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【ドイツバレエ留学】ホームシックは突然に 2

食べることだけが唯一の楽しみなのに
私から食べる幸せを奪わないでっ

きっかけは味覚障害。
うーむ。
そもそも娘の「偏食」は、好きなものしか食べたくないという、ある意味「食」への執着だったのだな。
ドイツに行ってその「食」を趣味にして、いままで避けていた食材もチャレンジして楽しむことで、初めての海外生活、一人暮らし、言葉の壁、ぜんぶ頑張ってのりこなしてきたのだ。

それが、風邪で味覚がなくなったことで一気に崩れた。
なんとも娘らしいといえば娘らしい。

でもごめん、
ちょっと笑ってしまった。


いや、もちろん心配もするんだけどさ。
今までこれだけ愚痴も言わずにあれもこれも乗り越えてきて
鼻が詰まって号泣?
もっと前に泣くポイントはたくさんあっただろ!
慣れてきた今頃、ここまでがんばってきてピンと張り詰めてた気持ちが
切れたんだろうなぁ。
「あーあ、とうとうきたか。」というのが母の本音。

この頃、味覚障害はコロナの症状として話題になっていた。
風邪じゃなくてコロナではないかと何度も検査をしたが、何回やっても陰性だったのでコロナとの診断はされなかった。

ここから 、愚痴の毎日である。
ここまで弱音を吐きたいけど吐けなかった。
これをきっかけに溢れたんだと思う。

だが私はただひたすら愚痴を聞くというのが苦手だ。
ついつい、解決へ向けての改善案とか打開策を提示してしまうからだ。
だが、娘はそれを求めていない。
愚痴ってボヤいて。ただただ聞いて欲しい、ストレスを吐き出したいだけなんだろうと思う。

でも結局、味がしなくても栄養あるものを食べて回復を待つしかないのよ。
風邪にいい炎症を抑える効果がある食材を調べ、毎日メニューを提案するも
納得せず、「食べるもの一つ一つが可哀想なの!」と涙されてしまう。
ああああああもう、愚痴をきいてあげるだけって難しい。

相槌のバリエーションが圧倒的に足りない母なのであった。

それでも、娘の愚痴は母の私が聞いてあげなければ。
これ以上メンタルが落ちるとヤバイぞ!
と、自分に言い聞かせ、いいお母さんを自分なりにイメージし、
心配してる風に聞く日々。

最初の頃こそ、心配して寄り添って聞いていたが、1週間も経つと
流石に母の愛を持ってしてもうんざりぃ。
私の愚痴も誰か聞いてくれぃ!褒めてくれい!
と言いたくなった。

こんな日々を2週間程過ごし、
ある日、娘から夜中にLINEが。

娘:

「味がするよ!

まだ少しだけど、ほのかに味がするよぉおおお😭😭😭😭
学校から帰ってきたら、今日は行ける気がして甘いものを食べたら、おいしかった😭まだ全然薄いんだけどね」


母: 「おお!よかったぁあああああああ!!
味戻ってきたかぁ!
こんなに味覚に感謝することはないね、2度と離れて行かないように捕まえとくんだよ。」


味覚よ、おかえり。

味覚との再会がこんなに感動を生むだなんて。
さらに、コロナの影響でなかなか届かなかった日本から送った娘への荷物。ドイツの交換局で2週間も留まっていたものが、やっと娘のもとへ届いた。
中身は、日本米や味噌、わかめ、きな粉や黒ごまなど娘の好きなもの。

娘から
「今から ごはんを炊きますよぉおおおおおおおおおおおお!」
とのLINE。
味覚がもどったらメンタルも戻った模様。

なんだったんだ。


ただの食いしん坊じゃないか。
これがホームシックだったのか?

とはいえ、愚痴りに愚痴り、吐き出したことですっきりしたのかもしれない。ここから先はこんなにメンタルが落ちることはなかった。


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