日本の「政治不信」とポピュリズムの台頭③

 さて、このシリーズもとうとう第三回に入りました。今回は、実際の現代の政党や政治家の名前を挙げながらお話しますので、私の党派性などが見える内容となっていますので、そうした部分に抵抗のある方はブラウザバックを推奨いたします。
 それでは、見ていきましょう。

「岸田首相」が無能であるとの言説が
ネット上で流布されている現状について

さて、世論調査で自民党の支持率が青木率(※)を割ったなんてニュースが流れてきてますね。 

※内閣支持率と与党第一党の政党支持率の和のこと。50ポイントを下回ると、政権が倒れる、または政権運営が厳しくなるとするもの。

それはさておき、皆さんはこういったインターネット上に溢れる画像を見たことはあるでしょうか。

ハッキリ言いましょう。
これらの画像は全て悪意を持って作られています。

 ネットの“ノリ”などという言葉に浮かされて、ネタにするといい拡散される、情報兵器と言っても過言ではありません。なぜそう言い切れるか。
 私は、数え切れないほど多くの「デマに踊らされた人」とお話をしてきました。正直に話しますと、情報リテラシーの欠けた方々だと認識しています。

 こうお伝えしたところで、多くの人が岸田首相に持っているマイナスなイメージは払拭されないままでしょう。
 では、具体的に「ネット扇動」の嘘を見ていきたいと思います。


①岸田総理は「検討使」である

 多くの人が岸田首相のことを「検討使」と揶揄している現状があるのは皆さんご存知だと思います。ネット上はおろか、賑やかな学校の端からも聞こえてくる始末です。
 断言しましょう。検討使な訳がありません。

さらに言えばこんなにも物事をスパスパと決めまくる総理大臣はなかなかに稀有な存在です。

「は?」「岸田が何をやったんだよ」と思う方がいると思います。「増税だけは即決するよなw」という大変ありがたいご意見を頂くかもしれませんが、後で増税については触れますので落ち着いて下さい。


こんな画像一時期流行りましたね

 さて、この画像を見たことがある人も多いと思います。確かに菅前総理は短い任期でたくさんの仕事をやってくれましたが、岸田総理が何もしていないとの言説は明らかにデマであると、実例を持ってご説明させて頂きます。
 私の思う「岸田内閣の功績」を「外交」「安全保障」「経済政策」「内政」の視点からいくつかお話します。

[追記]なお、内容が長くなりましたので、第三回は「外交」に絞ってお伝えします。「安全保障」「経済政策」「内政」は第四回以降にお話します。

外交
①イギリスとの連携強化「新日英同盟」

・「新日英同盟」の締結
 さて、第一次世界大戦集結まで日本がイギリスと同盟を結んでいたというのは中学校の歴史の授業で習いますよね。日本とイギリスはどちらも当時から海洋国家であり(両者とも海軍三大国の一つだった)、当時から日英同盟がもたらした世界的影響は非常に大きかったということが知られています。日露戦争ではイギリスによる日本支援が日本の勝利を引き出しましたし、日本皇室とイギリス王室の友好関係は当時から今に至るまで大戦による対立を一度挟みつつも続いています。

 戦後、日本はアメリカとの同盟「日米同盟」を締結し、日本にとっての唯一の同盟国はアメリカとなったわけです。もちろん、世界の国々との友好関係を結ぶことはあれど、軍事・安全保障の面で協力するのはアメリカだけでした。
 こうした「アメリカ依存」は、日本にとって必ずしも良い影響を与えてきたわけではありません。基地問題を筆頭に、アメリカからの外交圧力(プラザ合意などを調べてもらうとわかると思います)が日本にのしかかるのは、アメリカ一強体制の必然的な弊害であると言えます。

 そこで、岸田首相の外交手腕が光ります。
日本は、イギリスとの会談を経て、「有事の際のイギリス軍の日本派遣」「日英協同での行動の円滑化」といった内容を盛り込んだ「日英部隊間協力円滑化協定」が2023年1月に締結されました。

 長ったらしい名前ですが、要するに「新日英同盟」です。イギリスはヨーロッパ連合・EU離れを進めており、日本との連携で外交における世界への影響力を保ちたい、とされてきました。岸田首相は、アメリカ依存度を下げるという意味で、この「新日英同盟」を結んだと私は考えます。
 「太平洋地域の中国・ロシア進出を防ぎたい」日本と「太平洋地域の国々への影響を保持したい」イギリスの利害が一致したことを利用した、巧みな外交だと言えます。

 また、日英伊の3カ国での「空自F2」の後継新型戦闘機開発を進めるといった外交も行っています。優れた軍事力を持つ3カ国による連携は、アメリカの兵器依存を深める日本にとって有意義なものとなるでしょう。

さらに日英関係の発展ダメ押しです。2023年7月16日「イギリスのTPP加入正式決定」。
TPP・環太平洋パートナーシップ協定(環太平洋経済連携協定)に、太平洋に海外県を持つイギリスが加盟しました。アメリカ離脱により実質的に日本中心の経済圏となっているTPPにイギリスが加盟したことで、対中包囲網としての経済連携は更に緊密化し、日本の外交におけるソフトパワー・ハードパワー両面での影響力はますます大きくなりました。岸田首相は、安倍元首相の進めた「地球儀を俯瞰する外交」を継承し、更に発展させていると言えます。

TPP加盟国(イギリス加盟前)
出典:https://www.sankei.com/article/20181230-I7VPIBRBAROV5NT2HL4ONF5IIU/

