欲しい。

縛っているのは伯父だけど、縛られていることに自分のせいだから仕方ないと感じているのは祖母自身。

そこを何とか打ち砕きたい。これじゃ祖父の二の舞いだ。



手紙を出した数日後、祖母から電話がかかってきた。

「手紙届いたよ、きれいな写真もありがとう。」

どうやら、喜んでくれているようだった。

返事を書いてくれてもいいんだよ。と言ったら、ばあは字が下手だから。と一蹴されてしまった。

まあ、祖母はそういう人間だ。返事を書いてくれないことなんて初めから分かっていた。

私が自分の健康を守りながら出来るのはこんなことくらいだけど、こんなことでいいなら続けてみる価値はある。

令和。デジタル社会のこの時代。手紙にしかできないこともきっとあると信じている。

こんな時代だからこそ、手紙を出すのもきっと悪くない。


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