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インドのひとたちとわたくし。(168)ーやかまし好きの女神さまと掃除をしない職人たち

 今インドは『ナヴラトリ』という祭りの最中。善の女神ドゥルガーを讃える10日間にわたる大きなフェスティバルである。日によって異なる女神の九つの化身が立ち現れ、その化身にあわせて地域ごとにいろいろな行事がある。  ウチの近所では、お寺が道路にカラフルな天幕を張って人を集め、夕方から大音響でお祈りと歌を繰り広げている。ライブの太鼓付きであるから、正直、相当にやかましい。  そういえば初日は街角のあちこちで無料の食事が振る舞われていた。チャパティと米、豆の煮込みなどが一枚の皿で配

    • インドのひとたちとわたくし。(167)ーよい大家とわるい大家

       8月末に近所に引っ越した。引っ越し先は、築1年でまだ誰も住んでいないアパートメントだ。最上階に大家一家が住んでいて、1~3階(日本だと2~4階)が賃貸になっている。最上階を含め間取りはすべて同じ。地上階は駐車場になっている。  3ベッドルーム・2バスルームというのは、それまでの住まいと同じ。家族二人には十分な広さである。  嵐の後の長い停電で、近所のみんなが暇つぶしにベランダに出てきたとき、はす向かいのここの大家である紳士に手を振ってベランダ越しに電話番号を教え合い、物件を

      • インドのひとたちとわたくし。(166)ー袖振り合うも多生の縁

         季節はモンスーンに入り、日中の気温は40℃超えから30℃台前半まで下がった。が、逆に湿度が上がって60%以上はあるので、じめじめと蒸し暑い。日本の夏みたいだ。  この頃は、デリーよりロンドン、パリ、東京のほうが暑い。自然発火と思われる大規模な山火事もあちこちで発生しているし、滑走路や線路が暑さで溶けている。これに加え、パンデミック時の大量解雇の後遺症で、ヒースロー始め各地の空港が大混乱を起こして、長時間の遅れや大量のバゲージ・ロストが起こっている、とニュースで伝えている。せ

        • インドのひとたちと私。(165)ー小さな居候、おチビ。

           バルコニー上に取り付けてあるエアコン室外機の陰に、『インドハッカ』が巣を作った。『インドハッカ』はデリーではハトの次によく見る鳥だ。黄色い嘴と黒っぽい身体をしていて、ムクドリの仲間らしい。大きさも日本のムクドリくらいだ。いつもカップルで行動していて、割と甲高い大きな声を出すので、近くにいるとすぐにわかる。  ある朝、それまでに聞いたことのないような激しい声、というかもう金切声で手すりにとまった二羽が叫んでいたので何事かと思って覗いてみると、なんと、生まれたばかりのヒナが巣

        インドのひとたちとわたくし。(168)ーやかまし好きの女神さまと掃除をしない職人たち

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        • インドのひとたちとわたくし。(166)ー袖振り合うも多生の縁

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          インドのひとたちとわたくし。(164)ーいつも何かと『戦って』いる

           生き死にに関わるほどでないが、面倒ごとは、それはそれはしょっちゅう起こるのだった。  外国人がインドに住むにはいくつかの手続きが必要だ。ヴィザはもちろんだが、滞在許可にあたるFRRO (外国人地域登録)、PAN(納税者番号)、アダール(国民基礎番号)などがそうだ。  銀行口座を開く場合は、これらの証明書をパスポートや住まいの賃貸契約(居住証明)などと一緒に銀行に提出する必要がある。ところがいざ証明を取りに役所に出向くと、そのときの担当者の判断によって先に銀行口座の証明書を

