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凡庸“ドラマ”雑記「沈黙の艦隊」

どうしても国とか世界とか、その中で繰り広げられ厳しいやり取りなど、日本の中で日々あくせくしていると、我関せずとなってしまう。

世界の中の、日本という国の国民だから、自分と直結しているに違いない。だけど、遠い世界の物語として、世界中で行われている様々な、現実を捉えてしまう。

それどころか、日本国内での政治に対しても、傍観を決め込んでいる。恥ずかしい事だ。

世界の中で、今まで微妙な力のバランス関係の中、幸せと繁栄を保ってきたが、最近の世界を見るに、ちょっとしたことで、今が瓦解することが見えてしまう。

この、未来に対しての不安感を、今、このドラマは描こうとしたのだろうか。でも、原作は1988年始まりなので、今の時勢よりも普遍的な世界の物語を描いた様子。

で、いったい何のことを書いているのか?

先ごろAmazonプライムビデオで配信が始まった「沈黙の艦隊」のこと。

映画がこの間やっていたが、さほど、話題にもならずさっさと終わってしまった。原作を知っているので、日本のみならず世界中を巻き込んでの、戦闘と政治の物語を描けるだろうかと、危惧していたが、案の定だったかと残念に思った。

実際、作者も実写化は無理だろうと、書いていたようだ。然り。アニメならいざ知らず。

でも、ドラマなら、それもAmazonなら話は別。プライム会員のお布施を払っているので、無料で見られる。戦争ものは触手が動くので、娯楽で気楽に見る。

結果、これが意外と、楽しめた。けっこう満足。

艦隊や潜水艦の描写は明らかにVFXだなとわかる。かなり頑張ってはいるが、ハリウッドの超大作を望むのは酷。そこは、脳内補完をしながら見てみると、十分見応えあり。世界から見たら、いや日本でも、指を刺されるやもしれないが、作ってくれたことに感謝。

国際色の色濃い内容だから、多少、海外の役者も出てくるだろうと思っていたら、多いだけでなく、重要な部分を握っている部分を演じていた。彼らが、ちゃんと演技をしてくれることで、ドラマに現実味が加わる。

そして、日本の俳優陣。主役の大沢たかおや、玉木宏、江口洋介、この3名のそれぞれの気迫を持った演技には脱帽。予想以上に唸らせられたのが、首相役の笹野高史。やっぱり、上手いというか味がある。気の小さい流され系から、一国の首相として決断をしていく姿勢を演じた彼の懐の深さを実感する。

他にも、氷川あさみとか、一味違うんじゃないのと、多数の演者に感心し賞賛を送る。

でも、でもだ。なぜだろう。舞台の上の演者たちが、間違いない誠意と才能を使い切り、演じれば演じるほど、学芸会の余興に見えてしまう。本当に失礼極まることには違いないが、正直な感想として。

これは、国民ドラマとなった「VIVANT」でも感じたのだけど、話が広大になればなるほど、どうにも食い足りないもどかしさを感じる。役者の演技云々では無い。はず。

凡庸なVFXなのだろうか。それもあるかもしれない。でも、もっと根本的な部分が、現実を描くのに足りない。日本の役者は海外に比べて、どうのこうの。そう言うのは至極真っ当に思えるが、最近、海外の著名な演出家が演出した作品を見て、それが、真実でないことを知った。

「TOKYO VICE」での日本の演者たちはすこぶる素晴らしかった。最近感銘を受けた「PERFECT DAYS」の彼ら彼女らは、心を揺さぶった。

そして、日本の監督の演出でも、Netflixで絶賛された「今際の国のアリス」で、切迫感を日本の役者で出せたのかと、ただただ驚いて、喜んだ。

すごく、端的に一方的に言ってしまうと、演出力なのだろうか。その違いというのは。

多くの人々が重なり合う、映画やドラマだから、要因は無数にあるはず。だけど、その真ん中で軸となす、演出のあり方、それで、不思議と物語の命は変わってくる。些細な表情の変化、それを捉えるカメラの画角。音楽の内容と流れるタイミングと強弱。何気なく歩く姿。そんな、何でもない場面で、これは入り込めるのか、もどかしく傍観するのか、分かってしまう。おんなじような場面でも。才能と言うのか、そんなものが透けて見える。

その本質が潜在的に、すこぶる力強く胸を打つ作品だからこそ、多くの期待が胸に宿り、より一層もどかしさがつのってしまった。

それにしても、日本のドラマにしては、ギリギリの線をかなり突っ込んだ作品。右でも左でもなく、程よい隙間を堂々と突きするんでいく「やまと」の様な作品だった。こんな作品を作り上げたことだけでも、褒めてしんぜよう。偉そうに。

ぐだぐだ余計なことを書いたけど、基本的には絶賛、絶対、次を観たい。どこまで描く変わらないけれど、今の時勢だからロシヤや中国なんかとのやりとりや難しいとは思う。だけど、原作に限りなく沿って、世界と日本の在り方を問いかけて欲しい。と言いながら、戦争もんを単純に楽しめれば、それでいいのが本音だったりして。

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