「自分次第だよ」って言うけどさ

わたしの留学先がフィンランドではなくリトアニアに決まったとき、
周りの大人は「すべて自分次第だよ」と言った。
「どこに行くかではなく、そこで自分が何をするか、だから」と言った。
そういう言葉で、わたしを励まそうとした。

たしかに、自分の考え方や行動次第で、その後どうなっていくのか変わってくるのは、それはそうだと思う。
でも、わたしは、今回のこの留学でいろんな経験をすることができて、授業の学び以外にもいろんなところでたくさんの学びを得ることができて、結果的に「留学に行って良かった」って言えるのは、「自分次第だった」からだとは絶対に思わない。

それはなぜかって、わたしが何の目的も目標も持てていない状態でリトアニアに来て、「やりたいことがない、帰りたい」って泣いたわたしを、1時間もかけて励まし続けてくれた現地のコーディネーターさんがいてくれたこと、何かと頻繁に連絡をくれる学科の先生がいてくれたこと、ちょっと強引に留学生のイベントに誘ってくれた先生がいたこと、拙い英語で話したふうかの意見を真剣に聞いてたくさんのフィードバックをくれた先生がいたこと、「ふうかみたいな学生に出会えて嬉しい」って言ってくれた先生たちがいたこと、右も左もわからない保育園実習で優しく厳しくふうかを一人の人間、先生としてまっすぐ接してくれた先生たちがいたこと、リトアニア語は全く話せず英語もあまりできないわたしに毎日抱きついてきてくれた子どもたちがいたこと、連絡をすれば秒で返信がきて会えば毎回たくさんハグをしてくれる学生メンターがいてくれたこと、英語がぜんぜん話せなくて意思表示がへたくそなわたしにいつも「I love you」って言ってくれる友達がいたこと、バスで「ここ座りな～」って言ってくれる優しいおばあちゃんがいてくれたこと、Old Townを歩いていたときにすれ違いざまに「You are so beautiful‼」と話しかけてくれた美人なお姉さんがいたこと、リトアニアでの素敵な人たちとの出会いがあって、その人たちがいてくれたから、ふうかはここで自分を見失わずに、ひとりの人間として、「ふうか」として生きることができた。

「留学」というものに関して、
「留学中はこれするべき！」
「留学でこれしなかったら帰国して後悔する」
みたいな情報が本当に、
本当に本当にいっぱいあって、
まるでその情報に従って、
みんなが「良い」っていうものの経験をして、
予想通り「良かった」って言うことが正義みたいな、
「帰りたくな〜い」って言うことが正義みたいな、
そういう風潮あるじゃん？

わたしは嘘ついてまでそういうことが言いたいとか、
自分に嘘をついてまでみんなが良いって言う経験をしたいと思わなかった。

でも、希望通りフィンランドに行けていたら、
きっと、
「こうするべきだよね？！」
「あれもこれもやった方がいいかも！」
って、自分の意思に関わらず、
自分に嘘をつきながら
世間の「〜するべき」とか「良い」に
ぐるぐる巻きにされていたかもしれない。
「フィンランドってこうだよね」
「留学ってこうだよね」っていう自分の勝手な理想を
押し付けてしまっていたかもしれない。

そんな状態では、目にうつるすべてのものに感動することはできないし、
自分が自分でいられない限り、周りのもの全てもわたしに素直にならない。
友達のひとつひとつの言葉に感動できたのも、
まちを歩いていてたくさんの気づきと感動があったのも、
わたしがわたしでいられたから。

「自分らしさを大切に」なんて言葉をわざわざ胸の中で唱えなくても、
自分を主張することができていた。
そうすることで、
素晴らしい学びと、素晴らしい出会いに恵まれた。
最後には、「帰りたくないなぁ」と思うほど。
この結果を、「どこの国に行こうが、すべて自分次第です」
なんて言えるわけがない。
わたしが自分でいられる空気をつくってくれた、友達や先生方や、
ありのままの真剣な自分を認めて褒めてくれる人たちがいたからこそ
リトアニアでの経験が、一生忘れられないかけがえのないものになったのだ。

現状を変えるかもしれない秘密は、
「素直になること」である。
失うものや守るものをいったんゼロにして、
嘘をついてまで、笑おうとはしないこと。
思っていることを、すべて吐き出すこと。
ただ、力を入れながら、
自分の意思はこうだ！って主張すること。

この戦い方でずっと生きていくのは難しいのかもしれないし、
全員にあてはまるとは限らないけど、
少なくとも、どん底から這い上がってくるために
わたしには必要不可欠だったものだった。
素直になることで、
「助けてもらえる人」「応援される人」
になれたことが、良かったのだと思う。
自分一人では何もできない。
「自分次第」ではどうにもならないことばかり。
常に周りの人の支えが必要だから、
支えてもらえる人になるためには、
嘘をつかずに、正直に、一生懸命であること。

支えてくれたすべての人に、感謝の気持ちでいっぱい。
改めて、ありがとう！！！