          インドのひとたちとわたくし。(164)ーいつも何かと『戦って』いる

          インドのひとたちとわたくし。(163)ーヒトはどこから悪党になるのか

           デリー公社が街道沿いの長屋スラムをブルドーザーで強引に排除した数日後、同じ道を通りかかったら道路の反対側に恐らく同じ住民たちが新しいスラムの建築を始めていた。廃材のようなものを柱に、どこからか調達してきたブルーシートやシーツなどで屋根と壁をこしらえている。打たれ強い。そう、ひとは簡単には『お上』の言うなりにならないのだ。  スラム住民の多くは地方から出てきたひとたちで、家族単位も多い。建設現場で日雇いの仕事に就く男女もあれば、道端に寝そべって子どもの玩具などを売ったり、物乞

          インドのひとたちとわたくし。(163)ーヒトはどこから悪党になるのか

          インドのひとたちとわたくし。(162)ー熱波でも元気

           今年に入ってもう何度目かわからないヒート・ウェイブのせいで、週末は最高気温48℃である。車のボンネットでチャパティが焼ける。結婚式で実際にそれをやってみせているひとをニュースで見た。  夜になってもまだ40℃越えなのでほんとうに外に出る気がしない。午前中、200メートル先のスーパーに行くのも躊躇する。もうなんでもデリバリーだ。  今日はどうしても外出する必要があって、久しぶりにUber を使った。熱波をまともに浴びるので、オートを使うのは当分無理。  途中の道すがら、見慣れ

          インドのひとたちとわたくし。(162)ー熱波でも元気

          インドのひとたちとわたくし。(161)ー酒は文化か、悪習か

           朝からアパートメントの電気が止まっている。玄関ドアを開けて見たらエレベーターは動いているので、停電はうちのフロアだけのようだ。なぜうちだけ?入居してからまだ電気代は支払っていないが、そのせいか?  屋上に住む管理人ヴィプールは当初、「年度末だから電気会社が早目に支払わせようとする」という、どう聞いてもおかしな説明を繰り返していた。が、何度も問い詰めているうちに、先々月の電気代が支払われていないということが判明した。どうやら彼の怠慢で先々月分の請求書を我が家に持ってくるのを忘

          インドのひとたちとわたくし。(161)ー酒は文化か、悪習か

          インドのひとたちとわたくし。(160)ー『窓ガラスのない乗り物』から見えるもの

           日中の気温が40℃台になり、「窓ガラスなしの乗り物」はそろそろきつくなるのではあるが、ちょっとした近場の外出にはUber ではなくて、オートを使う。Uber は明朗会計で安心でだけれども、時間帯によってまったくつかまらないときがあるし、来るまでに15分以上かかることもある。行先をインプットして呼んでいるのに、ドライバーから直接、電話がかかってきて目的地はどこかと尋ねられる。近すぎたり遠すぎたり、要するにドライバーの都合に合わないと電話を切られて向こうからキャンセルされること

          インドのひとたちとわたくし。(160)ー『窓ガラスのない乗り物』から見えるもの

          インドのひとたちとわたくし。(159)ークリニックよもやま話

           東京に住んでいたとき、足の肉離れでしばらく近所の整体に通っていた。平日から近所の高齢者が集ってきていていつも賑やかである。若くて愛想のよい男女の整体師を揃えているのも理由があって、みんな聞き上手なのである。院長よくわかっているなと思った。  インドのクリニックでも、やっぱり顔なじみになるひとがいたりする。  いつものように横になって指圧をしてもらっているときに、頼んでいた宅配のひとから携帯に電話が入った。横になったまま電話に出ると、午後のスロットを頼んだのにもう到着してい

          インドのひとたちとわたくし。(159)ークリニックよもやま話

          インドのひとたちとわたくし。(158)ーインド、英国、ひとびとの生活

           なんと、知り合いの書いた本がベースとなってロンドンでお芝居が上演されることになった。  知り合いとは、タリーニのいとこで、ロンドンでジャーナリストをしているカヴィータ・プーリだ。BBC ラジオのドキュメンタリ番組を制作している彼女は、自身の高齢の父親(故人)をはじめとする1947年「印パ分離」を経験したインド人と英国人に丁寧にインタビューした本を上梓した。  インドにとっても最大の悲劇と言われる激動と混乱の時代を、大局など知る由もない市井のひとびとがどのようにして乗り切

