インドのひとたちとわたくし。(146)ー祭りと選挙とワクチンと
我が家のある住宅街はいたって静かなものだし、検査の必要があって行ったサケットのMAX ホスピタルも、特に混乱した様子もなく普段通りに見えた。が、インドの現状は今、世界中で報道されている通りである。国際メディアでは、これが現政権の『大失政』であることが次々と指摘され始めている。国内メディアも、最初はPM の辞任を求めるツィッターのハッシュタグが、フェイスブック社によってたちまち削除されるようなこともあって、控えめだったが、さすがにこのごろは厳しいことを述べる識者も出てきた。
デリーのロックダウンがさらに1週間延長されたのは無理もない。ロックダウンを解除できるような兆しはどこにもないからだ。病院のベッドは満床、吸入酸素は足りていない、それでも新規患者が増え続け、焼き場が足りずに火葬場が近隣に拡張されるという事態だ。
なんだけれども、お隣のハリヤナ州やUP 州は週末だけのロックダウンで、州間の移動もでき、なんだかやっていることがばらばらな感じ。車で通行しても明らかに昨年のロックダウンより規制は緩い。お酒の在庫が尽きたので、ノイダまで買い出しに行けてしまった。警察官はそこら中にいるものの、チェックはほとんどない。これじゃあんまり封鎖になってないんじゃないかな。
アメリカの感染症対策トップであるファウチ博士はインドについて「国ごと数週間、封鎖を」と助言しているが、なんとなく対策が各州に丸投げされている感じがする。インドの窮状に、世界中から酸素ボンベなどの支援物資が届けられているが、これらはきちんと必要なところに配分されるのだろうか。いつものように『横流し』や『中抜き』が行われて闇市場に行ってしまうんじゃないかと心配する。
診察で行ったPSRI ホスピタルで、合間にコロナのワクチン接種を受けた。専用アプリからの登録が間に合わないので、受付で聞いてみたら、その場で登録票を書いてくれてすぐ受けられることになった。
ここではアストラゼネカの『コヴィシールド』を打ってくれる。左の肩に細い針をポチッと当てておしまいだ。その後、別室で30分の経過観察時間を置いて終了。PM の写真入り接種証明をもらった。2回目は約1か月後だ。
その後は左肩がちょっと痛むくらいで発熱もなく、普通に過ごしている。5月1日から18歳以上の全成人が対象となり、デリーは無料化を考えている。そんなにひとが殺到しているわけではないのに、すでに供給不足が言われているので、2回目の接種を受けられるかどうか、微妙な雲行きではある。
病床が確保できず、酸素不足で痛ましく屋外で亡くなっているひとびとは、圧倒的に「非」中産階級だろうと思う。農村部はもっと悲惨な状況に違いない。インドの大富豪はすでにプライベートジェットでドバイやタイに避難したとも聞く。
貧富の格差を広げる、『行き過ぎた新自由主義』がこれをきっかけに見直されればそれでもよいが、どうなんだろう。
この惨状の中でも、ガンジス河の祝祭に出向くひとは相変わらずいるし、通りに出て地方選の結果に一喜一憂する大勢のひとたちがニュースで報道されている。コロナの死者数の何倍もが未だに結核で亡くなる国なので、そもそも危機感や警戒心が薄いと言うひともいる。これはインドに限ったことではないが、ワクチン接種に対しても懐疑的なひとが一定数いて、政府が思ったほどのスピードでは接種が進んでいない。
この先この国がどこへ向かうのか、こちらとしてはじっと身を潜めて見守るしかない。
‐ PM の主導の失敗がインドの危機を深める( The Time, 23rd Apr. 2021 )
‐ なぜPM は無謀な決定をしたのか( The Washington Post, 28th Apr. 2021 )
‐ 私たちは人道に対する罪を目撃している( The Guardian, 28th Apr. 2021 )
( Photos : In Delhi, 2021 )
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