結んでひらいて手をうって結んで
「むすんでひらいて」
この歌を初めて幼稚園で聴いたとき、歌詞の意味がわからなかった。
むすんで ひらいて
てをうって むすんで
またひらいて てをうって
そのてをうえに
……その、上にやった手はその後どうなるんや。結んで開いた結果手を上にやって、そして、どうなるんや?!と、とても不思議に思っていた。
蜂が飛ぶ歌ならば、
ぶんぶんぶん
はちがとぶ
おいけの周りに
お花が咲いたよ
ぶんぶんぶん
はちがとぶ
ああ、花が咲いて嬉しいのかな、忙しいのかな、そういう歌だな。むふふふふふふふふはあっははははあ!って子供心に思い至るわけだけど、むすんでひらいての歌は、さすがに抽象的過ぎる。まず誰の手なのかも明らかになっていないし、何を結んで開くのかすらほのめかされている!曖昧模糊に仄めかされたなんとも暴力的なロックだ!
だからたぶん、幼い僕は幼稚園の先生に訊いただろう。「ねえ、この後、どうなると?」と。
そしてたぶん、先生はこう答えたのかもしれない。「みんなで歌って踊ったら楽しいでしょ、そういう歌だよ」と。
ふんむぅー!むぅっきっぃぃー!納得できん!そんなんじゃわっちはいっちょん納得できんどっ!
ということで、大人の僕はこの謎の歌について調べてみる。
数秒で情報がでてくる!
もともとはフランスのオペラかなんかの曲らしい。そして作曲は、社会の教科書にのってた社会契約論?の、じゃんなんとかルソーらしい。あの、謎ににんまりしたおじさんである。
そして、明治のあたりに賛美歌のメロディーとして日本に入ってきて、賛美歌の歌詞がつけられたらしい。
そしてその後、まったく別の歌詞がつけられ、この謎の童謡「むすんでひらいて」が爆誕。そして一番の謎が、日本語の作詞をした人が不明なのだということ。
となると、もはや、いろいろ自分で想像するしかない。
結ぶって、庵を結ぶとか、芭蕉結びの地とか、文を結ぶとか、契を結ぶとか、おむすびとか、いろんな意味がありすぎてはっきり言ってまじとうとい。
何かを始めることと、繋げること、何かを終えること、みっつの意味を、この「結ぶ」という言葉は持っている。とうとい。
そして、次に、ひらくという言葉。
広く明るく、みたいなことが、おそらく“ひらく”のイメージなのだと思う。
開く 拓く 啓く
閉じてあったものが開いたり、もともとあったものを除去して広く拓いたり、知らなかったことを教えて啓いたり。
明るく、ひらけた様子がイメージできる。ひらめくという言葉も、ひらくが偶発的に起こったような状態なのであろう。ふむふむ。
だから、むすんでひらいてって、どういうことなのかというと、
何かを始めて、繋いで、終わらせ、また何か始まり、明るく広がっていく様子。
むすんでひらいて
てをうってむすんで
またひらいててをうって
その手を上に
最後のその姿は、なにかに感謝している様子かもしれないし、天に何かを乞う姿かもしれない。
さて。
自分で描いた物語を結び、終わったものだと思っていたら、誰かがそれに声の命を吹き込んで、それがまた結ばれ、ひらかれた。
その声の物語もやがて結ばれ、終わったのだけど、僕はそれに両手を打って、新しい物語を結んだ。
そしたらそれにまた呼応するように誰かが何かを結び始める。
シモーヌの読み語り、ドラッグストア昔話では、そんなふうに感じた。
物語の中では、行李の紐をキヨはきつく結んでみちに託す。100年後のみちは小さな手でその結び目を開き、存在しなかった歴史がそこから始まる。
むすんでひらいて
てをうってむすんで
またひらいててをうって
そのてをうえに
でも、物語の中だけじゃなく、現実世界でも、むすばれ、ひらかれていることを、ぼくは感じている。
シモーヌさん!35話の読み語りお疲れ様!
そして!ありがとう!
そしてふたりがひたすら喋り倒すクランクアップセレモニーパーティー。たのしかった。。
二時間も“創作”について語る。
note編集部のみなさま!
noteめちゃくちゃ楽しんでるふたりがここにいますよ!
↑そしてこの二時間目の後に、なにかがっ!!!すってきな何かが起こっているっ!
ちなみに、結んでひらいての歌詞は、最後に手をどこかに向けることによって締めくくられる。
①その手を上に
②その手を下に
③その手を頭に
④その手を膝に
さきほど引用したシモーヌさんのトップ画面のそれぞれの手の位置を順番に見て欲しいっ!
それぞれ、上 頭 膝 に向けられているのである!
……あれ、でも「下」がないじゃんって話なんだけど、まあ、そこは「シモーヌ」ってことで!ちゃおあっちょんぶりけっ!
いやでも実際はね、読み語り終了後にね、意識の方向性は、「下」で眠っている猫に向けられていたようなのです。
上下頭膝揃ったっ!!!
ちゃおあっちょんぶりけっ!