ペコちゃん

北海道出身。道東の小さな町の酪農家で生まれ育つ。札幌の大学を卒業後、夢だった英語教師に…

ペコちゃん

北海道出身。道東の小さな町の酪農家で生まれ育つ。札幌の大学を卒業後、夢だった英語教師になるも語学修行のため三年で退職。米国、オレゴン州に単身留学。その後、いろいろあって日本語教師になることを決心。コネチカット州の州立大学で修士を取り、現在はコロラド州の高校、大学で日本語教師。

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シフォンケーキはいかがですか?

はじめまして。ペコです。訳ありで現在海外暮らしですが、生粋の道産子で人間の数より牛の数の方が多い、というものすごーく小さな町で生まれ育ちました。過疎化がすすみ、通っていた小学校もだいぶ前に閉校となったのですが、ありがたいことに校舎はほぼ今も昔のままに保存されております。そのなかでも教員住宅兼保育所だったたてものはいまはとっても可愛いカフェとしてつかわれており、去年久々に里帰りしたときに、はじめて兄に連れて行ってもらいました。小さな小さなカフェなんですが、木のぬくもりがあったか

    • シフォンケーキはいかがですか?(道東の学校の冬の体育)

      道東の冬はとてつもなく寒い。この寒さの中で先住民であるアイヌの人たちはどうやって生き延びたのか想像がつかないほどめちゃ寒い。髪を洗ったままで外に出ると30秒で氷つくし、タオルを外に干して取り入れるのを忘れたりしたら翌日パリパリになってる。我が家では外でアイスクリームを作るのが冬のひとつの楽しみでもあった(そのかわり飼い犬に食べられてしまったこともしばしばあったが、、、。)。とにかくそんなわけで学校の冬の体育が毎回スケートだったというのも納得がいくのだが、子供の時はやはり「何で

      • 恋愛留学 (#2000字のドラマ応募作品)

        私の名前は早瀬七海、26歳。北海道の小さな小学校で教え始めて3年。一浪までして教員になったのですが、OLになる自分は想像できないし、教師ならできるかも、、、とその程度の動機でなってしまったせいか3年目にして疑問がでてきた。こんな気持ちで教壇にたっていていいものか。さらに大学時代にできなかった海外留学へ野望がまたふつふつと湧きあがってきていた。「結婚したら留学なんてさらに遠のく。っていうかほとんど無理!」 その一方でそんなことを心配している自分をあざけ笑うもう一人の自分がいた。

        • シフォンケーキはいかがですか?(酪農家のステイタス:トラクター)

          ドラマなんか見ているとかっこいいスポーツカーに乗っておしゃれないでたちでやってきた”ママ”が校門の前で子供を降ろし、「いってらっしゃ〜い!」なんて手を振りながら叫ぶシーンを時々みる。すると同級生なんかから「すげ〜なあ、おまえんち。」なんて言われて注目をあびる。しかし、この状況、わたしから言わせれば別世界での話。 私の通っていた小学校では、まず、車で学校に来る子供はいない。登校時間は酪農家にとって朝の搾乳時間。どの親も車で子供を送っていく時間などない。 次にスポーツカーなど

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        シフォンケーキはいかがですか?

          シフォンケーキはいかがですか?(なにゆえ登山遠足?)

          どこの学校にも、年中行事にひとつやふたつは遠足というものがあると思います。勿論、私の小学校にもありました。それが登山遠足。 毎年の行事でしかも毎日実家の牧場から見ている地元の山にみんなで登り、お昼ごはんを食べて帰ってくるという、ただそれだけのこと。生まれた時から山や林や野生動物たちに囲まれた環境で生きているのに、なぜ遠足までが山登り?? そもそも遠足というのは”遠くに足を伸ばす”ということではないのか? 自然に親しみ、自然とふれあうってなことは毎日やっているのでわたしとして

          シフォンケーキはいかがですか?(なにゆえ登山遠足?)

