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今観るべき「スノーピアサー」を社会問題の視点で考える。Netflixドラマで配信前に映画版で予習


今年注目すべき映画界のひとり、ポン・ジュノ監督の初となる海外合作映画として製作された映画「スノーピアサー」が5/25よりNetflixオリジナルドラマとして独占配信されることが決まりましたね。

ドラマの配信前に映画版で予習してみたところチェックすべき興味深いテーマがたくさん散りばめられていて。

映画版がポン・ジュノ監督ともあって彼の作風である陰湿な雰囲気の漂う世界観で十分満足ですが、ドラマ版での新たなSFに映像美が加わるのがとても楽しみ。

個人的に押さえておくべきポイントは政治と階級闘争、社会的不公平といったディストピアな主題に即した物語が繰り広げられるところ。

あらゆる場面でそれらを比喩していて自分なりに読み解いていくとかなり引き込まれる深い作品だと思います。

こちら今だとNetflixで観られます。


主演は「キャプテン・アメリカ」シリーズのクリス・エヴァンス。

一見髭もじゃすぎてうん?誰?ってなっちゃったんですけど、さすがクリス。今作でも正義感あふれるチームのリーダー役としてかっこいい姿がみられます。

《あらすじ》 地球は環境破壊によって氷河期が再来した近未来。唯一生き残った人類が生活しているのは舞台となる1本の列車「スノーピアサー」だった。自給自足できる列車の後方に行くほど貧しく支配される者が生活しており、前方車両で支配する者からの階級社会で成り立っている。奴隷のような毎日に苦しむ人々が立ち上がり自由を求め先頭車両に向かって命をかけた戦いが始まる。


🚇Point 1. 地球の異常気象をリアルに描く

まず、ポイントとなる点のひとつめは今まさに問題となっているリアルな地球環境の変化が描かれているところ。

劇中では2014年に止まらない温暖化を抑止するため冷却物質が散布されて地球は氷河期をむかえます。

どうにか生き残った少人数でまた、人間は極限状態に陥ると人間を襲い狩りを始め、人間同士が襲い合う恐ろしいことが起こる。中には自分の赤ちゃんにまで。それによって足や腕が無い人々が描かれています。

とても恐ろしいことを経験したかのように主人公は語りますが、何が一番恐ろしいことかというと、人間のエゴそのものによる結果だと思うのです。

つまり、私たち人間は自分のしていることを都合よく解釈して目の前のことに支配されているということ。人間を狩ることにギルティーを感じてしまうのに同じ罪の無い生き者の足や腕、赤ちゃんを平気で毎日食べていることに関してはまるで無意識で利己的な考えが結果的にこのような事態を招いていること。

未来を食い尽くしてしまう共食いであり、共倒れ。

今を生きるためにたくさんの借金を繰り返して未来に負の遺産を残すよう私たちは今なお地球に借金をし続けています。そのツケは誰かが払ってくれるとエゴの中に生きています。

果たして私たちはそんな列車に乗り続けていていいのか。そんな疑問を投げかけてくるような気がします。

そしてラストは主人公は未来を切り開くための決断を下します。


🚇Point 2. 扉の向こうは階級社会

ポイントの2つめは列車の先方(上流階級)に進む扉を開けるたびに裕福になっていき、まさに階級社会の先進国を描いています。

この政治経済批判はこの映画では大きな核となるテーマです。

最後尾の車両で生活する人々は扉の向こう側の人々に完全に支配されており、ご飯は原材料もわからないプロテインバー、理不尽に行われる暴力、そして小さな子供たちがどういうわけか定期的に連れ去られていきます。

どうして私たちがこんなにも惨めな生活を強いられているか理解できずに不満を募らせます。

これは貧困国を暗示させる表現のひとつで先進国の我々が身勝手にしている行動によるものです。

連れ去られた子供は人身売買のような意味を感じとれますし、児童労働を表しています。

先進国がどんどん成長をしていく中で、影で支えているのは後進国であったり利益を最優先する選択が権力によってであり、扉に隔てられた階級と格差がある。

また、メディアの影響も皮肉なほどに洗脳道具として描写されています。

それがすごく面白い。固定概念の無い子供たちの教育のツールとしてテレビがあり、この列車での生活がいかに正しく外の世界は恐ろしいものかを繰り返し教え込みます。

私たちの生活の中でテレビ、メディアから受ける影響は計り知れないほど多くほとんどの人はその情報を鵜呑みにするでしょう。

小さい頃から当たり前のように受けてきた常識こそ洗脳だからです。

列車の扉を進むごとに透視する少女の言葉も問題の報道役のようで一役かっています。

🚇Point 3. スノーピアサーが意味すること

そもそも"スノーピアサー"とはどんな意味があるのか。

直訳すると"雪の穴をつくる人"

つまり、雪という自然のある外の世界、自由を得るために隔たれている壁(扉)に穴をあけ(突破)ていく。という意味だと捉えます。

主人公はその扉で別けられている経済格差を突き通すために資本主義と戦っていきます。

そしてこの列車は世界中を決して止まることなく回り続けています。

止まったら死ぬ。進み続ける。

現代社会での資本主義の止められない経済の暴走を想像させます。

私たちはその人間の欲で動く止まらない列車の中にただ呆然と乗っている乗客にすぎません。

外の世界を知らずに、知ろうともせず大きなシステムから逃げ出すことに疑問を持つことなくみんな与えられた場所で与えられた考えを持ち、与えられた当たり前の中で過ごしています。

そんな暴走列車にいつまでも無賃乗車し続けたいですか。

私は主人公のようなスノーピアサーな思想を持ち生きたいと改めて感じさせられました。


一見するとただの反乱者のストーリーに映るかもしれませんが、ひとつひとつを紐解いていくとすごく深い意味が込められていて線につながります。

列車は私たち自身でありそのどこかの車両に座っている。

システムはひとりでは変えられないかもしれない、でも社会は個人が集まって成り立っていることを忘れないでほしいです。

列車の最後尾の人々、毎日食べている栄養が高いとされてきた食べ物の正体、すべて循環します。少しだけ想像力を働かせてみたら変われるかもしれません。

とても興味深く、(暗喩すぎますが)今の私たちには必要なピースかもしれません。

ぜひ、Netflixオリジナルドラマが始まる前にちょっと視点を変えて観てみると面白い発見ができるかもしれません。

ドラマが、どんな風に映画と違う描かれ方をするのかも楽しみですね。


Filmarks @mmko1220




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