MELODY&NUTS #5 LOAD

『メロ時間がない』
金は用意できたが取引の時間が迫っていた
表通りに出てタクシーを探したが
こんな時に限って全然捕まらない

『メロ時間がない』
ナッツは壊れた電化製品みたいに
同じことばかり言っている

『メロ』
『時間がないだろ！
　それはわかった
　元締めに遅れると連絡しろ』
『メロ
　充電が切れちゃってる
　どうしよう』

ナッツはいつもこうだ
肝心なところでうまくいかない
星の元に生まれてきている
見た目は強面で
周りからは狂犬だと思われているが
サングラスの奥は子犬の様な目をしている
そんなチワワみたいなナッツが
尻尾を振っているとなぜか憎めない
いつも口車に乗せられてしまうのだ

『とりあえず走ろう
　向かっている間にタクシーを捕まえた方がいい』

取引現場までは全力で走っても３０分
到底間に合いそうにない
この取引を逃すと
リーに５０万円の借金ができるだけだ
そんな大金返せるはずがない
一生リーの下っ端なんてうんざりだ
くそっまたナッツの口車に騙された

『へい』
『へいへーい』
横から変な声が聞こえる
こんな時に誰だ
機嫌が悪いんだぶっ飛ばすぞ

フォンフォーン

『おーいナッツメロ
　いつものくれよー
　頼むよー』
よく聴くと聴き慣れた声
ディーだ

『探してたんだよ
　HIGHが欲しくてさ
　今日も持ってんだろHIGH』
『あぁ持ってるよ
　そんなことよりCLUB HEAVENまで
　車に乗せてくれないか？』
『俺もちょうどHEAVENに行くところさ
　乗ってけよ
　そんなことより
　とりあえず一口くれよ』