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血、黒くね…?

2024.05.26
ペぎんの日記#56
「血、黒くね…?」


この間、少々事情があって病院で血を抜いてきた。

血を抜くっていう表現は語弊があるか。要するに検査のために採血されたのである。

物心がついてから採血するのは初めてだと思う。
16歳になったので、「献血に行ってみたいな」などとも思っていたのだけれど、A型のRh+の自分が「やーやー私の血を分けてあげようじゃないか!」という感じで行っても迷惑な気がして保留していた。もうちょっとヒーロー気質が落ち着いてから「ごめんなさいA型のRh+で…」という謙虚な姿勢で献血には行こうと思う。

そんなこんなで、「ぺぎん初めて血を抜く」の巻。

病院の待合スペースで、整理番号を握りしめて、名前が呼ばれるのを待つ。
期待と不安でドキドキするけど、「心拍数が高かったら血がドクドク出ちゃってまずそうだな」などと、おそらく要らないであろう心配をして、心拍数を抑えようと必死になる。

大きく息を吸ってー。
吐いてー。
目を瞑って吸ってー。
吐いてー。
もう一度吸ってー。

「ぺぎんさーん、診察室2番へどうぞー」
「はっ、ゲホッ、はい!」

目を瞑って大きく息を吸ったタイミングで不意に呼ばる。びっくりして喉がヒュッとして、「はい」と返事をしようとしたのに咳が出る。
もう一度返事をし直してから、慌ただしく荷物を母親に預けて診察室に向かう。

コンコンコン、と診察室のドアを3回ノックする。
高校に入るときの面接を思い出した。考えてみればこれもある意味面接である。血液の面接。
おいおい私の血液よ、先生の前ではいい顔しておくんだぞ…。自信の無さ故に、自分ではコントロールできないことを神に託す。自分ではどうしようも無い色々は、ブッタ様だかイエス様だか八百万だかの神様が何とかしてくれるであろう。何事も、祈れば救われるのである。

「どうぞー」
中から声がする。ドアを開けて中に入る。
「失礼しまーす」

「そこの椅子に座ってくださいねー」
「はい」
「ぺぎんさんで間違いないですね。」
「はい、ぺぎんです。」
「どちらの腕がいいでしょうか?」
「えーっと、じゃあ左でお願いします」
「はーい左ですね。アルコール消毒大丈夫でしたか?」
「大丈夫です」
「じゃ、ここに腕置いて肩の力抜いてくださいねー。・・・よし、じゃあチクッとしますよー」

採血用の針が、左腕の肘の裏辺りにスッと入る。そして看護師さんがチョイチョイと操作をすると、なんと私の血が管を通って流れていくではないか!

無知ゆえに、流れていく血を心臓バックバクで眺めながら、様々な疑問が湧いてくる。
「今心臓バクバクしてるからこんなにスピーディーに溜まっていくの?」
「え、ホントに溜まるスピード早すぎない?」
「これ今ゴムバンドみたいの巻いてるってことは、これ取ったらもっと勢いよく流血するってこと?」
「看護師さん次から次へと試験管(?)替えてるけど、これ何本分採血するの!?」
「手がピリピリするぅ」
「てか試験管外して次のやつ付けてるのに血こぼれないの凄くね?」
「ねぇ看護師さんなんで一言も喋らないの?」
「あ、集中しないとイケナイ系の作業なのこれって?」
「えでも『順調に採れてますよー』くらい言ってくれてもよくね?私初心者ですよ…?」
「もしかして順調じゃないから何も言わないの…?」
「もしかして、もしかしてだけど、『順調ですよ』って言ってくれないのって…」

血、黒すぎるからじゃね!?

そう、採血を始めてからずっと思ってたんだけど、そういうものだと思って飲み込んできた。
でも、徐々に不安が迫り上がってくると、認めたくなかった事実を認めざるを得なくなってくる。

やっぱ私の血、黒すぎるよね!?

採血する前はもっと赤くてブッシャア!ッて感じの血を想像していた(表現ごめんなさい)。でも私の左腕から流れてきたのは、赤って言うより黒に近いドロっとした液体。

看護師さんに聞こうか迷った。
「あのー、血ってこんな黒いものでしたっけ?」

でもどうするのよ、それで「あなたの血は人間の血じゃありません」なんて言われたら。あなた責任取ってくれるわけ!?

結局、様々な疑問を残したまま採血は終わり、最後は看護師さんに「ハイ終わりです。お疲れ様でしたー」と、注射でよくある絆創膏を貼ってもらった。

モヤモヤを抱えたまま、でも最後の看護師さんの笑顔は嘘じゃ無かったことを信じて、少し安心してみる。

検査結果を教えてくれるのは次回来院したときだってさ。頼むから何も引っかからないでくれ、私の血液。

普通にちょっと怖いから。よくないものが身体の中をグルグルグルグル回ってるって考えなきゃいけないのは。




日記中に出てきた
「A型のRh+だから献血に行かない」と「血が黒い」に関して、調べてみると情報をゲットできたので追加しておきます。

・献血における血液型について
▶「自分は平凡な型だから行かなくていい」は間違い。提供者が沢山いるのと同時に、その血液型の患者さんも沢山いるのである。
珍しい型は、提供者が安定して確保できないため、珍しい型の人が行くと献血所で重宝されるのは事実。しかし平凡な型の人が安定して献血に来てくれるのも、それと同じくらい大切なことである。
(血液検査でパス出来たら、今度献血に行ってみようと思いました。手がピリピリするの楽しかったし。)

・採血時に血が黒いことについて
▶採血するのは静脈血(酸素量が少ないやつ)なので、よく見る鮮やかな赤色の血よりも、黒みがかって見える。だから採血した血が黒くても大丈夫。
(って言われても心配になるくらい黒かったんですよねー…。)

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