          シフォンケーキはいかがですか?(キャンプと呼べないキャンプ)

          夏休みといえばキャンプ。ありました。私が小学生の時にも。しかしこれを’キャンプ’と呼べるかどうかと言うとちょっと考えものでして、、、。 キャンプは夏休み中の唯一の学級行事でした。(複式なので二つの学年で一クラス。それでも全部で5人です。)家が酪農家の子供たちが100%の小学校でしたから、夏休みのど真ん中は避けて(子供たちも牧草刈りの作業に駆り出されるので)キャンプは休みが始まってすぐに行います。 基本的に村全体がキャンプ場のような地域ですから、どこにテントを張っても誰もな

          シフォンケーキはいかがですか?(キャンプと呼べないキャンプ)

          シフォンケーキはいかがですか?(オオハクチョウがだめなら、、、)

          以前話したように、「オオハクチョウに乗って空を飛ぶ計画」は惨めな結果に終わった。そしてそれからしばらくは’動物に乗る’ということは考えないようにしていた。(というか他に乗れそうな動物が近くにいなかったんです。) しかしある日、小学生の私はまたひらめいてしまったのです。ぼんやりと牧場で草を食べたり、休んでいる乳牛達を見ている時に。「何故これに気づかなかったんだ!いるではないかここに!しかもこんなにたくさん!」’灯台下暗し’とはまさにこのこと。それまで牛に乗ることを一度も考えな

          シフォンケーキはいかがですか?(オオハクチョウがだめなら、、、)

          シフォンケーキはいかがですか?(’晩ご飯=うどん’じゃないの?)

          以前、「”卯の花和え”の真実」でちょこっと触れましたが、私の実家は酪農家で母がほぼ一日中畑や牛舎で働いていたため、私の祖母が食事の支度をしていました。当時の酪農家の仕事分担としてはこれがごく普通で、友達のお弁当もほとんどお婆ちゃんたちの手作り。祖母が作った弁当は、今時の子供たちのお弁当みたいに見た目にも食欲をそそられるようなものではなく、全体的に茶色くおかずの種類も少ない。 そんなわけで、小学校のお昼ご飯は同じような茶色っぽいおかずの繰り返しで、さほど楽しみでもなかったのだ

          シフォンケーキはいかがですか?(’晩ご飯=うどん’じゃないの?)

          シフォンケーキはいかがですか?(”卯の花和え”の真実)

          私が通っていた中学校は、村の中心部にあり、当時四校あった小学校を卒業した子供たちが通っていた(それでも全校の学生数は60人前後)。小学校では給食がなかったが、中学校の昼食は村の給食センターで作られた米飯給食。 私は毎週、翌週の給食メニュー表をもらうのを心待ちにしていた。とにかく家ではあまり作ってもらえなかったスパゲテイーやハンバーグなんかが出る日は、それだけで学校に行くのが楽しみだった。(家では婆ちゃんが食事担当。メニューはたいてい山菜、魚料理、丼もの、そして北海道名物ジンギ

          シフォンケーキはいかがですか?(”卯の花和え”の真実)

          シフォンケーキはいかがですか?(夏休みのお兄ちゃん)

          酪農家の子供の夏休みは肉体労働ばかりでちっとも楽しみではなかったということを以前書きましたが、一つだけひそかに心待ちにしていたことがありました。それは夏休みにやってくる高校生のお兄ちゃん。 当時、地元の農協が山形県の農業高校と提携して学生を実習生として酪農家に夏の間派遣するというプログラムがあり、我が家もその受け入れ農家の一つとして参加していました。それで毎年うちには高校生のお兄ちゃんが一ヶ月ほどホームステイしていたわけです。とにかく人口の流動がほとんどない農村では知らない

          シフォンケーキはいかがですか?(夏休みのお兄ちゃん)

          シフォンケーキはいかがですか?(オオハクチョウと空を飛ぶ計画)

          北海道には毎年冬になると、シベリアからオオハクチョウの群がやって来る。他の鳥とは全く違う鳴き声を持つので、その声を聞くと「ああ今年もやってきた。」とすぐ分かる。子どもの頃のわたしには、このオオハクチョウの群れがとても幻想的に見えた。思えばあの頃から外国に対する強い憧れ、好奇心があったのだと思う。シベリアという私の知らない世界を彼等は知っている。どんな人がどんな生活をしていて、どんな景色を毎日見ているのだろう。そんなことを想像し出すと、どんどん頭のなかで私なりの新しい未知なる世

          シフォンケーキはいかがですか?(オオハクチョウと空を飛ぶ計画)

          シフォンケーキはいかがですか?(夏休みなんて、大嫌い!)

