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ブラックボックスを突き抜けて

2024.06.12
ぺぎんの日記#71
「ブラックボックスを突き抜けて」


今日は化学の先生が熱を出してしまってお休みしていた。

化学の時間は自習になり、自習監督としてS先生が入ってくれた。
S先生は1年生の担任を持っている数学の先生。私たち2年生の授業は持っていないものの、授業が面白いと評判の先生だ(数学の先生なのに至って平和な前評判である)。

そんなS先生が話してくれた、数学と物理に関する話を残しておきたい。

授業開始のチャイムと同時に、いつもの化学の先生ではなく、S先生が入ってくる。よく分からないまま挨拶をして、授業が始まる。

「えー、1年の担任をしていますSと言います。今日ちょっと化学の先生が熱出しちゃって代わりに来ました。なんか、勉強しろと伝えれば勉強できると聞いているので、はい、勉強してくださーい笑。」

おうおうおう。

心の整理がつかないまま、自主勉強が始まる。S先生は「いつでも聞いてなー」と、教室をグルグル歩く。あ、これサボれないやつだ笑。

S先生が回っている最中、何人かが化学に関する質問をして、その受け答えの仕方がスムーズでクレバーだったからなのか、数学や物理に関する質問も、S先生に次々と投げかけられるようになっていった。

その一つ一つにS先生は端的に、かつ分かりやすく答える。

そのうち質問はだんだんと「分からない問題」から「人生相談」に変わっていく。
「〇〇大学の2次って何を対策すればいいんですか?」「数学ってどうやったら好きになれますか?」「物理が得意な人の頭ってどうなってるんですか?」
そんなような質問が出ていた気がする。

そんな質問にも、S先生は「自習だべやー笑」と言いながら答えてくれる。

私はその会話を、周期表を眺めながら、耳をそばだてて聞いていた。

そしてそんな問答の中で、どんな質問だったかは忘れてしまったけど、S先生がこんなことを話していた。

「数学ってのは要するにブラックボックスみたいなもので、人間が作り出した目に見えない学問なんですよ。全ての公理・定義・定理を理解している人じゃないと、なんでその結果が叩き出されるのかが分からない。僕らは『証明』というものを利用して、ブラックボックスの信頼性を確かめながら数学を扱っているにすぎないんです。数学というブラックボックスは、常にブラックボックスの中を独り歩きして発展してきた歴史があります。しかし、現代の物理学っていうのは、そのブラックボックスを突き抜けてできたものなんですね。」

S先生が、何かを突き破るジェスチャーをする。

「現実を扱う物理学において、事象を一般化するために想像の世界、一般にイデア界と呼ばれる世界に行かなければならない。これこそが物理に含まれる数学なんです。ですから、数学は仮想の学問だから数学よりも物理を頑張る、というのは、ある意味では矛盾かも知れないですね。」

思わず聞き入ってしまった。数学と現実世界との関係性。今まで強く意識したことは無かったけれど、「あぁこんな言葉で説明できるんだ」と妙に感動した。

「数学というブラックボックスを突き抜けてできた現代物理」

この響きだけで、今日はご飯を何杯か食べれそうだ!!

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