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コーチングによる合気道の技術改善

合気道は、柔術の流れを受けながらも技の優劣を競うための試合はせず、創始者の植芝盛平氏が和合の精神を尊ぶという理念のもとに創った武道である。

佐 原 文 東(2007).身体つかいの「理」を究 め る ! 実践合気道入門

合気道の稽古は、二人一組になって技をかける「取り」と、技を受ける「受け」が互いに技をかけあう型稽古が中心となる。合気道の技についてはコーチングによって改善されるという研究があるので、今回の記事では、その内容を解説する。

合気道の技の特徴

合気道の技は筋力に頼らないところにあり、呼吸法や相手の動きにあわせたタイミングの取り方が重要であるため 、技を見るだけで習得することは難し いとされています(e.g., 小林 , 1993)。

論文で対象になった技

冒頭に紹介した論文では、「座技呼吸法」が取り上げられていた。座技呼吸法は 、正座で向かい合った状態から両手首を取りにくる相手の腕を 振り上げて脇を上げさ せ 、自らの体を相手の側面に移動しながら両手を振り下ろして相手を投げる技です。この技は初心者向けの教本で取り上げられることが多いが、習得が難しいと言われています。

技の測定と出来具合の信頼性

論文では、座技呼吸法を以下の5つの行動に分けて測定していました。

  1. 相手を押す

  2. 腕を引く

  3. 腕を伸ばしながら上方に上げる

  4. 膝を立てて体を前に出す

  5. 腕を下げながら体を斜め前に移動する

上記の5つの行動をビデオで録画し、そのビデオを別の人が視聴し、各行動に対して、できていれば1点、できていなければ0点と得点化しました。

コーチングの方法

座技呼吸法に関する5つの行動のうち、まずは一つ目の行動(相手を押す)について指導者が見本を示し、それを訓練者に模倣させていました。そして指導者が正しくできたと判断した場合は褒めて、間違っていた場合は見本を再度示しました。訓練者は、1つ目の行動ができたら、2つ目の行動(腕を引く)までを連続して示し、それを訓練者に模倣させていました。そして先ほどと同様に、指導者が正しくできたと判断した場合は褒めて、間違っていた場合は見本を再度示していました。このようにして、座技呼吸法に関する5つの行動を教えていました。

訓練者の技術改善と感想

コーチングによって、技が改善されたことが客観的に示されていました。また、技の改善レベルについては、合気道の師範に評価してもらった結果、良くなっていると評価されていました。さらに、訓練者(3名)にインタビューした結果、満足しているという感想が得られたそうです。そのうち2名は、訓練終了から2年後も合気道を続けていたみたいで、自分が指導する立場になってみて、コーチングによる指導方法が大切だと思ったそうです。

まとめ

今回紹介した論文によると、武道や武術の技を習得したり、改善したりする方法として、コーチングは効果的とのことでした。

参考文献

  1. 根木俊一・島宗 理 (2010). 行動的コーチングによる合気道の技の改善. 行動分析学研究, 24(1), 59-65.

  2. 小林寛道 (1993). 動きを教える-20-合気道の動きを教える. 体育の科学, 43(8), p631-636.

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