          夏休みが近づくと”もうすぐ夏休み!”とか”夏休みだ!プールに行こう!”とか”今年の夏は海水浴!”とかなんかもう待ち遠しくてしょうがない子供たちの声が聞こえてくるのが普通であるが、子供の頃の私はいつも「夏休みなんかなければいい!」と思っていた。なぜかと言うと、酪農家の子供にとって夏休みは乾草を作りのピークでその作業に駆り出される時期であるからだ。つまり、ちっとも’休み’ではないのである。逆に親たちにとっては「やっと夏休み。人手が増えるぞ!」と言うわけで、夏休みウエルカムであった

          シフォンケーキはいかがですか?(夏休みなんて、大嫌い!)

          シフォンケーキはいかがですか?(馬のおじさんの話)

          いまもあの馬のおじさんがどこから来ていたのかわからない。一年に一度、そのおじさんはどこからともなく馬に荷車をひかせてやってくる。その荷台の上には山盛りに衣服が積まれていて、その上に青いシートがかぶせてある。おじさんはその上に座って、馬の手綱を握っていた。「あした、馬のおじさんが来るよ。」と母が言った日の夜は胸がワクワクしてよく寝られなかった。馬のおじさんがくることは同じ地区の農家さんたちにも知らせされ、その日は4−5人のおばちゃんたちが家の居間でおじさんがくるのを待つと言うの

          シフォンケーキはいかがですか?(馬のおじさんの話)

          シフォンケーキはいかがですか?(飼ってはいけない生き物 その2)

          カラスのパー子を手放してからしばらくは新しいペットのことは考えず、チャコやその子猫たち、そして犬のガリンコと相変わらず牛舎の二階やトラクターや農機具がある倉庫のあたりで遊んでいた。しかしやはり少しずつまた新メンバー開拓に対する意欲がフツフツと湧いてきていた。そんなある日、ある出来事が私に新たに大きな希望を与えてくれた。家の前で私の目の前を横切った野ウサギである。「なぜこれにもっと早く気づかなかったのか!」「野ウサギはカラスよりもずっとかわいい。うさぎといえばミッフィー!なでた

          シフォンケーキはいかがですか?(飼ってはいけない生き物 その2)

          シフォンケーキはいかがですか?(飼ってはいけない生き物その1)

          酪農家に生まれ育ったので、犬や猫がいるのは当たり前。おかげで外で遊ぶことに関してはやることに事欠かないほどたくさんあった。想像力と犬、猫のお友達がいれば時間を忘れて遊ぶことができる。ものがない時代だったけど、もしかしたら今の子供たちよりずっと楽しい子供時代を過ごしたんじゃないかなあと思う。そんな楽しいペットたちとの生活の中でも時折、新しい仲間を増やしたい気持ちになることがあった。そして、思うだけではなく、やってしまうのが私であった。残念なことにそのほとんどは失敗に終わった。そ

          シフォンケーキはいかがですか?(飼ってはいけない生き物その1)

          シフォンケーキはいかがですか?(猫ちゃんの話)

          酪農家の我が家には、乳牛の他にいつも犬や猫などの動物たちがペットとして一緒に暮らしていた。私が生まれる前からうちで暮らしていた猫のチャコ。チャコはメスのミケ猫でどこから来たのかは私もわからない。ペットとはいえ、昔の酪農家の家で飼われていたペットたちは今のペットたちと比べてずっと自立していた。ペットフードなんて私はそんなものがあるなんていうことも知らなかったし、ペットの誕生日とか、ペットの服まで買える今のペット事情を考えると、あの頃のペットたちにちょっと申し訳なくなる。私が子供

          シフォンケーキはいかがですか?(猫ちゃんの話)