②G7広島サミットの大成功

出典:https://www.google.com/amp/s/www3.nhk.or.jp/news/html/20230519/amp/k10014071661000.html

 安倍元首相が、オバマ大統領を広島にいざない、広島で歴史的な演説が行われたことはご存知の方も多いと思います。
 岸田首相は、それに等しい、あるいは上回る歴史的なサミットを成功させました。

 皆さんは知らないかもしれませんが、世界中の多くの人々は、原爆の恐ろしさを知りません。私たち日本人はそれを知るチャンスがあるでしょうが、多くの国の教科書にはそれらの内容は載っていません。だからこそ、海外で趣味の悪い原爆を揶揄したようなミームが出回ったりするわけです。

 今回、主要7カ国(日本・ドイツ・イタリア・アメリカ・イギリス・フランス・カナダ)の首脳が被爆地ヒロシマに集まったことが、何を意味するのでしょう。それは、先の大戦の対立を乗り越えたG7の結束です。
 連合国として戦ったアメリカ・イギリス・フランス・カナダ。枢軸国として戦った日本・ドイツ・イタリア。当時、苛烈な戦争を繰り広げた国々は、今、民主主義の擁護者として世界をリードしています。死ぬ気で相手を憎み、殺し合い続けた国々のリーダーが、80年の時を経て、多くの人が命を亡くした広島に集まったということ。これは、広島出身の岸田首相の悲願とも言えることではないでしょうか。

 また、G7の国々は、いずれも世界中に多大な影響力を保持する国ばかりです。そうした国の代表が集まるサミットは、世界中に報道されます。必然的に、ヒロシマで起きた悲劇が世界に伝わる機会は大きくなります。自身の親族も被爆した岸田首相が、核廃絶を広島で訴えたことは、日本外交史上に残される名シーンとなるでしょう。

③世界に先立ってのウクライナ支援・首相ウクライナ電撃訪問

出典:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/97138.html

 長くなりましたがこれが今回は最後です。岸田内閣は、ウクライナ侵攻が始まって即座にウクライナ支援を行い、ウクライナの平和を常に希求してきました。必ずしも「ウクライナが正義だ」とは私も思いません。それに関して様々な意見があるとは思いますが、断言できることとしては武力による領土の現状変更を行うロシアは絶対悪です。

 そして、民主主義の体制を取るウクライナを支援することは、間違いなく日本にとっての使命の一つです。ウクライナへの支援について、海外への資金バラマキという批判があります。しかし、少し現金な話にはなりますが、必ず外交成果というリターンとなって帰ってきます。現に、ウクライナのインフラ復興について、日本に期待する声は高まっており、これは即ち日本企業がウクライナに進出するということであり、これによる経済効果は計り知れません。そうした未来観測的な視点で海外支援を考えていただきたいと思います。(海外への「バラマキ?」についてはまたお話します)

 ついでにもう一つ。ウクライナへの岸田首相電撃訪問の際に、岸田首相は「必勝しゃもじ」をウクライナに持っていきました。これについてインターネット上で「何の意味もないだろ」「せめて食糧や物資を持っていけ」「本当に何も考えてない」などの言説が見られますが、私はそうした意見こそ何も考えてないだろと思います。

出典:https://www.sankei.com/article/20230325-DCVM5C7KTBJYRDEFENMFAUE7QM/

 必勝しゃもじは岸田首相の出身地・広島の名産品であり、発祥は日露戦争の際の必勝祈願であり、戦場へ旅立つ軍人が無事に戻って来られることを祈るお守りとして「しゃもじ」が使われたことです。(飯取る→敵を召し捕る)

発祥は日露戦争の際の必勝祈願」です。

もう一度言いますね。
発祥は日露戦争の際の必勝祈願」です。

 つまり、日本としてウクライナを支援し、ロシアと対立するということを意思として固めるものです。これはハッキリ言ってとんでもないことで、ロシアを名指しで非難することは通常あり得ないんです。それこそ日本は平和主義国家ですから、これまでなら「遺憾の意」で済ませていたかもしれないことを、岸田首相はウクライナ支援のためにロシアと対立するのも已む無しという日本の覚悟を示したわけです。

「外交」成果のまとめ

 さて、ここまで岸田首相の外交成果を見てきました。本当はもっとたくさん書きたい内容があります。なにせ、岸田首相は安倍内閣で憲政史上最長の外務大臣を務めた人です。「外交の岸田」と呼ばれる外交のプロフェッショナルであり、私も岸田首相の外交手腕は高く評価しています。

 しかし、一つ後悔していることがありまして……
 多分これを読むみなさんは外交にはあまり関心がないかと思います。外交を上手くやったところで内政がボロボロだと意味がない!と感じてしまう人も多いでしょうから、内政の内容からやるのがよかったなと感じています。
 ただ、外交というのは国の存亡に関わる駆け引きです。それを巧みに行う岸田首相は本当に優秀な政治家です。それを少しでも伝えたいと思っていたらこんなに長くなってしまいました。
 この調子だと次回・第四回に「安全保障」「経済政策」「内政」をまとめるのも難しいかもしれませんね。このシリーズはタイトルと関係ない内容もガンガン入れていますが、なるべく政治に詳しくない人にもわかりやすい文章を心がけていますので、ぜひ続けて読んでいただけたらと思います。

 それでは、次回の研究でお会いしましょう。
 




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