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シフォンケーキはいかがですか?(酪農家のステイタス:トラクター)

ドラマなんか見ているとかっこいいスポーツカーに乗っておしゃれないでたちでやってきた”ママ”が校門の前で子供を降ろし、「いってらっしゃ〜い!」なんて手を振りながら叫ぶシーンを時々みる。すると同級生なんかから「すげ〜なあ、おまえんち。」なんて言われて注目をあびる。しかし、この状況、わたしから言わせれば別世界での話。

私の通っていた小学校では、まず、車で学校に来る子供はいない。登校時間は酪農家にとって朝の搾乳時間。どの親も車で子供を送っていく時間などない。

次にスポーツカーなどの高級車は酪農家にとって現実的ではない。農協に用足しに行ったり、隣近所に用事で出かける時など作業服で車を運転することもあるし、道路だっていつも整備された舗装道路を走るわけではないので、、。

それではスポーツカーに乗ったお金持ちの家の子供が同級生から注目されるようなシーンは酪農家ではどうなるのか。それは、トラクター!

普段自転車で登校する子供たちも、流石に寒さの厳しい北海道では冬場は親に車で送って貰わなければならないことが多い。まあ普通は乗用車なんですが、猛吹雪で車では学校まで無事たどり着けないかも、、なんていう日は、トラクターでお迎えなんて日もあるわけです。

トラクターは子供たちにとっては酪農家のステイタス。「あんたんち、トラクター何?」「うちは最近フォード買ったんだよね。」「え〜!すっげ〜。」みたいな会話がよくあります。 なのでどの酪農家がどのトラクター乗ってるかはどの子供もほぼ把握しており、遠くに見えるトラクターを指差し、「○○くん、お父さん迎えに来たよお〜。」と言えちゃったりもします。 トラクターも特に外国産のフォードやジョンディア(共にアメリカの会社)のトラクターを所有する農家の子供たちは鼻高々。それがさらに屋根付きでクリアーガラスで運転席が囲まれていたりしたらもうスター気分になれます。

我が家はしばらくクボタの赤い小型のトラクターを使用。小学校卒業までにスポットライトを浴びる日はもうこないと諦めていたのですが、これでは流石に作業がはかどらないと、父がある日思い切ってフォードトラクターを購入。クボタのトラクターより二回りも大きく、しかも屋根とクリアーガラス付き!「おまえんち、フォード買ったんだって?」「うん、まあね。」さりげなく返答しましたが、頭の中ではステージの真ん中でスポットライトを浴びて立つ自分の姿を見ていたのでした。

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