          インドのひとたちとわたくし。(158)ーインド、英国、ひとびとの生活

          インドのひとたちとわたくし。(157)ー五十肩でも夜は空ける

           「フローズン・ショルダーですね」 ああ、やっぱり。  整形外科医のアミット・アガルワル先生は、小さな肩の骨の模型を取り出して説明してくれる。「これが、肩関節を包む関節包。ここが委縮して固くなっているので、肩の可動域が狭いのです」。フローズン・ショルダーとは、要するに五十肩のことだ。  恐る恐る「それは加齢のせいですか」と聞いてみる。「いや、そうとは限りません。原因はひとつではないので」。なぜかちょっと、ほっとしたりして。  この三カ月ほど、右肩の前部が痛い。肩が痛くて

          インドのひとたちとわたくし。(157)ー五十肩でも夜は空ける

          インドのひとたちとわたくし。(156)ーあたらしい住まいとあたらしい生活

           引っ越しをすることにした。  縁あって声をかけてくれた会計コンサルタント事務所はウエストデリーにあって、ここからだと片道1時間以上はかかる。会社を売却してノイダに通う必要がなくなったから、新しい契約先により近いところにアパートメントを探した。  今の住まいは近隣が富裕層か外国人駐在員ばかりの閑静な住宅地だが、今度の住まいは、英語を解すひとがより少なそうな地域ではある。外国人向けの物件はそもそもなかった。いいんじゃないの。より深くインド民の生活に溶け込むと思えば。  引っ

          インドのひとたちとわたくし。(156)ーあたらしい住まいとあたらしい生活

          インドのひとたちとわたくし。(155)ーメイド殺人事件

           午前中、何気に外を見たら、家の前の通りに警察車両が続々と集まっていて、たいそう驚いた。制服姿の警官もウヨウヨしている。野次馬はほとんどいないが、警察と大書した車が5台以上、警官は軽く10人を超える。新たに到着する車両も何台かある。中には偉いひとがいるらしく、さっと敬礼して出迎えたりしている。  何ごとかと思って大家の息子アマンにテキストを送ると、代わりに父親のカプール氏が、「近所で犯罪事件があったらしい」と返事を寄越した。『犯罪事件?』、こんな住宅地で事件とは、いったい何

          インドのひとたちとわたくし。(155)ーメイド殺人事件

          インドのひとたちとわたくし。―(154)『嘘』と『適当』

           そのひとには前にも会ったことがある。  たいへんに恰幅のよいシーク教徒の紳士で、長い上着の、全身白づくめの伝統的な衣装姿で二人掛けのソファをひとりで占拠しているさまは、言ってはなんだが、スターウォーズの『ジャバ・ザ・ハット』みたいだった。  ゴアに広大なカシューナッツ農園と加工場を持っていて、インド全土に加工品を卸している。最上級の巨大なカシューナッツを、塩味でローストしただけでなく、マサラ味やブラックペッパー味、わさびマヨ味などでコーティングした、さまざまなバリエーショ

          インドのひとたちとわたくし。―(154)『嘘』と『適当』

          インドのひとたちとわたくし。(153)ー町の便利屋さん

           今日はPM の誕生日だそうだ。まだ亡くなってもいない一政治家の誕生日を、国を挙げて祝おうというのは珍しいのではないか。ある大手メディアのトップニュースは、「PM の誕生日にワクチンの接種数が新記録を達成!」というものだった。ははは、これをやるために直前のワクチン接種の数を控えていたのだ。みんな知ってるよ。私は見ていないけれども、新聞各紙には誕生日を祝う全面広告が出たらしい。よくやるなあ。もう王様か神様を創ろうとしているんだろう。あまりのあざとさにかえって感心するが、普段、政

          インドのひとたちとわたくし。(153)ー町の便利屋さん